製造業を一気に進化させるIoTの使い方
製造業では、現在、静かな変革の波が押し寄せて来ています。
今回は、スイス北部に本社を構えるABB(アセア・ブラウン・ボベリ)の先進的な取り組みと、そこから見る製造業の未来についてお話しします。
モノを売る企業からデータを売る企業へ
ABBは、いまから100年以上前の1891年に創業。
鉄でできた産業機器を製造してきた従業員14万人の大企業です。
1954年からサーキットブレーカーと呼ばれる大型のヒューズのような部品を製造し始め、いまではシェア70%を誇るトップ企業に。
この昔ながらとも言えるものづくり企業が、いま、変革を起こしています。
この変革のキモとなるのが、IoTセンサー。
ABBが製造販売する機械には、そのほとんどの製品にセンサーが内蔵されていて、電圧や温度などのデータをリアルタイムで収集しています。
その数、なんと7000万台。
そして、この大量のセンサーデータを機械学習で分析し、ユーザーに修理・交換・使用方法の修正といった細かい行動を提案しているのです。
つまり、いままのモノを売る企業から、こういったデータを売る企業への変革を進めているということです。
IoTでスピードが変わる
さらに、これだけではありません。
ABBが先進的と言われるゆえんは、その改善スピード。
IoTセンサーで、リアルタイムに、継続的にフィードバックが得られるので、顧客が製品のどの機能を頻繁に使っているか、どのように使っているかなど、これまで以上に微細なデータが手に入ります。
これらを蓄積、分析し、製品改良に活かしているので、改良サイクルが大幅に短縮されるようになったのです。
たとえば、
こんなことが簡単にできるようになったということです。
本当のものづくり
どうしてもいままでは、企業が「これが良い」と思ったものを作り、販売していることが当たり前でした。
もちろん改良することもありますが、顧客からのフィードバックをもらう機会があまりないので、どうしても改良サイクルは長くなりがち。
これを変えたのがIoT、ということです。
IoTを使うことで、「売ったら終わり」のスタイルは、「売ってから顧客がどう使うかをモニタリングして顧客を良い方向に導く」スタイルに変化します。
本来、ものづくりは顧客にとって良いものをつくるもの。
でも、はじめから完璧なものはありません。
かならず改良・改善が必要で、これを繰り返しながら顧客にとって本当に有用なプロダクトをつくっていくのが、本当の良いものづくり。
IoTは、この本当のものづくりを一気に推し進められる革新的な技術ということです。
Win-Winのおもてなし
さらに、IoTを使うとできることが増えます。
そのひとつが、「顧客の修理頻度・修理傾向をつかんで、先手を打って修理の提案をする」ということ。
たとえば、
なんて提案もできるようになります。
こうなれば、顧客は壊れる前に修理ができるので、突発停止のようなダウンタイムが減り、作業の平準化ができます。
製品提供側は、余裕を持って部品の準備ができたり、売り上げ予測も立てやすくなります。
こうやってこちらから提案するおもてなしをおこなうことで、まさにWin-Winの状況が生まれるのです。
IoTが変えるものづくりの未来
こうやってIoTが使えると、ものづくりの進化が進みます。
製品の状況をIoTで把握する、改良サイクルを早める、データを分析して顧客に修理の提案をする・・・。
こう考えると、どんな製造業でも使える気がしてきませんか?
ぜひ、「うちの製品だとどうやってIoTがつかえるかな?」と考えてみてください。
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