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国内SaaSをまとめて見えた、挑戦すべき最後のHorizontal SaaS領域について

今日、SaaSという言葉はビジネスの場で一般的に使われるようになりました。
国内におけるSaaSは1000サービスを超えるといわれており、1企業あたり8.7個のSaaSを導入しています。

アメリカでは1企業あたり110個のSaaS導入と、日本国内とは桁違いの多さ

SaaSというビジネスモデルの一般化に伴い、各ビジネス領域は多くのプレイヤーで溢れ、飽和状態になりつつある市場も生まれ始めてきています。
特に業種に関係なく導入されるHorizontal SaaSにおいてはその傾向が顕著です。

今回のnoteでは、そんなSaaS隆盛の現在においてどの領域がブルーオーシャンでチャンスが眠っているのか、Horizontal SaaSを対象として解説します。
また、これからのキャリアを考える時にどのような視点で関わる事業、プロダクトを選ぶべきかについても個人的な考えを発信していこうと思います。

国内Horizontal SaaSを分析して見えたレッドオーシャンとブルーオーシャン

先日、One Capitalさんが公開されていた「Horizontal SaaS カオスマップ 2021」では、未上場の国内スタートアップが展開するHorizontal SaaSをまとめていました。
ここに海外企業・上場企業が展開するSaaSを加え、企業内の部門ごとにどのようなサービスがあるか見ていきましょう。

One Capital:「ホリゾンタルSaaS カオスマップ 2021」を公開

セールス・マーケティング

セールス・マーケティング領域には多くのプレイヤーがひしめき合っています。
CRM(顧客管理システム)やBI(ビジネスインテリジェンス・分析)、MAやSFA、オンライン商談など複数のカテゴリのSaaSが存在し、特定カテゴリに特化したものから一気通貫でカバーしているものなどであふれ、SaaS普及が最も盛んな領域といえるかもしれません。

一方でセールス・マーケティング領域のSaaSはやや飽和状態にあるという考えもあります。
アメリカでのセールス・マーケティングSaaSの資金調達比率は、シリーズD・E以降が約90%を占めるなど、既存の大型SaaSが更に拡大し、新興SaaSには投資されにくいという状況です。

Accel:オンライン営業を成功に導く先進ツールGongとは

新しい動きとしてSales Enablement(セールスイネーブルメント)というカテゴリ・考え方がここ数年で急速に発達し、アメリカでは時価総額72.5億ドルのGongや44億ドルのOutreachといった巨大SaaSが生まれています。

これは個人的な予測ですが、今後、既存のSaaSではカバーしきれない細かな課題やSaaS導入によって生まれた新たな課題を解決するニッチなプロダクトが生まれ、それがM&A等を通して大きなSaaSプロダクトに統合されていくという流れが生まれると考えています。
もちろん、新興企業の急成長という可能性もありますが、日本国内でもアメリカのように、セールス・マーケティング領域はいくつかの巨大SaaSに収束していく可能性は高いと考えています。

HR

HRもセールス・マーケティングに並び大きく拡大したSaaS領域です。
HR領域は大きく分けて「採用」と「社内人事」のカテゴリに分けられます。
採用では、採用業務の管理からダイレクトリクルーティングや採用ページ管理、社内人事では、社員エンゲージメントの可視化やタレントマネジメントなど、多様なカテゴリでSaaSが提供されています。

HRテックカオスマップ2022年最新版〜982サービス掲載〜

※このnoteでは、こちらのカオスマップの中で「採用」「育成管理」「エンゲージメント」「タレントマネジメント」等のカテゴリに属するものをHR領域と区分けしています。そのほとんどがSaaSです。

HR領域は、セールス・マーケティング領域と同様に多くのSaaSでひしめき合っています。
新しいカテゴリとしては、候補者のエンゲージメントを高めるためのマーケティングツールとしてCRM(Candidate Relationship Management)が 海外で盛り上がり、日本国内でもHITO-Link CRMなどのサービスが台頭し始めています。

HR領域の市場自体は拡大しているものの、参入企業が多く各カテゴリでは新しいソリューション提案から、シェアを奪い合うフェーズへと変わっていっているように感じられます。

ITmedia ビジネスオンライン:HR市場は2023年に2504億円へ拡大 ただし個人情報に関する問題も浮き彫りに

労務

労務領域の特徴としては、海外SaaSの参入障壁が高いことが挙げられます。
ドメスティックな労務ルールに対応できる国内SaaSが市場シェアを占めており、市場規模については市場予測によると2022年現在で約100億円と他領域に比べると小規模です。
今後も成長していくことが予想されていますが、SmartHRが公開したARR資料を見ると、大きなシェアを占めていることがわかり、セールス・マーケティング領域と同様に大手企業のシェアの奪い合いが予想されます。
参考リンク:SmartHRが公開したARR資料

ITR:労務管理市場規模推移および予測:提供形態別(2018~2024年度予測)

情シス

情シスはSaaS導入において後発の領域です。
間接部門かつ、事業成長への影響が薄いと思われていた背景もあり、他領域に比べてSaaSプロダクトの立ち上がりは遅かったものの、2020年頃からは新型コロナの蔓延により従業員の働き方が大きく変わったこともあり、現在になってSaaSが生まれ始めています。

アメリカでは、情シス(Information Sith)ではなく、導入したSaaSを管理し、部門間のコラボレーションと効率向上をリードする「SaaS Ops」という新たな領域が生まれています。
膨大な数のSaaSをうまく活用することが自社の生産性向上に繋がるという考えから、幅が広くなりすぎるIT総務領域からSaaS Opsという専門性が必要な領域を切り離して、新たな市場が育っています。

情シス領域について、日本国内でもSeculioやマネーフォワードIT管理クラウド、ジョーシスといったSaaSが生まれ、これからの拡大を目指している、まさに黎明期といえるタイミングです。

そして私たちDXERもこの領域、特にSaaS Ops領域での事業拡大を目指しています。

Better Cloud:Sate of SaaS Ops 2021
アメリカでは、SaaSを使いこなしている/いない職場で従業員体験が異なるという調査結果が出ており、SaaS Opsがトレンドになりつつある。

HorizontalとVertical SaaSのビジネス特性について

特定の"業界"に特化したVertical SaaSと特定の"業務"に特化したHorizontal SaaS、まずはそれぞれの特性を簡単におさらいします。

Vertical SaaSは業界に特化し、深堀りしたSaaS

Vertical SaaSは特定の業界の課題を解決するSaaSを指します。
日本国内では、建築・建設業界に特化したANDPADなどがVertical SaaSにあたります。

Vertical SaaSのプロダクト品質の良し悪しは、業界の特異性の理解によるところが大きく、事業拡大にあたってはドメイン知識を深めてより専門性を高めていくことが求められます。

Horizontal SaaSは業務課題の解決に特化

Horizontal SaaSは特定の業務の課題を解決するSaaSを指します。
日本国内では、労務領域のSmartHRや会計領域のfreeeがHorizontal SaaSにあたります。

Horizontal SaaSでも業務理解は必要ですが、Vertical SaaSほど業界特性のようなドメイン知識は求められず、一般的に語られるようなSaaSビジネスのセオリーを練度高く実行していくことがより求められます。(という傾向にあります)

スタートアップSaaSに飛び込む時に大事にしたいこと

スタートアップでSaaSプロダクトに関わっていくというキャリアを選択した場合、どのような軸で企業を選べば良いのでしょうか。いわゆるセオリーと、DXERとしての考えを交えて解説します。

成長市場に飛び込むのが何よりも大事

「成長市場を選ぶ」これはSaaSに限らずすべてのスタートアップにいえることです。
スタートアップのほとんどは単独プロダクトを展開しており、プロダクト=企業ともいえます。成長市場を対象にしてサービス展開をしているか、その市場の規模はどれくらいなのか、今後の拡大見通しはどれくらいなのかを最優先の判断軸とすることが重要です。

また、0→1フェーズの新興スタートアップでのキャリアを検討している方には、その市場が成熟しきっていないか、まだまだ開拓の余地があるかどうかも重要な観点です。
例えば、アメリカで飽和状態ともいわれているセールス・マーケティング領域でSaaSを展開する新興スタートアップは、既存の巨大企業からシェアを切り崩すという不利な勝負を行うか、画期的かつ他社が真似できないとびきりのアイデアを持ったプロダクトを展開していかないと勝率は低いでしょう。

成長しており、市場が成熟しきっていない市場、そこに狙いを定めることが重要です。

業界深堀りのVertical SaaSか、業界を横断するHorizontal SaaSか

前述のVertical SaaSとHorizontal SaaSの違いは、獲得できる知識にも現れます。
Vertical SaaSに関わることは、特定の業界でのドメイン知識の獲得に繋がります。また、Horizontal SaaSに関わることは、複数の業界を横断して幅広い知識を蓄積することに繋がります。

私自身もそうなのですが、海外ビジネスやSaaSの最先端トレンドに興味があったり、日々の業務の中で効率化のためにいろんなツールを試してみたり、そんな好奇心が強い人にはHorizontal SaaSに関わることをオススメします。

hikoharu's blog:SaaSのプロダクトマネジメント、縦から見るか?横から見るか?
hikoharu's blog:SaaSのプロダクトマネジメント、縦から見るか?横から見るか?

成長・未開拓市場 × Horizontal SaaSという理想的な環境

(ここからはDXERとしてポジショントークも含まれます)
情シス、特にSaaS Opsという領域は海外でも注目され、国内でもいくつかの企業が事業を立ち上げたばかりという市場成長のスタート地点にあります。また、国内でほぼプレイヤーが出揃ってきているHorizontal SaaSの中で、唯一残った最後のHorizontal SaaS領域といえます。

成長・未開拓市場のHorizontal SaaSに挑むことは、SaaS事業の真骨頂である課題解決・仮説検証に真っ向から挑むことだと考えています。そこでは、課題を抽象化して全体像を捉えたり、解像度を高めるためのスコープ設計など、手探りで市場を切り開いていくことが求められます。
そして、より多くの顧客に使われる可能性を持ち、最終的には誰もが知るサービスになる。

そういったSaaS、スタートアップの面白さを持ち合わせているのが今のDXERが戦っている領域です。

DXER(ディクサー)株式会社 - ピッチブック
誰もが知るSaaS企業の第一歩を追体験しているのが現在のフェーズ

おわりに

本noteでは、Horizontal SaaSの部門ごとの市場状況とこれからのキャリアを考える時にどのような視点で関わる事業、プロダクトを選ぶべきかについて簡単に紹介しました。
これからSaaSを展開するスタートアップへの転職を考えている方は、成長・未開拓市場であるかどうか、業界を深掘るか幅広く知識を得るか、自身の興味に合わせて企業選びをしてみてください。

また、もしDXERや情シスSaaS、SaaS Ops領域に興味を持っていただけたらぜひカジュアルにお話させてください。


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