ヒトよりも、ミンクは、新型コロナウイルスに感染し易い!?

図.10.04.2020

オランダ、米国のミンク農場からCOVID-19のミンクが認められた。スペイン西部アラゴン州で、飼育されていたミンクが新型コロナウイルスに感染していることが判明し、10万頭近くが処分された。このミンク農場では、従業員の妻が5月に新型ウイルスに感染。この従業員を含む7人がウイルス検査で陽性と判明した。

現在までに、飼い主や飼育員からSARS-CoV-2が、犬、猫、トラ、ライオンに感染することが報告されている。最近の報告では、猫は実験的に空中感染症にかかりやすいことが強調されている。しかし、家畜やペットからSARS-CoV-2が、ヒトへと感染することは稀とされている。遺伝系統樹の解析によると、ミンクACE2配列クラスターは、系統発生的に犬のACE2配列クラスターに非常に近いと判断される。

SARS-CoV-2が、ヒトを含む哺乳動物などに感染するには、SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質が、宿主側の受容体であるACE2に結合しなければならない。したがって、SARS-CoV-2が感染するか否かは、各動物のACE2の立体構造(3次元構造)がキーポイントとなる。さらに、SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質は、ACE2の5つのアミノ酸残基:353-KGDFR-357に対して強い親和性(結合性)を有している。

各種のACE2のマルチプルアラインメントにより、特に、ヘビを除く、ヒト、イヌ、ネコ、トラ、ライオン、ミンクのACE2受容体において、5つのアミノ酸残基:353-KGDFR-357の高い相同性と高い保存性が明らかになった。さらに、ACE2の構造レベルで、特定の5つのアミノ酸残基を含む蛋白質領域の保存性を検証するために、私達は、各種のACE2相同蛋白質間の比較分析を実行した。この研究成果より、ヒト、イヌ、ネコ、トラ、ライオン、ミンク、その他の哺乳動物間で、ACE2は、SARS-CoV-2スパイク糖蛋白質に対する受容体として機能していることが明らかにされた。

したがって、SARS-CoV-2は、SARS-CoV-2が犬に感染する可能性と同じ可能性でミンクにも感染する可能性があると考えられる。構造ホモロジーモデリング解析のパイプライン法であるSpannerを使用して、私達は、SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質の受容体としてのミンクACE2(mACE2)とヒトACE2(hACE2)の結合領域の3次元構造を分析した。SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質との結合に必須であるミンクACE2の5つのアミノ酸を含む結合領域の三次元構造は、hACE2の構造と比較して構造学的に安定している可能性が示された。

複雑な立体構造データは、SARS-CoV-2の受容体結合領域が、その外部サブドメインを利用してヒトACE2のサブドメインIを認識することを示している。さらに、三次元構造分析により、ミンクACE2の結合領域の3次元構造が、SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質の受容体結合領域の構造と強い親和性(結合性)を有するすることが明らかになった。

三次元構造リモデリング解析は、ヒトACE2とSARS-CoV-2との親和性と比較して、ミンクACE2の表面モチーフの5つの重要なアミノ酸残基G354Hは、SARS-CoV-2のスパイク糖蛋白質の受容体結合領域との結合親和性をより増加させることを示唆している。つまり、SARS-CoV-2は、ヒトよりもミンクに感染し易い可能性が示されている。私たちの研究結果は、SARS-CoV-2人獣共通感染症が世界中のさまざまな動物種に伝染する可能性があることを示唆している。

がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症                                              Published in Veterinary Quarterly on September 2020 by 京都@Takuma H. 

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