日本における、子宮肉腫に対する化学療法の現状について
現在まで、子宮平滑筋肉腫に対する標準治療は確立されていない。NCCNガイドライン2020年版では、子宮平滑筋肉腫のⅠ期に対しては経過観察または化学療法を考慮すると表記されている。しかし、Ⅱ期またはⅢ期の平滑筋肉腫に対する完全切除後の治療法の選択肢として、化学療法および/または放射線治療が提案されている。
1980年代後半に、日本の実臨床において、悪性骨肉腫に対する化学療法として、DOX/CDDP療法(ドキソルビシン60mg/m2、シスプラチン100mg/m2)が保険適応されている。現在でも、日本の診療ガイドラインにおいて、DOX/CDDP療法は、悪性骨肉腫に対する標準的な併用療法であることが示されている。
現在まで、日本において、子宮平滑筋肉腫に対する厳格な比較臨床試験は存在しかった。日本婦人科種学会主催で、2019年から2020年に、私達が行った子宮肉腫に対する比較試験のサブグループ試験において、子宮平滑筋肉腫に対するドキソルビシンが含まれる化学療法の奏効率が検討された。私達の臨床研究において、ドキソルビシン単剤80mg/m2の奏効率は、10%,、イホスファミド7.5g/m2 (3.75g/m2/dayx2日間)とドキソルビシン60mg/m2(30mg/m2/dayx2日間)の2剤併用療法の奏効率は、14%、マイトマイシン8mg/m2、ドキソルビシン40mg/m2、シスプラチン60mg/m2の3剤併用療法の奏効率は、19%であった。本研究より、子宮平滑筋肉腫に対して、3剤併用療法による奏効率が高い傾向にあった。しかし、現在のところ、子宮平滑筋肉腫に対する単剤、併用療法において、十分な奏効率は示されていない。
2018年12月に、厚生労働省によって、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサ テライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)に対する、ペムブロリズマブの臨床治療が、承認された。実臨床で、これから抗癌剤治療を受ける固形癌患者(25789人の検体)を対象に、保険収載されたMSI(マイクロサテライト不安定性)検査キットを用いてMSI-Hの患者の存在率が検討された。臨床検査会社の大規模なデータから、様々な癌種でMSI-Hの癌が広く存在することが明らかとなった。MSI-Hと同定された固形癌は、全体固形癌の3.75%だった。日本がん協会で行われた臨床試験(25789人の検体)において、リンチ症候群が確認されたMSI-H/MSI-I腫瘍の患者には中皮腫、肉腫、前立腺がん、および卵巣胚細胞腫瘍が含まれていた。MSI-H患者において、子宮平滑筋肉腫を含む肉腫の含有率は、0.14%(37/25789)だった。
現在、私達の研究グループにおいて、子宮平滑筋肉腫に対する免疫チェックポイント阻害とドキソルビシンの併用療法の奏効率に関する臨床試験が立案されている。近日中に、私達の研究グループは、臨床試験のプロトコールを公開する。
Ethics statement
This study was reviewed and approved by the Central Ethics Review Board of the National Hospital Organization of Japan (Meguro, Tokyo, Japan). The approved number for this study is 50-201504. In order to carry out this research, the authors attended a research ethics education course (e-APRIN) conducted by Association for the Promotion of Research Integrity (APRIN; Shinjuku, Tokyo, Japan). The approved numbers of e-APRIN are AP0000151756, AP0000151757, AP0000151758, AP0000151769.
Disclosure
The authors declare no potential conflicts of interest. The funders had no role in study design, data collection and analysis, decision to publish, or preparation of the manuscript.
Acknowledgments
We thank Professor Richard A. Young (Whitehead Institute for Biomedical Research, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA) for his research assistance. This study was supported in part by grants from the Japan Ministry of Education, Culture, Science and Technology (No. 24592510, No. 15K1079, and No. 19K09840); Foundation of Osaka Cancer Research; Ichiro Kanehara Foundation for the Promotion of Medical Sciences and Medical Care; Foundation for Promotion of Cancer Research; Kanzawa Medical Research Foundation; Shinshu Medical Foundation; and Takeda Foundation for Medical Science.
がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療
JAMA Oncology. Published on January 2021. by 京都@Takuma H
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