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1人目のオーナー様にWealthParkを使ってもらうまでの話

先日、WealthParkを利用者が20,000人を突破し、僭越ながら、会社からは下記のリリースを発表させてもらいました。

日々お世話になっている不動産管理会社様、オーナー様、そしてこれまでそれを支えてきたカスタマーサクセスチームのメンバーに改めて感謝したいです!ありがとうございます!

前回の記事では、WealthParkのカスタマーサクセスチームが直接支援を行う、不動産管理会社の業務や課題について書きました。

今回の記事では、今回のリリースに寄せて、1人目のオーナー様にWealthParkを使ってもらうまでの話について書きました。

不動産オーナー数20,000人という数字の意味合い

特に不動産業界に詳しい方でなければ、20,000人という数字を見て「少ない」という印象を持たれたのではないでしょうか。プレスリリースを出してまで発表するほどなのか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。では、そもそも不動産オーナーは日本に何人いるのでしょうか。

一口に不動産オーナーといっても、地主オーナー、サラリーマン投資家、専業大家、所有物件の総額が10億円を超えるメガ大家と言われる方々まで様々な属性のオーナーがいます。また、不動産投資にあたって個人オーナーが、法人を設立して法人名義で物件を所有するケースや、法人が会社の資産として物件を所有しているケースもあります。

こうした実情から、私の知る限り、不動産オーナーの数を正確かつ網羅的に集計した統計は見当たらないのですが、様々な統計情報や業界の方々からのヒアリングを元にすると、少なくとも120万人の不動産オーナーがいるのではないかと個人的に考えています。つまり、不動産オーナーの60人に1人がWealthParkを利用していると言えます。

もちろん、この数字自体には全く満足していません。WealthParkの目指すオルタナティブアセットのプラットフォーム(ご興味ある方は代表の川田のこちらの記事をご覧ください)を創り上げるため、より多くのオーナー様にWealthParkをご利用いただけるよう、まだまだ努力を続ける必要があります。一方、私にとってこの20,000人という数字は、別の意味合いを持っています。それは、愚直に向き合い続けることで、業界の慣習は変えられる、その根拠です。


「紙のままで十分です」ーサービスローンチ後、初めての挫折

不動産管理会社と不動産オーナーをデジタルでつなぎ、ペーパーレスを実現し、不動産管理を効率化する、とは言っても言うは易し行うは難し。現実はそんなに甘くはありませんでした。

「アプリで不動産管理って便利そうだけど、紙のままでも十分管理できるから、あんまりメリットを感じない」

最初の導入先である札幌の管理会社で実施したオーナー向け説明会の後、とあるオーナー様から言われた一言でした。しかも、当初フィットがあると思っていた投資家タイプのオーナー様でした。「オーナー様はまだまだいる。他のオーナー様が使い始めれば、すぐに使ってもらえるはず。これから、他のオーナー様にも提案していきましょう!」管理会社の担当者とそう話をして札幌を後にしました。そして、その後3ヶ月間、WealthParkを使い始める不動産オーナーは1人も増えませんでした。

オーナー向けのチラシ、よくある質問の解答集、操作マニュアルなど、考え得る素材を全て提供し、管理会社の方からオーナーに案内を送っていただきました。しかし、その後何も反応がない…。「アプリをダウンロードして、ログインする」たったそれだけのことなのに、誰もログインしない。そんな状況に悶々としたまま、焦燥感だけが募っていく日々でした。「紙のままでも十分管理できる」説明会でオーナーに言われた一言が、重くのしかかってきました。管理会社の担当者と話してみると「オーナーへは案内しているが、反応がない」「私の担当オーナーは、高齢でスマートフォンを持っていないので、案内できない」と言われてしまう始末でした。

「WealthParkビジネス」を引き渡してから3ヶ月経過して、システムが使われるどころか、そもそもログインすら誰もしてくれない。当然、カスタマーサクセスとしては「解約」の二文字が、次第に頭をよぎるようになりました。「このサービス自体ニーズがないのではないか」「不動産業界の紙文化はこのまま変わらないのではないか」そうしたネガティブな考えが、頭の中を支配していきました。今振り返ってみると、これがサービスローンチ後、最初の挫折経験でした。

不動産管理の現場に潜り込む

「札幌に1週間行かせてほしい」

上長でCBOの手塚(手塚のインタビュー記事はこちら)にそう伝え、出張の許可をもらいました。管理会社の方からすると、導入して間もないシステム会社のよく知らない若造がなぜかデスクにずっと座っている、不思議な光景でしかなかったと思います。今振り返ると、貴重な機会をいただけたことに感謝しかありません。当時の私は、とにかく現場で何が起こっているのかを自分の目で確かめたい、その一心でした。

事前にWealthPark操作説明や、管理部の方との打合わせの時間をいただいていたものの、1週間もの滞在となると、当然予定されていたスケジュールは、2日も経つと全て消化してしまいました。「なぜWealthParkは使われないのか」その答えを探るため、私は間借りしたデスクから、管理会社の現場で何が起こっているのか、脳裏に焼き付けるように観察していました。鳴り止まない入居者や仲介業者からの電話、慌ただしく出入りする工事担当者の姿、机の上に置かれた膨大な量の紙、紙、紙…。前職の楽天で経験した現場とは全く異なる世界がそこにはありました。とにかく、戦場のように慌ただしく時間が過ぎていく、それが不動産管理の現場でした。

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現場では、誰もWealthParkを使っていなかった

ある担当者の方が、オーナーと電話で連絡をしている様子だったので、話しかけてみました。

「次にオーナー様と連絡するときでも構わないので、もしよろしければWealthParkをオーナー様に薦めていただけませんか?」

「WealthPark!?あー、URLなんでしたっけ?あと、パスワードもう一回教えてもらってもよいですか?オーナー様には今度伝えておきますね!」

その場でアカウントを再発行し、パスワードを伝えた後、デスクに戻る途中、はっと気が付きました。「他の担当者の方も、もしや同じような状態なのでは…?」と思い、他の担当者の方がPCで何の作業をしているのか、注意深く観察していました。基幹システム、仲介サイト、Excel、Word…中々WealthParkが出てこない…そしてその日の業務時間が終ってしまいました。WealthParkを開いていた担当者はたったの1人でした。それも、さっきアカウントを再発行した担当者の方でした。オーナーがログインするどころか、そもそも管理会社の担当者の方すらWealthParkにログインしていなかったのです。そこで翌日、「WealthParkをなぜ利用いただけないのか、本音を教えてほしい」とお願いし、オーナー担当者の方1人1人に、個別でヒアリングのお時間をいただくことにしました。

利用イメージの湧かないシステムは利用されない

ヒアリングをしてみると、現場の担当者の方から様々な声があがってきました。

・とにかく本業が忙しくて、提案する時間がない
・WealthParkのことをうまく説明できない
・オーナーに「紙が良い」と言われてしまうと、それ以上説得できない
・WealthParkをどう活用してよいかわからない
・業務のやり方を変えるのは負荷がかかる
・オーナーコミュニケーションはメールや郵送で事足りている
・他の担当者が使っていないと、自分も使う気にならない
・ITはあまり得意でない
etc...

共通していたのは、どの担当者の方もWealthParkの利用イメージが持てていない、という問題でした。当時は、まだ「オーナーアプリ」という言葉自体が定着しておらず、WealthParkのようなオーナーアプリを導入していた管理会社はその会社が初めてでした。そのため、実例もなく、私からも具体的な利用イメージを伝えられていませんでした。担当者の方からすると、利用実績のないシステムを、大事な顧客であるオーナー様に薦めづらいというのは、至極当然の話でした。また担当者の方の中には、ITが得意でない方もいます。利用イメージが持てないばかりか、ましてや自分が得意でないことであれば、当然、業務上も優先順位が下がり、結果利用が浸透しない。そんな負のサイクルに陥っていました。

どんなに良いシステム・機能があっても、顧客に使われなければ意味がありません。管理会社の方にWealthParkを使っていただくためには、まずは現場の担当者の方の認識を変える必要がありました。そのためには、実際にオーナーアプリを必要としているオーナー様がいることを実感いただくしかないと考えました。私は、各担当者の方には、自分が札幌にいる間にオーナー様とコミュニケーションする場合、自分がWealthParkについて直接説明するので、電話、来訪、訪問何でも構わないのでとにかく同席させてほしい。そうお願いして、チャンスが来るのを待ちました。

ついに巡ってきたチャンス

翌日、またデスクで声がかかるのを待っていましたが、中々声がかかりません。担当者の方のスケジュールを効いてみると、入居者の対応に外出したり、原状回復の現場に行ったり、仲介会社と打合わせがあったりと、予定が埋まっていました。物件や入居者に関わる業務が忙しく、担当者の方がオーナーに向き合える時間が限られているということを、この時再認識させられました。「1週間滞在して、成果0。このままでは帰れない…」焦りだけが募っていきました。と、その時、ある担当者の方から話しかけられました。

「これからWealthParkに興味のあるとおっしゃってるオーナー様のところに訪問するのですが、鳥谷さん、一緒に行ってもらえませんか?」

「もちろんです!」と即答して、担当者の方の車の助手席に乗り込みました。「WealthParkに興味を持ってくれているオーナーは、一体どんな方なのだろう…ちゃんとログインいただけるだろうか」道中、大通公園で信号待ちをする車の助手席で、そんなことを考えていました。

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はじめてのログインの瞬間

オーナーの住むマンションに着いて、担当者の方と一緒にオーナーの住む一室に向かいました。インターホンを押すと、70歳くらいの男性のオーナー様がドアを開けて、迎え入れてくれました。リビングに通された私は、できる限り丁寧にWealthParkの説明をしました。「とにかくWealthParkを使ってもらいたい」その一心でした。

「将来的な相続のことも考えると、電子で資産情報をまとめておきたいと思っていたんですよ。紙だと管理が大変ですから。便利な時代になりましたね。ぜひ利用させてください」

私の説明を聞いたオーナー様は、そう言って私にスマートフォンを手渡しました。すぐにPCを開いて、担当者の方にアカウントを発行してもらい「やっとログインしてもらえる…」そう思った矢先、スマートフォンの画面を見ると、ログインエラー画面が表示されていました。「データ登録のミス?いや、システム障害?」と様々な原因に頭を巡らせていると、困った顔でオーナー様が言いました。

「実は最近Wifiを変えたばかりで、接続の仕方がわからなくて…」

画面を見ると、たしかにWifiが接続されていないようでした。オーナー様が指差す方向に、ルーターを見つけた私は、代わりにWifiの設定を済ませ、再度ログインボタンを押しました。しかし、まだエラー画面が表示されています。「やっぱりシステム障害かもしれないな。せっかくここまできたのに…」とSlackを開いて、エンジニアに連絡しようとしていた私にオーナーは言いました。

「パスワードが間違っているかもしれないです。大文字の打ち方がわからなくて…」

私はすぐに大文字を打ち方をオーナー様に伝えて、再度パスワードを入力してもらいました。

「おお、すごい!こうやって自分の資産がスマートフォンで見られるのは便利ですね!」

記念すべき、初めてのログインの瞬間でした。このときは、正直嬉しい気持ちより、無事ログインしていただけたという、安堵の気持ちのほうが強かったです。この経験で気づいたのは、オーナー様がWealthParkをご利用になる際、私には気づかなかった様々な障壁があるということでした。利用環境、スマートフォンの使い方、オーナー様WealthParkという新しい仕組みに対する漠然とした不安…そうした障壁がオーナー様のWealthPark利用のハードルになっていました。「アプリをダウンロードして、ログインする」、私にとってはごく当たり前のことが、オーナー様にとっては必ずしも当たり前でないということを思い知らされました。そして、そうしたオーナー様のご利用前の不安を理解し、そこに寄り添ってガイドをするのが、カスタマーサクセスとしてのオーナー様に対するあるべき支援であると今では思っています。

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業界の慣習を変えた小さな一歩

記念すべき初めてのログインであると同時に、これは管理会社にとっても初めての成功体験でもありました。その後、このときログインしたオーナー様からWealthParkのチャットに連絡がきたことで、管理会社の担当者がついにWealthParkを利用し始めたのです。当初、現場の担当者の方からはメールや郵送といった従来のコミュニケーション手段で事足りている、そう言われていました。しかし、「より気軽に管理会社とコミュニケーションできる」と、オーナー様の方からWealthParkのチャットを利用し始めたことをきっかけに、最初は利用に消極的だった管理会社の担当者の方の認識が徐々に変わっていきました。

この経験は私にとっても、挫折を乗り越えた成功体験でした。スマートフォンの操作に四苦八苦しながら、WealthParkを使っていただける、デジタルで資産情報を管理できることに喜んでいただける、たったの1名ですが、そんなオーナー様がリアルに存在する、それを実感することができました。そして、そのオーナー様と管理会社が、WealthPark上でコミュニケーションをし始めたその瞬間は、微々たる一歩ですが、私にとっては業界の慣習を初めて変えることができた瞬間でもありました。これを愚直に積み重ねることで、WealthParkの利用者を増やし、業界の慣習を少しずつでも変えられる、そして不動産管理会社や不動産オーナーにもっと便利な体験を提供できる、そう思いました。

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答えのない課題に、顧客とともに、日々真摯に向き合い続ける

1人目のログインに3ヶ月を要したことが嘘のように、今では毎日のように、新しい不動産オーナー様がWealthParkを利用し始めてくださっています。もちろん、1人目のログイン以降も順風満帆であったわけではなく、今日に至るまでも、管理会社の皆様と二人三脚で、無数の試行錯誤の繰り返す日々でした。そして、それは今もなお続いています。しかし、あの日から数年経ち、業界は大きな変化を遂げました。WealthParkを利用いただいている管理会社様の中からは、ペーパーレスを実現し、よりオーナー様に向き合ったサービス提供へ向けた体制の構築を進めるお客様も出てきています(ご興味のある方は、ユーザー会のレポートをご覧ください)。答えのない課題に、顧客とともに、日々真摯に向き合い続ける。それが、WealthParkのカスタマーサクセスの日常です。努力が結果に結びつかない、思い通りに物事が進まない、先の見えない不安に苛まれる、そんな日々の中でチームで愚直にチャレンジを積み重ねた結果が、20,000人という数字であり、私が「業界の慣習は変えられる」と考える根拠です少しずつ、しかし確実に業界は変わっていっています。その変化の最前線に身を置けること、それがWealthParkのカスタマーサクセスの仕事のやりがいなのではないかと思っています。

WealthParkは、ご利用いただくオーナー数を5倍、10倍と増やし、さらなる業界変革を推進していく道のまだ途中です。道半ばの今だからこそ、参画する価値があると思っています。

私たちのチャレンジの一翼を担う「当事者」として、WealthParkに参画してくださる仲間を募集しています。

ご興味のある方は、ぜひ下記よりご連絡ください!



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