一生撮り続けたいという願望があるよ
ひとりの人のことを一生撮り続けたいという願望がずっとある。
写真を初めてどれくらい経つだろうか。
おそらく13年くらい経つような気がする。
最初は映画が撮りたくて、当時動画も撮れるようになり始めた時期のミラーレス一眼を買ったのがはじまり。
そこから別に映画を撮るわけでもなく、たまに触ったりするくらいで「そういえば写真も撮れるんじゃん!」と至極当たり前のことを思い、写真も撮るようになった気がする。
12年くらい前、映画の撮影で静岡に泊まり込みで1週間程過ごすことになった。
最寄りのコンビニまで20分くらい歩かないとたどり着かないような辺鄙な場所で、けたたましいセミの鳴き声と茹だるような暑さが続く夏の時期だった。
僕の役は毎日出番があるけれど1日ワンシーンしかないような役で、空いてる時間が膨大にあってたまたま持ってきていたカメラで撮ることが日課になった。
その時に撮った写真が出演者とかスタッフとかに褒めてもらえた経験が強烈に嬉しくて、そこからカメラにのめり込んでいったんだと思う。
その映画の打ち上げの席で、当時最も尊敬していた俳優の方から僕の現場の居方に対して「写真なんて撮ってんじゃねえよと思ってた」と言われた。
悲しくて泣いた。
でも泣きながら「自分には自分なりの、自分の保ち方があったんだからなにも間違ってねえだろ。黙っとけ!」って思ってた。言わなかったけど。たぶん悲しくて泣いてたんじゃなくて怒って泣いてた。
泣きながら「強い気持ちあるじゃん!いいじゃん!」と思った記憶がある。
そんなこんなで写真を撮り続けて、映画のスチールをやったり、海沿いに住むようになったので風景の写真を撮ったりすることはあったけど、日常的に人を撮るということが圧倒的に不足していた。撮りたいという思いもあった。
人をちゃんと撮るようになったのは2020年になってからだった。
たぶんコロナ禍の、寂しさがピークの只中でも、人に会う口実にできるからという理由もあってその時期にはじめたんだと思う。
まだ4年しか経ってないのか。
もっと経ってると思ってた。
撮り続けていくうちに、1年に3回ぐらい同じ方を撮るような機会も生まれてきてそれはそれで楽しいんだけど、なんかそれでいいのかなと思うようになった。
別にその人は僕だけに撮られたいわけではないし、SNSで他の人に撮られている写真を見るとなんか普通に嫉妬するし(笑)、でも自分が撮るその人の写真が絶対1番いいのに、撮れば撮るほどその人を撮り続ける意味が希薄になっていく感覚があった。
それはただ単純に僕が独占欲が強い化け物なのかもしれないし、とんだメンヘラ野郎なのかもしれないけどそういう感覚はきっと男性カメラマンは特にみんな少なからず抱えているものなんじゃないかとも思う。
男ってほら、ホントにバカだから。
安達祐実、桑島智輝元夫妻の『我我』という写真集がある。
僕はこの写真集や夫婦時代の写真をSNSで拝見して心の底から羨ましいと思った。
一生かけてその人の変わっていくところも変わらないところも写真に収めることができるならこんなに素晴らしいことはないと思う。
カメラもきっと打ち震えて喜ぶと思う。
カメラがこの世に生まれてきた理由のひとつなのでは?とすら思う。
結局このお二方は離婚されてしまったわけで、一生見ていたかったからショックだったけれど憧れの関係性だったことには変わらないし、その瞬間が確かに写真に残っているという事実は絶対に消えない。
「俺もこういう写真を撮るんだ!」
そう想いを確かにしたところから数年経ち、一向に恋人もできる気配もなく、人を好きになりきることもできやしないまま時は流れて想いだけがずっとぶかぷか浮いて残ってる。
たとえ恋人が出来たとして、その人と一生添い遂げる関係になることなんて稀なことだし、別れてもう二度と会わなくなるカップルの方が多いわけで、
それならいっそ早々に結婚という紙切れ1枚の契約で括ってしまうのが1番手っ取り早く長い期間を拘束できるのではないかと思いもするが、自分はそんなに狂気的な人間ではないし当然誰でもいいわけでもない。
そう思いながら机に向かって文章を書きながら、ただ確実に年齢だけが増えていく。
焦れば焦るほど遠のいていく願望かもしれないのでゆっくりその時を待つしかないのかもしれない。
僕はカメラマンとしての活動にそんなに興味がない。
他のカメラマンが労を惜しまず取り組むはずの写真展を開いたり、写真集を出したりという行いを自分もしたいと微塵も思わない。
でも、ただひとりの人を一生撮り続けると決めた、意志のこもった写真たちでならそれをやりたい。
僕が先か相手が先かわからないけど、どちらかが死んだあと、写真集を出して写真展を開くんです。
いつか忘れられるとしてもそこまでしてやっと生きた証が残ったと言えると思うんです。
この想いって重いですか?
僕は書いてて「こいつやっぱり怖いな…こんなやつと出会わないようにしなきゃ」と思いました。誰にも読まれませんように。
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