ゆるやかな依存(短編小説)

ずっとそうなりたかった。

誰かを好きになることが自分にとって必要だとずっと思ってた。それが例え仕事でも女性を前にすると変に意識してしまうし、意識しすぎてなんだこいつと思われてしまうんじゃないかといつも恐れていた。

女性に対して免疫がまったくないわけじゃないんです。
姉がいる家庭だったし、母とも仲が良く、幼少期から頻繁に3人で出かけたり旅行したりして女の子みたいなマインドで育ったし、大人になってからもそれなりに女友達は多い方だったと思います。

それでもなんか最近特にダメだったんです。
上手くしゃべれないわけでもなくて、むしろコミュニケーションは取れてるほうだと思うけど心の底で変に意識をしてしまって、ちょっと余計に疲れてしまうようなところがあった。

この世の中の恋愛市場からさっさと退場してしまえばそんな意識も消えてくれるのかなと思ってた。


そうしてあなたを好きになってみて明確に意識の変化が訪れました。

他の女性を意識することがぱったりとなくなって、性別関係なくその人自身に集中できるようになったし、こわれものに触るように過剰に丁重に扱うことがなくなって今なんかものすごく楽です。

最近できた新たな悩みとしてはあなたに依存しすぎていることくらいでしょうか?

自分にとってあなたの存在がデカすぎて仕事している時以外はあなたのことを常に考えていると言っても過言ではないでしょう。

依存から抜け出す唯一の方法として拠り所を複数作って分散させるというやり方があります。

そうすることで1つのものや人に縛られることなく複数に支えられて自立できるという考え方です。

昔コミュニティに関してのビジネス書を読んだ時に書かれていた考え方で、「自立とは依存しなくなることではなくて依存先を増やすことなのだ!」みたいな内容だったと思います。

僕は当時この考え方にとても感銘を受けたし、救われたような気持ちになりました。

誰かやなにかにズブズブに依存しなくてもゆるやかな依存でこの世の中を生き抜いていけるだなんて、こんなにすばらしいことはないではないかと、そう思いました。

あなたにもいつか話したかもしれませんが恋人をひとり作るより女友達を10人作る方が精神衛生上楽だし楽しいのではないか?その空論の真意はその考え方から来ていました。

でもね、全然そんなことはなかったんです。

この2ヶ月くらいで前に少しいいなと思ったけど結果好きになりきれなかった何人かの人に会ってみたんです。今会うことで自分はどう感じるのかただそれだけが気になって。

会ってみて、あ、やっぱり全然違うなーと思いました。

だって誰といたってあなたといる方が楽しいなって思っちゃうんだもん。

そう思い出してしまったら無意識のうちに受け答えが雑になっていってしまうし、その人といるのにあなたといる時間のことを考えていることに気づきました。

自分は今、隣にいるその人に対してとても失礼な過ごし方をしているという罪悪感からこういうことはもうやめようと思いました。

自分の依存を薄めるために人の時間を奪うことなんてあってはならなかったです。ごめんなさい。


だから今の僕の目標は自分ひとりであなたへの依存度を下げていくことです。

今はどうやら僕が勝手に好きすぎているので依存度を下げた状態にこそもっと良好な関係性があるような気がしています。

その際の注意点があるとするならゆるやかに下げていくこと。急に下げると反動が来るので。

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