身体と脳に効く話 仕事に情熱を持てない?(財団法人郵政福祉「りんりん」第206号(2013年5月1日発行)に掲載されました。)

最近の若い人は…

つい、そんなこと思っていませんか?

新しい能力が眩しく見えるこの季節、その輝きをいつまでも、改めて自分のことについて考える。春はそんな季節かもしれません。


春、新人育成担当の悩み

新緑の頃、50代後半になる女性会社員の方から相談をいただいたときのことです。慢性的に頭痛に悩まされているとのことで、最近寝つきが悪く、ついついお酒の力を借りることが増えてきたといいます。

Kさんはあるメーカーで新入社員の育成を担当しており、毎年4月から6月にかけての時期は、ずいぶん忙しくなるそうです。その年、Kさんにとっての頭痛の種は、ある新入社員の態度でした。

その新人は話を聞くと十分に知識はあるそうですが、実際に仕事をやらせてみると全く話にならない。本質とはかけ離れたささいなことを見つけてはKさんを質問攻めにする一方、自分から仕事を探そうとはしない。「言われるまでずっと立ちすくんでいて、やる気が感じられない」と肩をいからせて語るのです。

そんな新人に辟易としながらも、投げ出してはいけないと我慢の日々を送っていました。「〝最近の若い人は〟とは言いたくないけれど、会社の社風になじめないなら早くやめたらどうかしら」と心の内では思っていたそうです。

新しく組織に入った人たちの目線で考えれば、仕事に対する疑問を解消しようと、先輩たちにアドバイスを求めるのは自然なことです。今後の成長を考えれば、たくさんの疑問がある方が良いはずです。一方、それに対して何もかもわかりやすく丁寧に教えるべきと言うのが最近の風潮で、Kさんに「教え疲れ」が出るのも無理はありません。

社会人経験が浅い新入社員に対し、最終的には「そんなことを考えていては損だよ」とか、「こうやったほうが得だよ」と言うより他ない様子です。頭からつま先まで、すべての筋肉の緊張を緩めると、Kさんはいつも「ああ、このまま何も考えずに眠っていたい…」と言いながら、セッションを終えるのです。


夢と現実の狭間で

ある時、Kさんにご自身の入社当時の話を尋ねてみました。少しでも現状から前に進んでもらいたかったからです。

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