【ホテルログ②:Sister City New York】 制限を「ポリシー」と言い換え、クリエイティブで正当化
二回目のホテルログ。前回に引き続き場所はNY。
ACE HOTELのクリエイティブチーム、Atelier Aceが手掛けた新しいホテルがあると知り、NYに行ったら必ず泊まろうと決めていました。
長年のACEファンで、過去5都市のACE HOTELに泊まってきた僕としては無視できない!
鼻息荒めで向かうと、沢山のインスピレーションを与えてくれる、素晴らしいホテルでした。
Sister City New York, NY, USA
僕、ACE HOTELが大好きなんです。
7年前にACEの存在を知ってホテルの可能性に衝撃を受けて、ホテルを作りたいと思うようになりました。(そういう人結構多いと思ってます。)
創始者のAlex Calderwoodのあらゆる記事を食い入るように読み、講演の動画は何度も繰り返し見て、一語一句彼が発言している言葉を覚えたり。
それからACEがある都市では必ずACEに泊まり、これまで、NY・LA・Portland・Palm Springs・LondonのACEに泊まって来ました。来年開業の京都も楽しみ。
今ではメジャーになりすぎて、ヒップスターが集いすぎたり、インスタ映えスポットみたいになってしまった面もあるけど、やっぱり今でも一番チャレンジしててかっこいいホテルグループだと思っています。
ACEが面白いのは、どのホテルも独特で、各土地の地形やローカルのモノ作りを反映して作られているし、自分では思いも寄らないアイデアが用いられているところ。ホテルの作り手が、固定概念を常に疑って、最高に楽しんで空間を作っていることが伝わるんです。(これは俺には作れねーーーと毎回凹みます。)
それを牽引してるのがACEのインハウスクリエイティブチーム、Atelier Ace。ホテルのコンセプトメイキングから、内装、グラフィック等デザイン面を担当しています。
Concept
Sister Cityのコンセプトは、Less, But Better。ミニマリズムを追求しています。以下がHPに記載されたコンセプトの全文。
内装や機能、全てがこのミニマリズムのコンセプトに基づいて設計されています。
LOBBY
Lobbyは無垢材の格子で囲われたデザインが印象的。木の温かみと、不揃いに配置された数色のテラゾータイルがマッチして北欧っぽい雰囲気。
チェックインカウンターはなく、チェックインマシーンが設置されていて、セルフチェックインができます。
部屋のカードキーも自分で枚数を決め発行する仕組み。ミニマリズムのコンセプトを機能でも実現。アメリカやオーストラリアは、こういう効率化へのスピードが本当に早い。
LOBBYから続くカフェエリアも、木の温かみを感じるミニマルデザインです。
ROOM
部屋は狭く、16㎡くらい。無垢の腰壁と、麻っぽい素材の壁でナチュラルな雰囲気に。
部屋が狭いので、必要なものしかおいてありません。このミニマリズムに根ざした、「機能削ぎ落とし」の追求がすごい。
部屋にはクロゼットは無し。ハンガーは壁付けで設置されていて、使いたい時だけ出せる仕組みに。小物を置ける棚にもなっています。
小さい洗面台スペース。お湯は使えず水のみ。テラゾー風のシート仕上げでした。
ここからがおもしろい。
バスルームには、「HAIR AND BODY WASH」と、「CONDITIONER」
シャンプーとボディーソープが一緒!
確かに、シャンプーで体洗えちゃいますよね。
シャワールームの蛇口は、水温調節機能のみ。水量調整はできない。確かに、チョロチョロ浴びる調整、必要ないっちゃない。
もちろん部屋には冷蔵庫はなく、飲食物は水だけがぽんと置いてあります。それもペットボトルでなく、タップウォーター。徹底がすごい。
通常ホテルで必要とされる全ての機能において、「これ、本当にいる?」と徹底的に再考して削ぎ落としを実現しています。「いや、いらないっしょ!こうすればよくない?」「それやばいね!」っていうMTGが想像できる。めっちゃ楽しそう。
ROOF TOP BAR
ホテルの最上階には、ROOFTOP BAR Last Lightが。
部屋の機能が限定されている分、BARはかなり豪華。屋内テーブル席も、アウトドアスペースも広く、マンハッタンの景色を見渡せます。
午後3時〜夜中まで開いているので、宿泊者のリビングとして幅広い使い方ができます。もちろん宿泊者でなくても利用可能です。
(写真は夜だったので上手く撮れませんでした。。)
夜12時前に行くと、DJが入っていて、DJの友達らしき地元の若い人々が踊りながら飲んでいました。夜はパーティモードになるみたい。一人旅にはちょっと辛い雰囲気だったので、一杯で撤退。笑
制限をコンセプトと言い換え、クリエイティブで正当化
僕が勝手に想像するに、このホテルの立ち上げ時、元々の物件の特徴、マンハッタンの家賃の高さなど制限の中で、コストカットが必要となっていた。そこで、Less but betterのコンセプトを考案したのだろうと思います。
そこからミニマリズムのコンセプトに合わせ、あらゆる機能、サービスについて固定概念を捨て再考。部屋には冷蔵庫も、クロゼットもない。ハンガーラックは使いたいときだけ壁から出せる仕様に。ボディソープとシャンプーは同じもの。シャワーは水量の調整機能がない。確かに、この辺の機能、あんまり使わないですよね。
HPもこんな風に必要なことだけ記載し、インターネット黎明期の様なデザインになっていて逆に新鮮。
このゆるさのあるシンプルさが絶妙。
−Book a room, create an account or do something else.
−予約する、アカウントを作る、それ以外をする
つい最近東京でミニマリズムを掲げる新しいホテルの情報を見たのですが、サイトがクール過ぎて動きも激しくて、欲しい情報も見つからないし、使いづらかった。「全然ミニマルじゃねーw」と思いました。
Sister Cityのように、過剰な機能を最初から削ぎ落とす事により、運営側はコストカットが実現できます。
ただ、「削ぎ落とす事」は、単価を下げることにも繋がり、中々できない意思決定です。
Sister Cityがすごいのは、「制限をコンセプトと言い換え、クリエイティブで正当化している」こと。「これが我々のスタイルだ!」ってやりきってるから、客側も文句が言えない。
これこそがクリエイターの価値だよなっていう仕事だと思います。
滞在情報
最後に滞在情報です。
場所はLower East SideのBoweryエリア。ミニマルズムの王道ホテル、PUBLICの直ぐそばです。
Lower East Sideには面白い個人店がたくさん。街歩きも楽しいエリアで、滞在場所としてはとてもおすすめ。
僕が泊まった部屋は、ホテルと税金込みで$350。日本円で約¥38,000。高...。これでもNYではまあ安いほうなのです。
1Fのカフェレストラン、最上階のルーフトップバーは誰でも利用可能なので、NYに行く際は是非覗いて見ください!
Instagramも良ければフォローしてください!