【ホテルログ⑦:ACE HOTEL KYOTO】世界のフィルターを通して日本の魅力に思い巡らす
こんにちは。井澤卓です。
ホテルが大好きで、国内外のホテルを泊まり歩き、ホテルログを書いています。
7回目のホテルログ、今回は日本に上陸したばかりのACE HOTEL KYOTOについて書きました。
ACEがアジア初進出に選んだのは、日本らしい風情が残る伝統の都、京都。
長年のACEファンとしては行かない手はない。ということで、オープン初日の6/12に早速泊まってきました。
ACE初のアジア進出となるこのプロジェクトで、どのくらい彼らの思想が反映されているのか。今回もたっぷりの写真とともにお届けします。
Ace Hotel Kyoto, Kyoto, Japan
以前、ACEの姉妹ブランドSister Cityのホテルログでも書いたのですが、僕は大のACE HOTELファン。7年前にACEの存在を知りホテルの可能性に衝撃を受けて、自分でホテルを作りたいと思うようになりました。
それから初めて訪れる旅先にACEがあれば必ず泊まるようにしていて、これまでに5都市、6箇所のACEブランドに泊まってきました。
ACEが面白いのは、どのホテルも独特で、各土地の地形やローカルのモノ作りを反映して作られているし、自分では思いも寄らないアイデアが用いられているところ。
どのホテルも見た目は全く異なるけれど、しっかり「ACEっぽさ」の統一感が取れているのが不思議。
「京都はどうやってアレンジするんだろう」と、とても楽しみにしていました。
建物:新風館
ACEHOTEL KYOTOは、1926年に建てられた旧京都中央電話局を再開発した商業施設「新風館」の中にあります。
新風館は、2016年の旧館から4年の歳月を経て、隈研吾氏のデザイン監修の元、この春リニューアルオープンを遂げました。
商業施設エリアには、ビームスジャパン、メゾンキツネ、1LDK、GLOBE SPECS等、カルチャー方面で支持を集めるプレイヤー達が進出。
名のあるカルチャーメイカー達を麓に置き、1F-7Fにホテルが入る構造は、ニューヨークのACEに似たものがあります。
どの街でもカルチャー創出起点になるACEの在り方を継承し、京都でも話題性十分なデビューとなりました。
エントランス & ロビーエリア
ホテルのデザインはLAのデザインスタジオCommune Designが担当。Palm SpringsやLAのACEをデザインしたチーム。4箇所目となる京都は、「East meets west」をコンセプトにデザインしたそうです。
ACEといえばロビー。代名詞となった遊べるロビーは京都でも健在。
3Fまで吹き抜けになった開放感のある空間にゆったりしたソファやデスクが設置されています。
宿泊客でなくローカルにも開かれており、あらゆる目的で利用可能です。
ロビーには日本初出店のSTUMPTOWN COFFEEが隣接。
ポートランドやニューヨークのACEではおなじみのコンビがここ日本でも見られるのは胸熱。
人気のACEグッズも販売されています。
アパレルから寝具、アメニティ類まで揃っていて、もちろんクオリティも高いので、ここを見るだけでも楽しい。
廊下・共用部
建物は新築棟・旧棟が混在しており、建物内でも色々な表情が楽しめます。
襖のような壁作りなど、モダンに取り込んだ日本の要素が随所に散りばめられています。
高い天井と柱づくりが印象的な旧棟の廊下。
ヒストリックな様相を残していて、息を呑むほど美しい空間。
アーチがかったくぼみの中、少し中心からズレた位置にある客室へのドア。
この微妙なズレがなんだかお洒落。
新築棟の廊下はシンプルなモノトーン。
シックな廊下を抜けてドアを開けると、ACEらしい空間が広がっていました。
客室①ヒストリックツイン
3名で訪れた今回は、あえて部屋を分けて2種類の部屋に泊まりました。
まずは旧棟にあるヒストリックツイン。
48㎡の広さと高い天井を併せ持つ贅沢な空間は、建物の歴史を感じられる特別な客室です。
元の建物の構造を生かした独特な部屋の構造が面白い。
ACEらしく、アーティストとのコラボレーションで伝統的な空間をアレンジしています。
ドアを開けると目に入るのがこの景色。
どことなく日本のクラシックホテルを継承しているようなデザインで、懐かしさを感じます。
部屋に入り廊下を抜けて開けた場所にはソファエリアとデスクエリア。その先にベッドが2台設置されています。
日の丸を思わせるアートワークや和紙で作られたシェードランプで日本風にアレンジされたソファエリア。
印象に残ったのは、座布団で作られた即席のソファ。
モダンなパターンを落とし込むだけで、座布団がこんなに魅力的になるなんて。背もたれも、座布団を丸めた物をラフに置いただけ。
この絶妙なラフさが空間をキメすぎず、居心地の良さを生み出してくれます。
こういう一捻りしたアイデアを随所に取り入れるのがACEの真骨頂。
座布団をホテルにというのは、日本人だと見過ごしてしまうアイテムだと思います。
余談ですが、何年かぶりに座布団に座って、めちゃくちゃ座心地いいなーと感動しました。海外の人々のフィルターを通したおかげで、日本の良いところに改めて気づけるのは魅力の一つですね。
部屋のアメニティ類にもこだわりがあります。
ドリンクセットは旅館テイスト。不揃いの湯呑がかわいい。
「Ice Bucket」というレタリング含め、館内で使用されるフォントは全て染色家の柚木沙弥郎さんによるもの。94歳を迎えた現在も精力的に活動を続けるアーティストです。
洗面台は和を感じるスタイルに。
ソープ類はトータルビューティーカンパニーukaとのコラボレーション。
ACEを形作る大事な要素である音楽も充実。
部屋にはレコードプレイヤーとギターが置かれています。
元々の構造を活かし、ACE流にモダンにアレンジしたヒストリックツインはスタッフもおすすめの客室だそう。
個人的にも旧棟の方が面白いと感じたのでおすすめです。
客室②デラックスキング
デラックスキングは、新築棟にあるシンプルな一室。
といっても30㎡あるので広さは十分。構造は異なりますが、デザインコンセプトは前述のヒストリックツインと同じです。
ベッド脇の小上がりは畳に。
これは畳を忘れつつある日本の住居にも使えそうな良いアイデア。
ここでも登場するアイコニックなパターンが空間のアクセントとして効いています。
カーテンはミナペルホネンのもの。
この部屋にもしっかりレコードプレイヤーがあります。
レコードは、YAZAWA!
日本人だけがわかるニクい演出も忘れない。
部屋の入口にもこんな仕掛けが。
このほうき、何かと思ったら、よく見ると、「NOT NOW 後でヨロシク」と書いてあります。 Do Not Disturbのプレートの代わりなんですね。
気づくか分からないシャレにコストを投じる姿勢が本当にすごい。
ウィットに効いた工夫は、作り手自身が楽しみながら、訪れる宿泊客を楽しませたいという想いの現れ。
こんな風に、散りばめられている小ネタや小さなこだわりを探すのも醍醐味の一つです。
レストラン
レストランは2種類あります。
二階にあるのはバー&タコラウンジPIOPIKO。
二階と中二階の二層構造が面白いレストランは、天井が高く開放感抜群。
上の写真が中二階のスペース。二階に植物が配置されて空中庭園の様に。
随所に使われた銅は経年劣化を楽しめます。
二階スペース。セレクトされた大型の植物達がかっこいい。
食事はしませんでしたが、本格的なカクテルメニューがありどれも美味しかったです。タコスを片手に軽く飲むのも、しっかりディナーにも色々な使い方ができそうなレストランです。
そして、三階にはルーフトップバーを備えたイタリアンレストランMr. Maurice’s Italian。
日がたっぷりはいって気持ち良い空間。
外にはルーフトップテラスが広がっています。
印象的な仕切りのアートワークは、LAのアーティストAlexander Kori Girardによるもの。
ここでもアーティストとのコラボレーションを全面に押し出しているところがACE流。
紙のメニューはなく、QRコードを読み込ませてHPへ飛ばす仕組み。
ペーパーレスの取り組みは参考になる。紙のメニューはコストもばかにならないし、感染症への対策としてもデジタルのみという選択肢は今後増えていきそうですね。
パスタやピザなど、本格的なイタリアンが楽しめます。
バーエリア。
Maurice’s Italianは朝から夜遅くまで営業しています。
宿泊しなくともACEの魅力を味わえるので、遊び場として人気のスポットになりそうです。
海外のクリエイターのフィルターを通して日本の魅力に思い巡らす。
最後に少し長くなるんですが、感想を書かせて下さい。
3、4年程前に京都にACEができると聞いてからずっと楽しみにしていたので、日本にできたACE HOTELの滞在は感慨深いものがありました。
「古都京都で歴史を持つ伝統的な建物」という少し迎合してしまいそうな物件ですが、さすがはACEチーム。
建物の歴史を捉えた上で、アートや音楽を使ってポップにアレンジされた空間はやっぱり居心地が良かったです。
ACE初のアジア進出となる大型プロジェクトということで、どのくらい彼らの思想が反映されているのかとても興味深く見ていたのですが、日本でも期待を裏切らないACEらしい空間が出来上がっていました。
アート、テキスタイル等装飾デザインには国内外のアーティストを起用しています。アーティストを探すにも、5年の歳月をかけたそう。
中でも、独特なパターンが目を引くカーテン、モダンなデザインを落とし込んだ座布団など、襖風の壁作りなど、日本で日常使いされているプロダクトをACE流にアップデート。
日本人だったら逆に見過ごしてしまいそうな要素を取り込んだ空間には、日本のカルチャーへのリスペクトが感じられました。
海外のチームが作った空間だからこそ、世界のフィルターを通して日本の魅力に思い巡らすことができます。
「海外の人の目を通して、日本を知る。」
それは、一種の旅だと言えますよね。
旅というのは、物理的な移動だけではなくて、日常から離れ新しい価値観との接触を通して自分自身に向き合ったり、新しい自分に出会うことだと考えています。
しばらくは海外に行けない今だからこそ、今までとは違う視点で日本を旅する機会かもしれません。
今改めて日本の古都京都に行き、海外のチームが作ったACE HOTELに泊まることも、新しい旅の楽しみ方ですね。
ウィットに効いた遊び心の反映
もう一つ嬉しかったのは、レコードのセレクトやドアパネルのほうきに見られたようなACEらしい遊び心が京都でも隅々まで反映されていたこと。
これは個人的にすごいなーと思いました。
こんなシーンが想像できます。
「日本では掃除する時に竹で作ったほうきを使ってたらしいよ。これを"NOT NOW / 今じゃない"って書いてドアに掛けといたら面白くない?」
「それやばいね。でもコストめっちゃ上がらない?」
「上がるねー。でもやりたくない?」
「いやーやりたいね。やろう!」
そんな会話があったのか無かったのか定かではありませんが、言ってしまえばシャレのために追加コストを投じる意思決定、すごいですよね。
このシャレは、一見無駄なことだけど、意味があることです。
でも、コストが逼迫したビジネスの中で、人によっては無駄に見えることに力を注ぐのは中々難しい。
僕自身もデザインチームとしてクライアントワークを請け負っている中で感じますが、この提案が受け入れられる土壌はそうそうないので、勝手に背景を想像して唸ってしまいました。
なぜこれができるのか。
それは、ACE チームと内装デザインを担当したCommuneチームが仕事を超えた同志だからだと思いました。
同じようなライフスタイルを持ち、同じソーシャルコミュニティに属する仲間達がやっている。本当の意味で遊びと仕事が繋がっている。
「自分達が面白いと思うんだから、みんな喜ぶよ。」
そんな風に価値観を瞬時に共有できるからこそ、余白を大事にする意思決定ができるんだと思います。
そういう意味では、ACEがシアトルで立ち上がった時の空気感を、大きくなって巨大なプロジェクトを手掛ける今でも維持しているということですよね。
全米に広がり、世界中のホテルシーンに影響を持つまでになったACEが、ビッグビジネスになり形は変われど、"Stay Small"を貫いていること。
改めて自分にとって憧れの姿勢だなと実感し、自分達もそうあり続けたいと思いました。
僕が滞在したのは初日ということで、「人が作る空気感」は正直まだぎこちない部分もあったけれど、これから長い年月をかけて、ACEの空気感を纏っていくのだろうと思います。
この場所が新しいカルチャー創出起点になっていくのが楽しみです。
滞在情報
最後に滞在情報です。
宿泊代金は、一泊30,000円前後〜と、世界のACEの中では比較的高い価格設定。
ACEのHPでは部屋が見づらいので、各部屋を見たい方はBooking.comをチェックしたほうが良さそうです。
宿泊せずともロビーエリアやレストランは利用可能なので、京都に行く際は是非新風館と共にACEに立ち寄ってみて下さい!
<Ace Hotel Kyoto>
HP:https://www.acehotel.com/kyoto/
Instagram:https://www.instagram.com/acehotelkyoto/
Address:245-2, Aneyakojidori Higashinotoin-nishiiru, 車屋町 中京区 京都市 京都府 604-8185
Price:一泊約30,000円〜
ホテルログは、マガジンにまとまっています。
よかったらフォローしてもらえると嬉しいです!
instagram、Twitterも是非!