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隔週連載エッセイ 遠藤習作 2021/2/22 vol.3

機種変更


いまいち、世の中には乗り切れない。
よっぽど好きなことじゃないと、
「乗るしかない!このビックウェーブに!」とはならない。
昔から周囲にガジェット好きな人が多くて、
「何とかの発表会」とかだと深夜でも見て「おおー!」とか喜んでいるのを
しり目に、ずいぶんガラケーだったりしたものだ。
スマホにしたら、「おおこれは便利だ」となって、それはそれで使うタイプなのだが。
何が嫌かって、トラブル、たとえば故障してしまったり、データが消えてしまったり、
というのが大嫌いだ。(これは車でもそうだ。見た目がどれだけタイプでも、
故障が多い車には乗れないタイプだと思う)
でも、例えばライブレポートで写真も一緒に撮る、とかそういうとき、
スマホで撮れば印刷にも耐えられる写真が撮れたり、
インタビューなどもスマホで録音してしまったり、
とにかく、スマホがなくては仕事が成り立たなくなってしまった。
その上、「林さんのライブ写真、すごくいいからぜひ撮ってください!」と
ありがたいことにおっしゃってくださるアーティストまで出現。
スマホ撮影なのに。

それでも、だいたい数年使って機種変更するタイプだ。
フと確認してみたら、今使っているのがずいぶん長いこと使っていたものだったので、
機種変更を思い立って、手配してみた。
本当はネットでモノだけ取り寄せてやるのが一番スマートなんだろうけど、
まだそこには至らない。携帯会社のショップに出向いた。

何だかアンケートにたくさん答えさせられて、これは機種変更に必要な情報なんだろうか、
と思いながら答えていき、
自宅のネットや電話、あげく電気までセールスがあった。これで約1時間。
疲れてきたころにやっとオーダーしたスマホが出てきた。
そこから、いろいろなセールスが始まって、また1時間。
スマホの充電器から、スクリーンに貼るシールまで……
いずれにせよ、ケースを買いにショップから近所のスマホ関連の店に行こうと
思っていたので、要らないです、要らないです、と言い続けて、
やっとスマホの電源が入る段階までやってきた。
隣ではおじいさんが何か騒いでいたので、
何だろうと思っていたら、ガラケーからスマホに機種変更したいらしいんだけど、
細かいことはわからないし、出来ないので、やってほしい、とお店の人に
大声で訴えていた。
それはお店の人も困るだろう。昔は電話帳からデータまで、携帯ショップで入れ替えてくれたりしたものだったけど、今だとスマホ同士でもパソコンが必要になったり、
サーバー上にデータがないと入れ替えられないご時世だ。
(自分の買ったスマホはお互いをちょちょっといじって近くに置いておけば
全部データが移る、っていうちょっと驚きの手法だったが)

苦節3時間強、やっと新しいスマホを手に入れて、店を出た。
ずーっとセールスに苦しめられて、やっと解放されたような気分だった。
心底げんなりした。長期的に考えたら、マイナスセールスになるはずなのに、
なんで携帯会社はこれをやめないんだろう?

新しいスマホは慣れない。まるで新しく手に入れたライダースを着たときのように。
革のキツさ、身体にあってない感じ、
新しいからちょっと気を遣う感じ、
本当にそっくりだ。
いつしか、慣れてそこらに放りだしたり、
適当に脱ぎ捨てたりするようになる、
自分の身体に合って変形してストレスを感じなくなる、
そうなってからがライダースもスマホも本番、なのかも知れない。
いや、スマホは違うか……


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