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鼠径ヘルニア記

はじまりは、風邪だった


風邪の症状の一つでリンパが腫れているのかと思っていたんだ。
足の付け根、ビートたけしのコマネチのポーズで手のひらがくるあたりにしこり、触ると痛い、歩くと痛い。風邪が治れば治ると思っていたけど、熱が下がり日常生活に戻ってもしこり、というかコブが足の付け根左右にそれぞれ一つづつ、歩くと結構な痛みが。例えるならキンタマが新しくできてそれをグリグリされている感じ。これは何かがおかしい。

ネットで調べてみた。

鼠径ヘルニア?

鼠径部の筋肉の継ぎ目から腸が飛び出る病気らしい。押し込めば戻るけど戻らなくなったらかなりヤバイ。治療法は手術のみ。なるほど押してみるとポコっと引っ込む(かなり痛い)キンタマが体内に引っ込むときとおんなじ感覚だ。病院に行こうと思っていたけど内科なのか外科なのか迷っていたけど手術となれば外科だ、早速病院へ。

症状を伝えると、先生は「ヘルニアでほぼ間違いないですね。MRIを撮りましょう」というわけでMRI撮影。ぽこっと飛び出る内臓が写っていた(腸なのかはよくわからなかった)そして入院日が決定。手術すればキンタマがグリグリされるような痛みとおさらばできるな。と心躍った。

入院、手術

入院日がやってきた。午前中に入院して午後に手術。コロナウイルス検査を受け、陰性を確認後病室に案内される。荷物を整理して手術着に着替え、ベッドに寝て待つ。おなかがへったが昼飯は出ない。

そして病室で点滴を受ける。麻酔に入る前の軽い麻酔のようなものらしい。点滴を見上げているとだんだんと頭がポワーンとしてきた。そしてお迎え、両脇を看護婦さんにサポートされ車椅子に乗り込み病室に。結構なスピードでの移動はちょっと面白かった。

手術台に移され横向きで膝を抱え込む体制に。そして背骨あたりから麻酔。ぐいっと押される感じの結構な痛みだった。そして仰向けになると意識がすーっと消えていった。

目覚めたのは手術がちょうど終わるころ。時間が飛んだような不思議な感覚。縫合して終了(見えないけど)そしてストレッチャーに乗せられ病室へ、結構なスピードでの移動は行きの車椅子といっしょ。

病室へ

病室のベッドに移され点滴の針を腕に射され人差し指には心電図、両足にはむくみからの血栓を予防する空気で圧迫を繰り返す血圧計のような装置を付けられる。手術直後は動けなかった体が、麻酔が切れてくるともぞもぞ動かせるようになるとともに痛みが襲ってきた。が、体に色々装着されているので寝返りは打てない。

深夜、猛烈な尿意が。ナースコールをして「トイレに行きたいです」と言うと「まだトイレは無理ですよ、おむつにしていいですよ」と言われ去っていく。ならばおむつにするかあ。と試みてみるも体が拒絶しているのかどうしてもおむつには放尿できなかった。時は経ち更に尿意が猛烈になり膀胱のあたりはパンパンに張り石のようにカチカチに。再びナースコール「おむつではできません、トイレに行きたい」と言うとそれならばしびんを持ってきてくれた。膝立ちの体制でしびんに放尿成功。これで眠れる、と思ったのは明け方近く。

病室ぐらし

翌朝人差し指の心電図と両足の血栓予防装置が外され、起き上がることができる状態に。体を動かすと激痛、特に上体をおこすのがかなりつらかったけど一歩前進だ。食事も摂れるし。


食事には持ち込んだ塩と醤油が活躍した。特に小笠原の塩が大活躍。塩の結晶の食感が食事にアクセントと満足感を与えてくれた。


トップ写真は病院の渡り廊下からの夜景。外出できない中唯一見れる外の景色だった。4泊の入院だったが、何より大変だったのが退屈の潰し方。行動できる範囲には病室と自販機しかない。スマホを見たりウロウロしたりウロウロしたり自販機コーヒー買ったり持ち込んだおやつを食べたりデータ通信量も爆上がり。ライオネスコーヒーキャンディは美味しかった。


4泊入院して無事退院。下界に戻ってこれた時は心が開放された感じだった。病室にも病院にもスタッフさんたちにもとても良くしていただき、何の不満もないけど、気がついたら「娑婆の空気は美味いぜ」とつぶやいていたよ。

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