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マグロ完全養殖についての今後
マグロの完全養殖は、近畿大学が世界で初めて成功したクロマグロを受精卵から成魚まで育て上げる管理技術だ。1970年代から試行錯誤を重ねながら研究し、2002年ついに成功に至った。
クロマグロといえば獲りすぎにより、近年は資源量が著しく減少しており、今後マグロが食べられなくなる可能性や、ただでさえ高いのにさらに高級になり一般人が手が出せない状況が考えられた。
そんな中に希望の光が差したのは近大マグロで、
これから期待大の技術であることは間違いない。資源保護の観点はもちろん、相場の乱高下を防ぎ安定的に市場に供給できるなど、将来的に美味しいマグロをいつでも食べれるようになる可能性があるが、まだまだ発展途中で初期投資などコストが高く、一般的になるのはまだまだ先だろう。
そんな中このニュース。
要因は天然資源が回復傾向にあるということで、
マグロ稚魚(ヨコワ)を獲れる量が増えれば、マグロの蓄養業者の仕入れる量が増え、市場に供給される養殖マグロが増える。おそらく近年と比較し安価な価格で消費者が購入できる可能性があるが、生産者にとっては供給増で単価下がり、餌料高騰によるダメージがどれだけあるかということ。天然稚魚から育成する蓄養と比べるとコスト高な完全養殖はこういう状況だとさすがに厳しい。
ただ資源量の回復が漁獲量増加につながるかといえば、今後そう簡単にいかいだろう。
クロマグロは回遊魚で沖縄周辺で産卵して生まれた稚魚は北上し三陸や北海道付近まで広範囲に移動する。水温や餌の影響でルートを変えているが、最近では地球温暖化影響か海水温が上昇傾向のため、今後いつものような場所で漁をすれば間違いなく獲れるという保証はどこにもない。年末特番で大間のマグロ漁師がよく使っているマグロが大好物の餌となるスルメイカは10年ほど前九州から北海道で水揚げされ年間30万トン近くあがり安価なイカとして評価されていたが、今では2025年の漁獲枠は1.9万トン程と1/10程になり、もちろん高騰している。
餌が無ければ違うルートで回遊することは容易に想像できる。
完全養殖マグロはこれからの技術進歩で、生産コスト下がっていくようであれば、今後も天然海域から漁獲できるかどうかわからないなか、必ず需要は増えてくるだろう。