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かみさまがくれた休日を過ごす島で過ごす人 vol.8

「かみさまがくれた休日を過ごす島で過ごす人 vol.8」
短編小説『かみさまがくれた休日シリーズ』の世界を舞台にした短い短い島人たちの不思議な物語。

「アイちゃんと私」

(登場人物)
・私・・・本島からやってきた看護師
・アイ・・・ホテルろんぐばけーしょんのオーナーさんとおかみさんの娘

この島にはアイちゃんという不思議な女の子がいる。あまり小さい子と関わってきたことがあるわけではないので、どういう子が普通というのかわからないけど、でも、不思議な子であると私は思う。

アイちゃんと出会ったのは島に来てからどれくらい経ってからだろうか。
きっと海で会ったのだろう。そうとしか思えない。彼女は私にとっては海の妖精なのだ。

「こんにちは。アイちゃん」
「あー、こんにちは」とアイは笑顔で挨拶をする。

「今日も海で遊んでいるんだね」
「うん。ここがアイの場所だから」

「ここの砂浜好きだもんね」
「うん。でも砂浜だけじゃなくて、この海ぜーんぶ」

「えー。この海全部がアイちゃんの場所なの?」
「うん。そうなの」

「へー、それはすごいね」
「うん。すごい。ひろい」

「そうだよね。ひろいよね」
「うん。でも、せまい」

「え、せまいの?」
「うん。どこかにつながっているから」

「ふーん。それは無限ではないということ?」
「ムゲン?」

「うーんと、どこまでも進むことができないということ」
「うん。そう」

「どうしてそれがわかるの?」
「うーん。どうしてだろう?」

「すごいね」と言うと、へへへ、とアイちゃんは笑う。

最初は小さい子との会話はそんものなのかな、と思ったけど、彼女は年の割にはしっかりしているのではないかと思う。もちろん、その年齢らしい可愛らしさはあるのであるが。

「今日は何して遊ぶの?」
「遊ばない。お仕事」

「何のお仕事しているの?」
「よくすること」

「何をよくしているの?」
「全部」

へー、それはすごいね、と言うとまたへへへ、とアイちゃんは笑う。
それがとても可愛らしい。

急に彼女はぼーと海を見つめ出す。どこにも焦点は合わせることはなく、ずっとずっと海の先を見ているような気がする。そして、何かを祈っているように感じる。

彼女にしか見えない世界があるのかもしれない。彼女は「なにか」を「よく」しているのかもしれない。

「終わった」と言って、ふー、と息を吐く。

「何が終わったの?」
「仕事」

「仕事が終わったんだ。おつかれさま」
「うん。ありがとう」

「あれ、あっちになんかいる?」と海で水飛沫が見える。
「うん。イルカさん。喜んでるの」

「どうして喜んでるの?」
「お手伝いしたから」

「ああ、さっきの仕事ね」
「うん」

何がどうなっているか、なんてことは私にはまったくわからないけれども、たしかにアイちゃんは、「なにか」「よい」ことをして、それに対してイルカがお礼を言っているようである。

そう思えばそう見えるし、でも、本当のところはただの偶然なのかもしれない。

でも、この変わった女の子はそれを信じている。
だから、私もそれを信じたいなと思うのである。

「ありがとう」
「え?」

「信じてくれて」
「うん」

ほんとアイちゃんは不思議な子だ。

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