旅立ちにあたって
アートについてきちんと学びたいと、京都芸術大学大学院超域プログラム後藤ラボに入学して既に3カ月が経った。Amazonから届く本の山の消化が追いつかず、既にレポート締切の心配をしているが、新しい世界での楽しい日々を送っている。noteでは既にiARTを紹介する投稿を2本しているが、それと並行して後藤繁雄「アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻」(光村推古書院、2018年)を手始めに、全般的なアートについての学びや体験について書いていきたいと考えている。この後藤先生の本は、自分にとっての未知の世界、アートワールドを冒険するに際しての初期装備であり、地図でもある。冒険という言葉から話を膨らませると、自分はこれからの数年間の学びを「行きて帰りし物語」にしたいと考えている。正直に話すと、自分はアートは好きだが、コンテンポラリーアートや抽象芸術の大部分は「価値がわからない」のである。例えばサイ・トォンブリーはDIC川村記念美術館などで実物を見ても落書きにしか見えない。強がるわけでないが、これはアートワールドの住人以外の一般的な見解ではないだろうか。
もっとも、既にこの3カ月でおぼろげにわかってきたこともある。例えば具体的な物質を表現しない抽象芸術について。これは音楽が具それ自体で人の心を動かせるように、絵画などの視覚による芸術でも同様のことができるのではないか、という試みから始まっているというのは、非常に腹落ちがした学びだった。なので、アートワールドを冒険していくことで、いつかは自分もサイ・トゥオンブリーの価値がわかるようになるかも知れない。ただ、「行きて帰りし物語」にしたいというのは、最後にはまた今の感覚、「これって落書きじゃない?」を忘れないようにしたいのである。その理由は、コロナ後の広く薄く広がった世界で、自分の考えるiARTを体験するのは、現在のアートワールドの住人以外だと考えているからである。
冒険は遅々として進まず、常に道に迷い、場合によっては志半ばで挫折することもあるかも知れない。それでも、お付き合いいただき、ご助言等いただければ幸いである。