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心臓手術体験記 ~Vol.2~

前回のおさらい

マルファン症候群で、定期的に病院で検査を受けていたが、長らく検査結果に大きな問題がなかった私。
3ヶ月に1回隣県の大学病院に行くのに疲れたので、近所の公立病院に変えてもらうました。
そして、その病院でのはじめてのCT検査を受けることになります。

突然の電話

2024年6月にCT検査に臨みました。
検査自体は非常に和やかな雰囲気で進みました。
技師さんから「こんなにガタイのいい(オブラート)マルファンの人みたことがないよ~」とか冗談を言いながら気楽に検査を受けていました。
検査の結果を聞くのは、次に診察を受ける9月だと思っていました。

ところが、検査から1ヶ月とたたないうちに電話がかかってきます。
「検査の結果があまり良くないかもしれないんだけど、うちの病院じゃ判断できないから隣県の大学病院の先生に診てもらってね」

うーん。
自分がお願いしといてなんですけど、そうなるんだったらそもそも出さないでほしかったし、引き継がないでほしかったですね。

というわけで、7月頭に大学病院の先生がなぜか公立病院のほうまで来てくださって診察だけ受けます。
大学病院の先生は、それまで診てもらっていた循環器内科の人ではなく、心臓外科の人でした。
外科と内科の違いなのかはわかりませんが、だいぶガンガン言う人でした。
そのときには前回のCTしか情報はなかったので、あまり深い話はできませんでした。
手術を勧められはしたのですが、私はいまいち深刻さがわかっておらず、「詳しい検査をする時間を取るにもちょっとあとにならなきゃできないですかね」みたいな話をしていました。
実は私は7月頭からほぼ2ヶ月間丸々遠くに出張することが決まっていたのです。
この診察も出張の前々日に無理やりねじ込んでいました。

出戻り検査(造影CT)→手術勧告

そして10月半ばにまた急に電話がかかってきます。
これはもともと通っていた大学病院からでした。
「検査の日程抑えたいんですが、この日でいいですか?」
突然の話だったのでちょっとびっくりしましたが、前の診察のときに私がふんわりと「ここから9月末くらいまで忙しいので検査とか手術とか厳しいですかね」と言ったのを踏まえての連絡だったみたいです。

というわけで、2年弱ぶりに大学病院に行って検査を受けます。
今回は造影CTというヨード造影剤を注射しながらのCT検査に臨みます。
仰々しい説明書を渡されて誓約書を書かされましたが、結局ちょっと手元がポカポカするくらいの体調の変化しかありませんでした。

11月頭に結果を聞くための診察に伺うことになります。
結果は・・・
「大動脈入口径が57mmまで広がって大動脈瘤になっているので、手術をお勧めします」
「11月末に私が手術できる日があるので、そこでいいですかね」
「11月後半から入院で、早くて手術後1ヶ月くらいで退院です」

え?え?え?ちょっと待ってくださいよ。
そんなにすぐに入院するなんて聞いてないですよ。仕事もいきなり長期間なんて抜けられないし。
眼の前の仕事がちょっと詰まっていたこともあり、私は3月まで手術を延期してくれないかと提案します。
先生はかなり渋々でしたが、「責任は持てないですけど、それで職場もいいならいいですよ」くらいの感じで3月の日程の調整をしました。

ちなみに造影CTの結果を少し見せてもらいましたが、2次元的な可視化画像ではなく、3Dモデリングされたみたいな動脈が表示されていて、時代の進歩を感じました。

自己弁温存大動脈基部置換手術とは

ここで私が勧められた手術の内容について少し触れます。
胸部大動脈は下図のような形をしています。

Wikipedia「大動脈」より

上行大動脈の下の管が心臓に繋がっており、その部分(バルサルバ洞)が広がっていた私の手術方法としては、この部分を人工血管に置き換えることが第一でした。
当然心臓が動いていたらできないので、全身麻酔で心臓を止めて人工心臓に接続する必要があるし、胸を切り開く必要のあるかなり大きな手術になります。
上行大動脈の基部には大事な冠動脈も生えていて、それを人工血管に繋ぎ直す必要がある分少し手間の多い手術になります。
また、この手術の際に、心臓の弁を自分のものを維持できるか、人工弁に置き換える必要があるかが大きな差になります。
人工弁の場合は(いろいろ種類がありますが)生活への影響が大きく、障害等級が付くのが確実なレベルだそうです。
私の場合は、弁膜症がほぼ生じていなかったので、可能な限り自己弁温存でやってくださるとは言っていましたが、それでもやってみないとわからないところがあり、人工弁もありうるという説明でした。

大きな手術なので当然リスクがあり、手術を受けることで万が一が起こる確率が5%あるということでした。
心不全を起こすリスク、人工心肺をつなぐために血液の流動性を上げる薬を入れるので血が止まらなくなるリスク、血流で血管にたまっているものが一気に流されることによる脳梗塞リスク、術後に感染症を発症するリスク・・・。
一般的にこういう人工血管を入れる手術をするのは70代くらいの高齢者が多いそうなので、30代の私はまだまだリスクが低い方だそうです。

5%は高いのか低いのか

私が手術をためらってしまったのは、仕事の繁忙期だったこともありますが、「自覚症状がなかった」というのが最大の理由です。
大動脈入口付近の径が広がっていくと、弁膜症と呼ばれる弁が締まりづらくなることによる逆流現象が起きるので、身体がしんどくなったりする人が多いらしいです(最近たまにCMやってるのを見ますが)。

しかし、私にそんな症状は体感的にまったくなく、
「調子が悪くないのに本当に受けないといけないのか」
「体感的には元気なのに、5%で人生が終わるリスクを追わなきゃいけないのか」

踏ん切りがつかないがゆえに、時間を置いて情報収集して考え直そうとしていました。
当然大動脈瘤が破裂してしまっても人生はほぼ終わるので、どっちがリスクが重いのか自分で判断できていなかったんですね。

職場で相談→やっぱり手術へ

手術することとなれば当然相当の期間休むことになるので、上司と勤め先の産業医に検査の結果を相談します。

ここでさらに状況が一変します。
「リスクのほうがあるんだったら、先送りせずにさっさと手術受けたほうがいいんじゃない」
上司のこの鶴の一声で、私は大学病院の先生に直接電話をかけ、やっぱり今月手術してもらえないかとお願いすることになりました。
実はその上司も数年前に白血病で入院して手術を受けており、仕事のことよりも身体を優先してほしいと思っていってもらっているのはわかっていたので、手術への決心をつけることになりました。

大学病院の先生の手術日程はまだ空いていたらしく、もともと言っていた11月末の手術日程に入ることができました。
かくして私は「来週から入院して、再来週に心臓手術」を受けることが急遽決まってしまうのでした。

次回予告

隣県の大学病院に入院し、手術の日を迎えます


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