Bリーグ第29節横浜BC-アルバルク。河村率いる海賊に競り勝てた理由
春のポカポカ陽気に恵まれた3/30(土)3/31(日)、ビーコルの今シーズン横浜国際プール最後のゲームがアルバルクを相手に行われました。
アルバルクは、5000人越えの国プで物凄いビーコルブースター圧の中、河村の速さにカイ・ソットの高さが加わった横浜BCにPnR対策をされて苦戦を強いらましたが、第1ゲームは81-75で辛くも勝ちを拾いました。
第2ゲームでは横浜BCが様々なディフェンスオプションを用いてアルバルクのオフェンスを翻弄しました。しかし、しっかり対応したアルバルクは難敵ハマの海賊を79-66で下して連勝を飾ることができました。
今回のブログでは苦戦した第1ゲームでの横浜BCのアルバルク対策と、それでもアルバルクが勝ちを拾えた理由は何か?また、第2ゲームにゾーンディフェンスを多用してきた相手にどのように対応していたのか?そして点差を詰められ接戦模様の展開から最後に勝利を引き寄せたポイントは何であったかを検証したいと思います。
平面のバスケでは横浜BCに軍配。
第1ゲームのスタッツを見てみると歴然としているのはフィールドゴールの内容ではビーコルが上回っていた。ということです。
FG% 横浜BC 32/63(50.8%)
2P% 28/43(65.1%)
3P% 4/28(20.0%)
EFG% 34/63(54.0%)
FG% アルバルク 30/67(44.8%)
2P% 27/45(50.0%)
3P% 3/13(23.1%)
EFG% 32/67(47.8%)
アドマイティスHCは試合後「反省点の多い試合だった」と振り返り「第1Qと第3Qの出だしで得点されたこと、全体的にディフェンスの遅れ、チームでカバーするディフェンスのルールが守れていなかった」とコメントしています。
ビーコルのエース河村には15得点10アシストを許し、ソットにはキャリアハイの28得点取られました。河村-ソットのPnRからアリウープを含むツーメンは5本10得点です。また、オリバーには13得点5スティール奪われました。
河村の速さ、ソットのオフェンス能力に加えアルバルクのPnRのパターンを読んだアグレッシブなディフェンスはオリバーの5本を含むチーム8本のスティールとアルバルクから14本ものターンオーバーを誘発しています。
注目すべきは第1Qゲーム出だしと第3Q出だしの横浜BCのディフェンスです。
第1Qはエンドインからオールコートでプレスを高い強度で当たり、河村を中心とした速い攻撃にアルバルクは機先を制されたか、ディフェンスで遅れをとります。
開始3分半でソットのフリースロー、ファストブレイク、オリバーの3P、河村の2本を含む得点で4-13と9点リードされアルバルクがタイムアウトを取らされます。
また、39-33(6点差)から始まった第3Qはアルバルクは最初のオフェンスで今まで見せたことなかったスペインピックを見せます。トップからのエントリーでメインデル、サイズによるピックに、小酒部が左コーナーからゴール下を回って右下からソットのバックスクリーンに入るスペインピックです。しかし須藤のディフレクションから河村のスティールで防がれ→オリバーの速攻で得点されリズムを崩してしまいます。(第3Q残り9分45秒 39-35)
第3Q出だしでこの初出しセットを決めて優位にゲームを進めたかったアルバルクは、すっかり躓いてしまいます。
そこから立て続けにアルバルクのPnRが3回スティールされてしまうのです。
全てPnRからのポケットパスを読まれていました。この第3Q前半だけでスティールは前述の河村1本、オリバーは3本です。
どうして何度もスティールされたのでしょう?
横浜BCは、アルバルクのピックに対してビッグマンはドロップしてビッグマンダイブとハンドラーのドライブに備えていました。ハンドラーのメインデルをチェイスするオリバーはマークマンのメインデルは中に任せてショートロールするロシターやサイズへのパスコースに入ってスティールを狙っていました。
こうした守備が奏功され、さらに河村-ソットの連続アリウープなどで追撃されて、横浜BCに一時逆転を許します。(第3Q残り4分3秒 43-45)
アルバルクを救ったのはリバウンドとフリースロー
こうして苦戦するアルバルクを救っていたのがリバウンド、セカンドチャンスポイントです。この日のアルバルクのORは19本、DR28本、TR47本です。
OR獲得率は19/41本(46.3%)になります。
対する横浜BCはOR4本、DR22本、TR26本、OR獲得率は4/32本(12.5%)です。
OR機会の半数近くをポゼッションにできるアドバンテージは計り知れません。
さらにセカンドチャンスポイント(SCP)はアルバルク18点、横浜BC5点です。セカンドチャンスもしっかり活かせていました。
特にアルバルクのSCPは後半だけで14点に達します。せめぎあいの最後の5分間ではリバウンドで攻撃回数を増やせたアルバルクは有利でした。
またファウルドローンの数とフリースローの試投数もアルバルクに優位でした。
ファウルの数は横浜BC26個に対しアルバルク14個。
フリースローは横浜BC7/9(77.8%)に対してアルバルクは18/29(62.1%)です。
最後の約1分間は横浜BCがファウルゲームに出たので、その間の6回(12投)分は戦略上のファウルです。それを除いてもアルバルクが苦しい時間帯にフリースローによる得点でゲームを繋いで勝利に結びつけたことは間違いありません。
第2ゲーム横浜BCの多様な守備をブレイク
さて、第2ゲームです。アドマイティスHC、青木HCの両指揮官が語ったのは試合の出だしが試合を分けたということでした。
第1Qは21-9と12点の点差が開き第2Q前半には最大21点差(第2Q残り5分39秒 33-14)まで開きます。この差を最後まで埋めきれなかったというのが両指揮官の見解です。
ただしゲームセットまで横浜BCは前日取られすぎたリバウンド対策にゾーンディフェンスを多用してアルバルクのリバウンドを47本→39本まで減らしました。
また、ゾーンプレスや前日有効だったオールコートプレス→ドロップディフェンスなどシステム変更を繰り返しながらアルバルクの対策をしていました。
そして、粘り強い横浜BCは第3Q残り2分17秒には4点差(58-54)までカンバックします。
一方で、第1Qから第2Q前半までアルバルクは横浜BCの繰り出す2-2-1ゾーンプレスからの2-3ゾーンに対しては冷静に対処していました。
その2-3ゾーンに対するアルバルクの対応とは?
パスセンスのあるロシターをハイポストにいれてからグダイティスがゴールにダイブしてハイローを狙います。するとペイントの3列がグダイティスに寄ります。そこで、フリースローラインからペイント中央にぽっかり空いたスペースからロシターの確率の高いフローターが決まります。
また、ハイポストのロシターがミスマッチを狙ってバックダウン→ウイングのメインデルにキックアウト→コーナーのテーブスにエクストラパス→3Pヒットです。(第1Q残り1分31秒 19-9)
そして外のシュートが外れてもロシターやサイズがORを奪いSCPが高確率で得点となっていました。
勝利を呼び込むバックドア
一方、ディフェンスでは横浜BCのキーマン河村を小酒部がマンマークして前日よりハードにしかも自身のファウルを抑えて河村を10得点6AS(平均21.4得点、7.2AS)に抑えました。
しかし横浜BCもオリバーの連続得点から息を吹き返し前日に続きアルバルクのPnRからのポケットパスは狙われてディフェンスの強度とビーコルブースターの圧力が上がると第3Q終わりには60-54(6点差)と勝負の行方が分からないところまで持ってきました。
しかし、アルバルクが勝負強さを見せて勝利を呼び込んだセットが第4Qのファーストプレーです。
第4Q残り9分55秒
横浜BCの守備は2-3ゾーン。 左前キング 右前河村 後ろは左からユトフ、スコット、杉浦でした。
アルバルクはトップにテーブス、左ウィングメインデル、左ショートコーナーにサイズ、右ウィング小酒部、右ローポストにロシターでエントリーです。
小酒部が右からゴール下を通って左ウィングに回り込んで上がるシューターアクションを起こします。ユトフは小酒部をケアして上がります。同時にメインデルがペイント中央のスコットにバックスクリーンを掛けてクリアアウト。すると閃光一線、トップのテーブスからゴール下にバックカットしたサイズに素早いパスが通ってダンクが決まります。(62-54)
この日初めて使うセットでした。サイズのバックドア一発がきれいに決まり一気に流れがアルバルクに傾きました。
ここから点差を広げたアルバルクは危なげなくゲームをクロージングしました。
さて、アルバルクは難敵横浜BCを倒してレギュラーシーズンも残り12試合となりました。地区優勝を目指してCSに臨むには連勝しながら改善点を修正していかなければなりません。
次節は新生シーホース三河をホーム代々木第二体育館に迎えます。
コンディションを上げて、また良いゲームをしてもらいたいと思います。
photos by るぅ
※昨シーズンの河村選手をテーマにした記事を書いていました。ワールドカップ前からの河村選手と小酒部選手の成長が垣間見れるかもしれません。リンクを追加しておきます。