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川崎の悲願達成ならず、宇都宮の壁とは何か?

2021-22BリーグCSセミファイナルはとどろきアリーナにて、Bリーグ1位の得点力をもつ川崎とリーグ屈指のディフェンス力を誇りその川崎に相性のいい宇都宮との盾鉾対戦です。

ミスマッチを狙うファジーカス、ヒースと藤井、篠山のツーガードとジャニングの長距離砲ユニット。川崎は破壊力のあるオフェンスで戦います。しかも川崎は全員が外からスリーポイントを狙えるスリーポイントチームです。



一方、昨年のチャンピオン千葉ジェッツをクォーターファイナルで連勝で破って勢いに乗る宇都宮は持ち前のスイッチディフェンスと素早いローテーションでスリーポイントを抑え込むことが得意なチームです。そこにエース比江島の突破力とスコット、フォトゥーのインサイド、リバウンドで着実に得点してロースコアゲームに持ち込みたいところです。



さて、結果はコンディション不良でアギラールを欠いた川崎を宇都宮が2連勝で下し、川崎の天皇杯とBリーグ優勝との2冠の夢を打ち砕きました。

ゲーム内容は2戦とも平均得点リーグ1位の川崎が平均失点1位の宇都宮にロースコアゲームに抑え込まれた格好です。
どうして宇都宮は川崎を押さえ込む事に成功したのでしょうか?その要因を検証してみましょう。

アギラール不在でペイント制空圏はどうなる

ここ2年間はBリーグのレギュレーションにより、帰化選手と外国籍選手を同時に3名起用できました。
そのため川崎のオフェンス戦略のひとつに、ファジーカス(帰化枠)とヒース、アギラール(カルファニ)のスリービッグによりミスマッチを狙うオンスリー戦術がありました。

そして、昨シーズンから今シーズン川崎はこの戦術をゲームの中で練り上げて、スリービッグと言えば川崎の代名詞となっています。

例えば、ピックからのミスマッチの作り方見つけ方、特にハイポストのファジーカスからのハイローパスとヒース、アギラールの決定力は他チームからは脅威的であり、ペイントの制空圏は川崎のものでした。

昨年のセミファイナルも宇都宮と川崎の対戦でした。このときはロシターという帰化選手がいたのでスコット、ギブスとで対スリービッグ対策を繰り出して川崎のアドバンテージを防ぐ作戦を立てて戦い宇都宮がこの時も2戦先勝していました。

今年は宇都宮に帰化選手がいないためオンコートではビッグマン2枚で戦わなければならずそこの不利は間違いなくありましたが、アギラールの不在で川崎のゲームプランは大きな修正を余儀なくされていたでしょう。



結果、川崎のビッグラインナップにあってもスコット、フィーラーのリバウンド、セカンドチャンスで宇都宮が川崎を2試合とも圧倒しました。
ペイントの制空圏は川崎の独壇場ではなくなったのです。

CSでの3Pシュートの重要性


今シリーズはスリーポイントシュートが勝敗に大きく影響するということが明確になったシリーズでもありました。

今シーズンレギュラーシーズンの川崎はリーグで1番3Pシュートを試投して1番決定数があるチームでした。1試合あたり約30本打って約11本決めてきます。シュート確率は35.9%です。(宇都宮はおよそ7/22、確率は34.5%)

ところが今シリーズは第1ゲームは11/33(33.3%)でまずまずでしたが、第2ゲームが8/26(30.8%)でした。

対する宇都宮は第1ゲームは10/25(40%)、第2ゲームが12/32(37.5%)です。両日とも高確率で効果的に得点しています。

特に第2ゲームでは川崎の3Pがアテンプトも確率も低く抑えられており、宇都宮のディェンスが効果的であったことを裏付けています。



さらに第2ゲームでの宇都宮は川崎のお株を奪うかのように3Pシュートを放ち、よく決めています。
特に、比江島は第1クォーターに3本連続で3Pを射抜いてチームを鼓舞しました。最終的には5/10で3Pを成功させて宇都宮の勝利を大きく引き寄せました。

第2ゲーム、見応えがあった第4クォーターの攻防


このシリーズで第2ゲームの攻防は両チームとも気持ちが前面に出ていた本当に素晴らしい試合でした。

特にお互いにマンツーマンをハードにあたり、時にはハードショウからブリッツを仕掛けたりしています。

川崎は第1クォーター宇都宮の3P攻勢にあって守勢に回っても2-3ゾーンを敷いてファジーカスのインサイドから立て直し第1クォーターはリードしています。

宇都宮は鵤、遠藤が鬼マンマークでピックにあってもファイトオーバーしていました。
宇都宮はほぼスイッチディフェンスで対応しているのですが追えるところまでついて行ってレイトスイッチして守るようにしていたのでインサイドのケアもポップアウトしてからの3Pにも対処できていたように見えました。

川崎のバックコート陣は宇都宮のしつこいマークは嫌だったのではないかと思います。    

そんな中、ジャニングは個人技で打開をして3本の3Pを沈めてファジーカスに続く22得点のパフォーマンスでした。



第4クォーターは54-54のタイスコアから始まり、数々の印象的なシーンがありました。

残り7分58秒、7分42秒
比江島とジャニングの3Pシュートの入れ合い。58-58



残り5分22秒
篠山の神の左手アゲイン。ロングフローター3P。61-61

残り2分7秒
吠えるニック・ファジーカス!
ペイントアタックでエンドワンをとりました。
67-65

残り1分40秒
ここで出すのがすごかった。
ジャニングとファジーカスのピックに鵤とフォトゥがブリッツを仕掛けてスティール。ファストブレイクで67-67。

残り54秒
67-67の宇都宮のポゼッション。
ジャニングがフォトゥへのパスをカット。ジャニングとフォトゥが走ってジャニングがフロアダイブして、ボールは外へ出ます。素晴らしいジャニングとフォトゥのファイトでした。

このポゼッションの判定がビデオ判定の結果、宇都宮に出ました。この後の宇都宮の攻撃で比江島がフリースローを獲得して流れが宇都宮に傾きました。

ハラハラドキドキのゲームは77-73で宇都宮の勝利で決着しました。



川崎は今シーズン最後のゲームとなりましたがロースコアながら素晴らしい攻防戦でした。

川崎のCSでの忘れ物はまた来年に持ち越しとなりましたが必ずや来シーズンも勝ち上がってくる予感しかしません。 

川崎の選手、スタッフの皆さんシーズンお疲れ様でした。そして感動をありがとうございました。


photos by きょっぴ

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