【Podcast出演記念】副音声的な補足、あるいは2024年のアントレ教育の現在地について②
こんにちは、タクトピアの長井です。この記事は2本シリーズの後編となります。前編をお読みになっていない方はこちらからどうぞ。
自己紹介的なトピックから始まった前編と比べると、より突っ込んだ実践的なトピックが多めになっているので、タクトピアのアントレ教育の現在地を知りたい方にもお勧めです!
出演したPodcast番組について
再掲となりますが、出演オファーを頂いたのは以下の番組です。
ちなみにMCのひとりである「ひとし」さんは、2023年のPodcast Award大賞を受賞した番組「Teacher Teacher」のメインパーソナリティでもあります。私は以前からこの番組を聴いていたので、収録時に直接お会いできると知って内心テンションが爆上がりしていました。
以下、番組の再生時間([mm:ss])+だいたいのトピックを見出しとして、補足を加えたいこと・派生して話をしたかったけど番組の尺的に収まらなかったことなどをコメントしていきます。ぜひ、Podcastを再生しながら映画の副音声コメンタリーのような位置づけでお読み頂ければ幸いです。
では、いってみましょう!(なお、この記事でご紹介するのは前後編の後編となります)
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副音声的補足・解説
[00:30] + 初回、めっちゃ面白かったっす
このエピソードで発せられた、ひとしさんの最初の一言。「起業家育成と聞くとビジネス立ち上げのようなイメージがあるが、誰しもが必要なマインドセットとか、主体的に生きていく術、といった話になっていったのが興味深かった」と説明いただいた。タクトピアのアントレプレナーシップ教育について語った前回エピソードを象徴的に表現してくださったと思っている。
[02:16] + まったくの未経験者がアントレ実践を始める一歩目は?
プロジェクトオーナーになろう、というのは高校生向けの講演でも常に伝えている手法の一つ。SNSを活用したり、校内での企画を立ち上げたりと、元手がゼロ円でもできることはたくさんある。ビジネス的な手法を学ぶより、自分の創意工夫により誰かが喜んでくれる(何らかの反応をもらえる)ことの楽しさを実感できることが、アントレプレナーシップを実践するうえで何よりの原動力になると考えている。ひとしさんがTeacher Teacherの立ち上げエピソードを語ってくれたが、これはまさに好例。
[04:40] + 長井の個人プロジェクト=カレーづくりのインスタ
身近な人には知られているが、長井はコロナ禍でスパイスカレーづくりが趣味になり、さまざまなレシピを参照しては「つくってみた」的な投稿をインスタグラムに上げている。レシピ投稿へのいいねと保存件数が圧倒的に多く、どんな情報にニーズがあるのかが如実に分かって面白い。番組内ではビジネス化する目算は「ない」と言っているが、実際にはないわけではない。が、タクトピアが忙しすぎるので優先順位は低めである。ビジネス化しないまでも、お世話になっている方々とのディナーパーティで提供したり、話題にしたりと、カレースキルは非常に役立つので、趣味にして良かったと常々思っている。
[06:24] + 校内プロジェクトの例
ホワイトボードを用いたコミュニケーション促進のプロジェクトの例。こちらも収益化はしていないが、価値提供の対象者=ペルソナが身近にいて、価値を検証しやすいという意味で、アントレ実践の初期に取り組むには良いプロジェクトだと考えている。ちなみにボード(壁)を使ったコミュニケーション促進のプロジェクトとして世界的に有名なものとして Before I Die プロジェクトがあり、生徒にたびたび紹介している。
[09:31] + ペルソナを考えるときの視点
ペルソナマーケティングとセグメントマーケティングの詳細な解説についてはこうした記事を参照のこと。優劣があるわけではなく相互補完的な手法と言える。ただ、セグメントマーケティングはより大量の統計情報が必要になってくるのと、一次情報を獲得することの重要性を体感しづらいため、タクトピアのプログラムではペルソナの策定を優先させることが多い。
また、じゅんさんが補足してくれたとおり「自分自身をペルソナにする」のもアリである。
[10:14] + アントレプレナーシップ実践へのマインドセット
ここで述べているマインドセットの3か条は、タクトピアのプログラムで参加者に向けて提案する基本的なもの。プログラムの目的や参加者との議論によって追加や変更を加えることもある。内容の説明については過去記事を参照のこと。
結局精神論を述べているに過ぎないと批判されそうだが、肝は「一人で取り組むのではなく、チームや集団のなかでそうしたマインドセットを文化にしていく」ことだと考えている。この話題はいったん学校的マインドセットに関するトピックによって途切れるが、[20:28]以降に引き継がれている。
[13:24] + Passionが大事なのは分かるが、じゃあPassionはどこから生まれるのか
ひとしさんからの質問によって盛り上がったトピック。結論として、10個目のPであるPerception(認知・気づき。世の中の事象への感度を上げる)の紹介をしている。Perceptionを育成する手段として、前編のエピソードで触れたアート教育に期待できる効果について伏線回収できたのが、個人的には嬉しいポイント。また、海外体験やジャーナリングによって新たな視点(≒ 認知の幅)を得ることについては、例えばブレヒトの異化効果などの演劇手法とも通ずるものがあると考えている。長井的に2023年で一番おもしろかった書籍、高山明『テアトロン』では、ブレヒトが目指した教育的効果や、高山氏が取組中の「演劇を街に埋め込んでいく」活動などが触れられており、とても刺激的な内容なので激しくお勧め。
[20:28] + 個人でできること以外でマインドセット獲得のためにできること
前々項からの続き。長井が以前より提唱している、「学びの究極型はコンテンツではなく環境」という話を披露している。個々人が無理やりマインドセットを叩き込まれて学ぶのではなく、知的刺激やロールモデルに囲まれながらマインドセット・スキルセットを身につけていくのが、最も自然かつサステナブルな形態であると考えている。
ちなみに長井が言及している「大阪のある市」とは、タクトピアが以前より国際教育で提携させていただいている泉大津市のこと。
もちろん、環境レイヤーをデザインすることによって学びを実現するのは大変難易度が高く理論化も途上であり、効率的かつ高密度に学ぶべきコンテンツをパッケージ化している学校教育の重要性をただちに否定したいわけではないことを申し添えておく。
[28:27] + 「社会起業家」と「起業家」に違いはあるのか
じゅんさんの問いからスタートして、面白い議論になったセクション。長井からは、アントレ実践者からの距離感が遠くなる(あるいは抽象度が上がる)と、課題の「社会課題っぽさ」がアップし、その実践活動が起業より「社会起業っぽく」なるが、本質的には同じものだ、という解釈で説明した。課題を捉えるときに自分自身からの距離感を増減させて(あるいは抽象と具体をいったりきたりして)全体像を把握することはとても重要だと考えている。
ここでもまた、ひとしさんから裏付けとなるようなTeacher Teacherの発展のストーリーを紹介していただき、とても嬉しかった。
▶事例として紹介したさんぽセルの公式WEBページはこちら。
▶また、小学生たちが捉えた問題を「社会問題」のレイヤーで問題提起している東京新聞WEB版の記事はこちら。
配信を終えて
ひとしさんとじゅんさんの質問のおかげでたくさんのトピックを引き出していただきました。貴重な機会をいただき感謝です!アントレ教育の「現在地」とは書きましたが、最新すぎてここでは話せなかった話題や、惜しくもカットになってしまった話題もあるので、随時noteで発信していければと思います。引き続きタクトピアの活動にご注目ください!
また、今回お呼びいただいたPodcast番組「むにむに」は毎週火曜日朝6時に新エピソードが配信されるとのこと。こちらもぜひ引き続きチェックして頂ければと思います。