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クリムト風のロビー空間(AI生成ビデオ)

グスタフ・クリムト。学生時代から、ずっと好きな画家のひとりだった。耽美的な画面にモデルと独特の紋様が不思議な具合に配置されると、そこはもうクリムトの世界だ。黄土色-ゴールド-黄色または金緑まぶしの背景がこれに加わると、クリムト風味が一層際立ってくる。このパターンに限らないが、多数のクリムト作品をみているうちに、そこに散りばめられたユニークな模様・紋様が、額縁の外にはみ出していき、外界のそこかしこにクリムト風味を見出してしまうことがあった。

そんな体験から、次の絵をDALLE/MS Bing Image Creatorが生成してくれた(2024年2月14日)おりにも、あ、これはクリムトだと認知することができた。こちらの指定に生成AIが応答したのだからクリムト風になるに決まっているじゃないか、と言うのはまだ早計で、現時点の熟度では、生成AIは多数の失敗作を次から次へと繰り出してきてくれる。その中で、フィットレベルの高いものを人間サイドが選んでいくうちに、AI側に返された報酬シグナルを学習して、もちろん時々刻々サイバーブレインはより賢くなり、より審美的センスを深めていく。この絵を生成した段階では、10枚ほどのアウトプットの中で、「クリムト風のホテルロビー」という私のリクエストに対するアウトプットとしては、これが一番しっくりきた。黄色-ゴールデンの色使いや装飾小物の集合が、なんとなくクリムト風をかもしだしている。ただそれでも、空間の奥の方に見える宙吊りモビールが人の頭にぶつかるのではないかといったリスクが見えたので、発表もせず退蔵したままになっていた。

それを今回引っ張り出してきて、FLORA/LUMAトラックでビデオ化(2024年11月14日)したら、左から右へのカメラ移動を自動的に実行してくれて、面白い映像になった。ノイズの少ないビデオの動きのせいで、奥の方のモビールの具合は相対的に気にならなくなっている。宙吊りモビールが立体視できるようになったせいだ。代わりに、ブルーの配色のところが移動に伴う反射光の変化を得て、床も天井も実になんとも真珠のような照り輝きを示してくれているではないか。右の方には、アドリブで人のいるソファー席を加えてくれて、空間としての広がりが増した。フォロワーのAlfred Cadouxは「Feels like it pulls you into the room(なんだかロビー空間に引き込まれていきそう)」という印象を書いてくれている。

ただ、カメラが右へパンする時、床の5x4マトリックス模様の縦線が直線から大きく乖離してたわんでしまう劣化を示した。これはAIに与えている「A/Bシグナル拮抗値」の処理に失敗しているせいだ。多重多元的なインストラクションの束で画像・映像生成AIは作動している。特定の処理対象に関し例えば「インストラクションA」と「インストラクションB」が並列しており、AとBが逆向きの指示になっている場合、AI処理の決定回路がいずれを採択するかは、どういう基準で決めるべきか、という重要な問題がある。回路選択の問題だ。ここでは床の縦線に関し、画像をビデオ化する時に、「元画像の縦線の揺れをそのままに、あるいはやや強調して表現する=A」 と 「(ホテルロビーといった公共空間での床模様に見えるほぼ直線に見える区切り線は)揺らぎがあれば揺らぎを補正して完全な直線に見えるようにする=B」という対立項があった。このビデオでは、Aを選択したために、原画における縦の直線の揺らぎを結果増幅してしまった。お手つき一回。判断基準の与え方が明らかに不足していたので、モデルでは、この不足を補っていかなければならない。市場では競争があるので、モデル間の競合により補正に遅れたモデルから淘汰されていく。ゆえに、「A/Bシグナル拮抗値」の処理に関しては、不可逆的に正しい方向に(勝ち残っていく)AIモデルが洗練されていくことになる。


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