ちょうどいい学校のスタイル
遅刻が減った?
時差登校と短縮時間割,課外活動の自粛での学校生活が続いています。やりたいけれどできないこともたくさんあって生徒も先生もストレスを抱えているはず。コロナ以前の学校生活とはかなり異なる生活です。
時差登校と合わせて,全員が登校時に手指消毒と検温をしています。私も毎朝手指消毒の担当で1時間程入り口に立っているのですが,ここしばらく続けていて気づいたのは「遅刻が減ったんじゃないかな」ということです。皆さんの学校ではどうでしょうかね?
学校滞在時間はどうなった
朝8時頃に登校していたのが9時から9時半位になり,授業時間は50分だったのが40分に。平日6コマあるのは変わらないものの,50X6=300分の授業時間が40X6=240分と1時間分短くなりました。土曜日は50X4=200分が40X4=160分で40分短い。1週間で5時間40分授業時間が短くなりました。
そして放課後。一時クラブ活動も復活しかけたものの,また活動自粛していますから,基本的に終礼や掃除が終わったら下校です。6時頃に下校だったのが4時頃になったということは,2時間位は早く家に帰れます。(寄り道もしづらいだろうしね。)土曜日なんて4時間以上早く帰る。1週間で学校滞在時間は14時間位短くなりました。
教育の危機なのか
これをどう捉えるか? 「授業時間が足りない」「生徒が勉強しなくなる」「学校の機能が失われる」と感じる人もいるでしょう。保護者からすると「授業時間も短くなってクラブ活動もないのだから学費を安くしてもらわないと」と考える人もいるのかな。そうなると学校経営も変わってくるであろうし,これって教育の危機ってことになるのでしょうか?
実はこれくらいがいいのでは?
最初の「遅刻が減ったんじゃないかな」の話に戻るのですけれど,私はこの位の学校生活が実は子どもにとっていいんじゃないのかなと考えています。朝もちょっとゆっくり。自分で使える時間もけっこうある。
今までは帰宅時間も遅くて,それから宿題や予習・復習があって,自分のやりたいことをやる時間はどうしても遅くになってしまう。(まあやりたいことやってから慌てて勉強というパターンもあるだろう。)そうなると寝る時間も遅くなって朝が辛い。遅刻をしてしまうこともあるでしょう。
今の学校生活が時間配分としていい感じなんじゃなかろうか。
どこに合わせるのか
もっと授業を受けたい,もっと学校にいたいという生徒もいます。もっと授業をしないと生徒は勉強しない,もっと学校にいないと生徒は無駄に時間を過ごしてしまうと考える先生もいます。実際そういう生徒もいるだろうし,保護者にすればできるだけ学校にいてほしいと思う方も少なくない。いわゆる学校の託児所的な役割への期待があるのも確かです。
そうした思いや需要に応えるのも学校の役割ではあるので,長時間の授業も放課後のクラブ活動も否定するものではありません。
ただ,どこに合わせるのかは考えたいなと。
滞在時間を長い方に合わせて標準とするのか,最低限に合わせて標準とするのか。本来は最低限のところが標準であったはずが,「より長い方が安心」という考えから朝8時から夜6時までが当たり前になってきたのではないでしょうか。もう一度,どこまでが全員に必要なのか考えるタイミングです。
無駄な時間になるのか
学校に滞在しない時間が増えると,その時間は無駄になるのか。もちろんただただボーッとして過ごすとか昼寝しちゃうとかあるでしょう。無駄と言えば無駄だし,でもそんな時間から何かを生み出すこともあるだろうし,そんな時間があっていいと私は思います。
無駄になっちゃうからもっと授業受けたいという生徒や保護者,無駄になっちゃうからもっと授業をしたいという先生は,そこでマッチングが出来ているから,放課後に授業や講習をやれば問題ありません。
クラブ活動をやりたい生徒や保護者,クラブ活動の指導をしたい先生も,放課後に存分にやればいいと思います。ただ,クラブ活動をするのが学校の当たり前で,みんなやるのが当たり前というのは違うかなと考えています。
クラブ活動で得るものがあるのは今までの教員生活を通して実感しています。でもそれは全員に必須なのかというと違う。クラブ活動に参加しないで学外の何か別の活動に参加することで得られることもあるし,一人でひたすら読書するとか,絵を描くとか,そんなことで得られることもある。
勉強は大丈夫なのか
みんなが大丈夫ではありません。ガッチリ教室で先生に指導されながらでないと勉強できない生徒はいます。一方で,自分でもっと学びたいという生徒もいます。結局はどこに合わせるのかの問題。自分で学べる生徒は余裕のある授業であればこっそり自分で取り組んでいてうまくやっているだけのことです。そういう生徒の多くはあえて「授業時間が長い」「もっと効率的にやりたい」とは言わないでしょう。
授業時間が短くて大丈夫なのかということは工夫次第。実際に自分の授業では,教室での説明は1回だけにして,授業のたびに改めて説明や補足を加えるようなことは限りなく減らしました。解説の動画をYouTubeにアップしたり,デジタルテキストを用意することで対応しています。授業中にやっていたことを授業外にやってもらおうという前提です。正直,トータルの取り組み時間はそんなに変わっていないはずです。でも理解できている生徒が説明を改めて聞かなければいけない時間は減りました。そして自分の取り組みたいタイミングで課題に時間を使えるようにはなりました。
YouTubeの閲覧状況を見ると,解説を改めて見ている回数は説明の内容や課題によって異なっています。在籍の3分の1位しか見ていないものもあれば,全員が2回以上見ていると考えられるものもあります。これはこれで授業設計や解説動画を考える上でとても参考になります。ただ共有フォルダ等に置いておくのではなく,YouTubeにアップしてデータを取るのは有効です。これについてはまた別の機会に詳しく書きます。
課題の提出率も良いです。まもなく締め切りのタイミングで既に90%を超えています。例年に比べても,授業時間は300分から120分に減ったものの,作品のクオリティは下がっていませんし,わざわざNG集を作るなど工夫が凝らされているものがありました。
決められた授業時間内だけでなく,自分が自由に使える時間にやりたいタイミングで取り組んだからの創作活動になったのではないかと考えています。
人がたくさんいることに疲れる
そして,多くの先生は「学校が好き」な生徒だった方なので,学校にずっといることをあまり気にしないのかもしれませんが,例えば人がたくさんいることに疲れてしまう生徒もいます。学校が好きか嫌いかではなく,学校自体は好きであってもそこに長時間いると疲れてしまう生徒もいるということです。私自身がそうでした。学校が嫌いな訳でも友達とうまくいかない訳でもないけれど,学校みたいに人が多いところは疲れてしまう。一日の中で一人でいる時間がほしい。
ちょうどいい学校のスタイル
この状況が続けば嫌でも学校のスタイルは変わらないといけないでしょう。通学と在宅のハイブリッド,同期型と非同期型のバイブリッドも進むかもしれません。やむなく進めるのか,本当に必要だと考えて進めるのか。同じハイブリッドでも結果は大きく差がつきそうです。今までとは異なる視点での学校選びが始まることに期待しています。そんな需要に応えられる学校の存在意義はあるのではないかと考えています。
あなたにとって,ちょうどいい学校のスタイルは?