アーケードの中の夜叉

また一人犠牲になった

断末魔がアーケードの中で響く

次の獲物を探しながらさまよう

今日はここに決めた

そう言いながら門をくぐる

ワインを口の中でころがし

故郷の景色を思い描きながら嗜む

ロマネコンティの劣化版か

そう夜叉が呟くと

何も知らずに

二人の獲物が店にやってきた

夜叉の晩はつづき

ワインのあとにやってきたのは

一人用の鉄板焼きだった

ミニサイズのお好み焼き

マグマのような熱さに

嗚咽をしながら口の中に放り込む

これには夜叉も面を喰らった

これはこれでええやんかいさ

師匠クラスの語尾が出た

どこかできいたことがある話し方

まぁそれは今度の機会に

おっと

獲物二人はどうなった

何やらカウンターの金色と楽しそうだ

獲物は渡さないよ

夜叉はお好みソースを手で拭い

可愛く咳払いをした

獲物がすぐに反応する

その瞬間を夜叉は見逃さなかった

今日はこちらのガキにするか

今夜のメインディナーが決定した

あの手この手で獲物を誘惑する

そこから先はいわずもがな

また一人犠牲になった

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