
第41章 新たなゲームルール
第41章 新たなゲームルール
ハイリミットルームに招待された翌日、翔太は再びその重厚な扉の前に立っていた。
昨日の緊張感がまだ肌に残る中、彼は深呼吸し、静かにその世界へと足を踏み入れた。
しかし、今日の空気は昨日とは明らかに違っていた。
いつものように無機質な音を立てるスロット台とは異なり、部屋の中央には特別なステージが設置され、数名のプレイヤーがその周囲に集まっている。
「今日は何か違う……?」
翔太は違和感を覚えながら、様子を伺う。
すると、黒服の男性スタッフが一歩前に進み出て、厳かな声で口を開いた。
特別ルールの発表
「本日から新たなイベントが開始されます。」
その声に、プレイヤーたちの視線が一斉に集まる。
「このイベントは"アリーナ戦"と呼ばれるもので、通常の個別プレイとは異なり、参加者同士が直接対決し、最終的な勝者を決定します。」
ざわめきが広がった。
「プレイヤー同士の直接対決――。」
これは、単に台の前に座って運と技術を競うだけの戦いではない。
相手の心理を読み、プレッシャーに耐え、そして勝利を掴むための究極の競技だった。
黒服の男性は続ける。
「ルールはシンプルです。参加者は一対一で対戦し、持ちメダルを増やした方が勝者となります。ただし――」
ここで彼は一呼吸置き、静かに言った。
「この勝負に敗れた者は、ハイリミットルームへの参加資格を失います。」
場の空気が一気に張り詰めた。
翔太の覚悟
翔太はその瞬間、自分の心が高鳴るのを感じた。
「ここで勝てば、俺は本物になれる。」
山口誠一から学んだ技術、これまで積み重ねた経験、すべてを試される舞台が整ったのだ。
しかし同時に、この戦いに敗れれば、これまで築き上げたものがすべて失われるかもしれない。
それでも、翔太は一歩も引くつもりはなかった。
「俺はここで止まるわけにはいかない……!」
対戦相手との邂逅
「それでは、最初の対戦者を発表します。」
黒服のスタッフが静かにカードを引くと、翔太の名前が読み上げられた。
「石田翔太。」
深呼吸しながらステージへと向かう翔太。
次の瞬間、対戦相手の名前が告げられた。
「対戦者――田中蓮司。」
その名が読み上げられた途端、周囲がざわつく。
翔太が顔を上げると、そこには冷徹な眼差しをした細身の男が立っていた。
黒髪をオールバックにまとめ、精悍な顔つきには一切の迷いがない。
「彼が田中蓮司……?」
ハイリミットルームでも数々の伝説を残したプレイヤーで、冷静かつ計算尽くされたプレイスタイルで知られている。
「お手柔らかに、若造くん。」
田中は不敵に微笑む。
新たなルールに挑む
対戦は5,000枚の持ちメダルでスタートし、1時間以内にどちらが多くのメダルを手にするかで勝敗が決まる。
さらに、特別ルールとして「ダブルアップチャンス」が存在する。
・ダブルアップチャンス
一度だけ、リスクを倍にする代わりに、勝利すれば獲得メダルが2倍になる。
しかし、失敗すればその場で敗北が決定する危険な賭けだ。
「ふん、運試しにはちょうどいいな。」
田中は冷静にルールを確認し、余裕の表情を崩さない。
翔太は内心で気を引き締めた。
「相手は強敵だ。でも、勝つしかない……!」
戦いの幕開け
ディーラーが手を上げ、静かに宣言する。
「ゲーム、スタート。」
リールが回る音が響き、翔太の新たな挑戦が始まった。
彼はすでに心を決めていた――。
この戦いに勝ち、さらなる高みへと進む。
負けるつもりは、これっぽっちもなかった。