雑記01
暖冬だと一月、二月の頃には死ぬほど寒くなるらしい。
異常気象だなんだと騒がれるのは、しょせん夏場だけなのだろうか。今年の気温はどう考えても異常なのに。先月の半ばなんて二十度を超えた日もあった。翻って今日は身に染みるような寒さで、僕は体をカタガタ言わせながら足早に冬空をの下を駆けていた。天気予報を見てみれば気温の上下動は激しく、昨今話題の内閣支持率とは正反対だなと笑うくらいしかできない。
駅前を歩いていると「お兄サン、お兄サン。ちょっと寄りませんか?いいものあるよ」と見知らぬ外国人に声を掛けられた。よくいるタイプの勧誘だ。どうせ金銭を要求するのが目的だろう。無視して歩いていると、彼は意外なほどしつこく声をかけてくる。
「うるさいな!俺は忙しいしお前に渡せる金もないんだよ!勘弁してくれ」
「金じゃないよ。お兄サンに役立つよ」
「金じゃないとか言ってどうせファミレスで何かせびってくるんだろ。あいにく俺は今びた一文も持っていないしこれから消費者金融に行くところなんだ」
「それでも来て」
それでも?面白いじゃないか。毎日セコセコと治験バイトに精を出す俺様から何かふんだくれるのなら取ってみなさいよ。
それにしても風が身に染みる。
「ハァ~…もっと体に優しい世界にならないものかなァ」
胡乱につぶやいてみるものの、一向に外界が僕に合わせて変化する兆しはない。この耐えがたい世界で僕は彼と共に歩を進めるしかないのだろうか?あまりにもけったいな話だと思う。
ファミレスにつくと、目の前の怪しい外国人は一枚のお札を取り出した。
「お札じゃなくてまずはこっちだろ」
俺は颯爽と注文票を取り出し、メニューを書き込んでいく。
「アーリオオーリオがなくなっちゃたんだよな…」
このイタリアンチェーンの最適解はドリアとペペロンチーノだと思っているが、僕は彼にたかるつもりでステーキやらワインやらを注文票に書き入れていく。彼もワインの気分だったようで、何本もボトルを注文していた。大丈夫か?
「それで、話ってのはなんだい?」
「だから、このお札。持っていればいいことあるよ。」
「それをくれるのか?」
「もう、私に要らない。」
ほーん。いい話もあったもんだ。どうせただ酒を飲んで貰えるな貰ってやらんこともない。「ありがとさん」そういいながら僕はお札を手に取った。
三日後。特に何もないまま時間が過ぎていた。鞄に入れておくのも邪魔だしそろそろ捨ててもいいかな。そう思ってゴミに出しておいたのだが、帰宅して鞄の中を整理してみると中にしっかりと鎮座ましましていた。怖い。「なんかいいことあるって言ってたのになァ」ぶつくさ言いながらライターで火をつけてみると、不思議と燃えない。どうあぶっても灯油をかけても燃えないのである。しまいには自分の手についた灯油に引火しそうになる始末。
「なんだよこれ…」
若干の恐怖とともに見つめているとスマホがぶるぶると震えた。「異常気象改善か 大気中のCO2濃度が急激に低下」
これって。
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