正しいタコの茹で方

正しいタコの茹で方

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善良な市民

https://www.tumblr.com/blog/zenryounashiminDigital Photo Collection

    •  全身に金箔を塗りつけた全裸の俺は片脇に豚の生首を抱えて、もう一方の腕を頭上高く掲げて人差し指を中空に向けて突き出し、天上天下唯我独尊、みたいなポーズをとって往来に立っている。  だうしてそのような所業に及ぶのか?  それはこれが俺のテロルだから。  そう言って分からぬ者は分からいでいい。俺は俺の原理原則に則って俺のテロルを続ける。  俺が俺のテロルを続けていると、向こうからゲジゲジがやって来た。ゲジゲジといっても百足がやって来た訳ではない。ゲジゲジは人間の男で、人間なのに四

      • モンスターショック

         俺は長毛獣人ビッグフットだ。  俺は俺が長毛獣人ビッグフットであるということをつい先日知った。  俺に俺が長毛獣人ビッグフットであるということを教えてくれたのは、ウィリアムさんだ。  経緯は先日、俺がいつもの道を歩いていたとき。  頭の大きな、胴体と同じくらいの大きさ、その中央部に目蓋のない大きな目が二つあり、頭部には目以外のもの、鼻や口、耳などがひとつもなく、大きな頭を支えている細くて華奢な首、胴体から伸びたひょろ長い手足は、その先が異様に大きく、体毛はなく、垢のようなも

        • 野崎に訊く!

          野崎  はい、もしもし。 加藤  もしもし。 野崎  こんにちは。 二人  あっはっは。 加藤  いま電話大丈夫かい? 野崎  大丈夫ですよ。 二人  あっはっは。 加藤  血豆は大丈夫?(※野崎君は前日口の中に血豆が出来て喋れなくるというハプニングがありました。) 野崎  大丈夫ですね。お陰様でちゃんと喋れるようになりました。 二人  あっはっは。 野崎  昨日はすみませんでした。 加藤  とんでもない。 野崎  ご迷惑をおかけしました。 加藤  いえいえ。 二人  あっは

          ストーン・シャーク

           二体目の変屍体が挙がった。  場所は前回と同じく金坂二十二番地九、猿沢宅前。屍体は膝から下の脚のみで、これもまた前回と同様、まるで何物かに食い千切られたような切り口。現場に残された脚から、屍体は成年男性のものと見られるが、身元不明、目撃者無し。県警は先に起こった事件を踏まえて本件を、連続殺人事件、と認定、捜査本部を立ち上げ真相究明に全力を尽くす。といったような内容の記事を読んでいると、 「やあ、安心院君。とうとう全国紙にも載ったようだぜ」  門を潜って庭先から百足君が、右手

          ストーン・シャーク

          ときめき肉便器

           三十六時間不眠不休で書き上げた原稿を封筒に入れ、突っ掛け履きで表に出、ひいいいいいっ、ひいいいいっ、走りながら溺れてる、みたいな這う這うの体で待ち合わせの小料理屋まで著いた私は、がらがらがら、引戸を開けるなり椅子に座って客と世間話をしてけらけらと笑っていた女給に向かって、 「せ、清酒をコップで頼む」  と言うのがやっとであった。 「先生、こちらです」  カウンター席から手を揚げるのは亜厂君。 「ま、ま、待て、さっ、酒が先だっ、おおおおい、おおおおい」  入り口でミミズクのや

          ごろつき

           鮭。酒。  焼鮭を肴に酒はOne Cup OZEKI Jumbo300。身を総て食べ終わって残った、ぱりぱりに焼けた皮を大事に舐りながら私は、すいっ、すいっ。ipadを操作してtweetを眺めていた。  相変わらず悪いニュースばかりが目に入ってくる。  豪州では先日来の大規模な森林火災の復興も儘ならないまま、今度は深刻な豪雨災害に見舞われているらしい。  豪州には昔馴染みの友人が住んでいる。  私はiホーンを弄り、豪州の友人に安否確認のiMessageを送信した。  それか

          愛にすべてを

            愛はヌンチャク ヌンチャクの詰め合わせ   奥歯に挟まった黒豆   黒豆の愛 愛の黒豆   愛は鶏姦 鶏姦と景観のはざま   溺れる河童の皿   皿と愛 愛の皿   愛はマレーシア マレーシア  とここまで入力して、マレーシア、マレーシア、うーん、後が続かなくなって、たたたたた、Delete釦をtypeして、マレーシア、の五文字を一先ず消去した。それから、とっとっとっとっと、湯呑茶碗にそふと新光を注いで、私は私の脳内を支配するゴンザレスに伺いを立てた。 「あのー、ゴンザ

          ローリング膝栗毛(大尾)

           直径三千里にも及ぶ光の渦が遠景に、ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ、八つ、巨大な円柱を形作って無茶苦茶なことになっていた。  一方、勝負は一瞬であった。  私は手に持ったね鹿スーパーを握り直し、やあっ、という掛け声とともに、ざんっ、ね鹿スーパーを横薙ぎに振り払った。  すると、ぽーん。大クス兄者の首が飛び、地面にころころと転がった。  ざっざっざっ、私は大クス兄者の首のところまで近付いて行き、 「じゃあな、大クス兄者。もう会うこともないでしょう」  そう言い残

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          ローリング膝栗毛(続々々)

          「ほう、ヴィーガン料理なんてのもあるのか」  フィンランド式サウナを堪能し、レンタルの作務衣に着替えた私は、休憩兼飲食スペースの大座敷に上がり、壁じゅうに貼られた品書きを一つ一つ眺めていた。 「そっすね」  調子を合わせるのは、四人用の座卓の上で錆びた刃を妖しげに光らせている、ね鹿スーパー。 「紫芋のピザ風おつまみ、チリコンカン、精進おでん、ネパール風ムング豆カレー、いんげんのサフジ、青椒肉絲麺、モンゴル蒸し焼きうどん、酵素丼、生きくらげきのこチャーハン、小松菜菜花のキッシュ

          ローリング膝栗毛(続々々)

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           白煙の上がる方へゆらゆらと近付いてゆく私とね鹿スーパー。 「あちゃー、こりゃさっぱりわやですわ」  べらべらになった自衛隊の車両を検分しながら、ね鹿スーパーは態とらしい上方語で言った。 「一体なにがあったんでおまっしゃろ? ややっ、どうしました?」 「これを見てごらん、ね鹿スーパー。ほら、なにやら足跡のようなものが残っている」 「ほんまや、ほんまや。せやけどえらいでっかい足跡でんなあ」 「うん、直径で五尺はある」 「どうやらあっちゃの方へ続いてるみたいでっせ」 「うん、その

          ローリング膝栗毛(続々)

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           ちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃららん、ちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃららん。  暗闇の中からジョン・レノンの楽曲『イマジン』の前奏が聞こえてきて、センターマイクの前に立った若手演歌歌手は、観客一人びとりに訴えかけるようにして歌い始めた。   想像してごらん 天国なんて無いんだと   ほら、簡単でしょう?   地面の下に地獄なんて無いし   僕たちの上には ただ空があるだけ   さあ想像してごらん   みんながただ今を生きているって   想

          ローリング膝栗毛(続)

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          「よろしくお願いしまーす」  百階建て以上の超高層ビルが建ち並ぶオフィス街の歩道の一角で、朴木原ポーロは道行く人一人びとりにポケットティッシュを配っていた。  と言うと、朴木原ポーロは仕事の一環でポケットティッシュを配っているのだな、と当然のように思われる方が多数おられるのではないかと思うのだけれども、はっきりと言おうか。言う。  そいつはerror、誤りである。  どういうことかというと、通常、仕事の一環でティッシュ配りをおこのう場合、宣伝したいこと、そうさな、例えば、「パ

          ローリング膝栗毛(下)

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          「痛っ、痛い痛い痛い」  アーケード商店街、両脇に隙間なく自転車が駐輪されている舗道の真ん中で、上半身は岩本力、そして下半身は佐目毛の馬の半人半馬が地面に蹲って凝縮しているところへ、腰まで伸ばしたソバージュヘアーを風に靡かせて颯爽と通りかかった私は、湖のような気持ちで半人半馬に手を差しのべた。 「どうかしましたか? お加減でもお悪いのですか?」 「ああ、おネエちゃん、聞いてえな、あんな、脾腹に矢、刺さてもうとんねん、ほら、見てみ、ここ、ここ」 「おネエちゃんではないのですがね

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