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〜ひとくち映画レビュー〜 opus
本作は坂本龍一さんの最後の演奏の記録である。
亡くなる約半年前となる2022年9月、東京のNHK509スタジオで行われた撮影に、長年愛用したグランドピアノひとつで演奏は行われた。
これはぜひ坂本龍一さん音響監修の新宿109プレミアムシネマで観たいと思っていて、上映期間ギリギリで観ることが出来た。
劇場の音響のおかげか、ピアノの音だけでなく、坂本龍一の呼吸音、フットペダルを踏む音、鍵盤を叩く音まで、間近で坂本龍一さんの演奏を聴いているかのようなリアルな音が感じられた。これは本当にあの劇場で観てよかったと思う。
全20曲。一音一音確かめるように鍵盤を押す坂本龍一さんの演奏に、思わず呼吸を止めて聴き入ってしまう。特に「Tong Poo」は今まで聴いたことがないじっくりとした演奏であった。演奏そのものはもちろんのこと演奏中の坂本龍一さんの表情、所作、鍵盤へのタッチ。晩年の坂本龍一さんの演奏を五感全てで感じられる。貴重な映画体験だった。
曲間に度々辛そうな表情を見せる坂本龍一さんは、撮影時点でかなり体力が衰えていると見えた。しかし、それでも、いざ演奏に入ると噛み締めたり微笑んだり、様々な表情を見せる。美しくて儚いながらも"魂"が宿った演奏には圧倒される。
ピアノだけのソロ演奏、全てを削ぎ落とした坂本龍一さんの楽曲の数々。上映期間は残り少ないが、気になっている人はなんとか劇場に足を運んでいただきたい。