美と殺戮のすべて
実のところ僕は今、無職なんだけど、時間があるので映画館で映画を見てる。例えば『DUNE part2」はpart1が面白かったから、見たのだけど、IMAX。音響が良くて、画面も大きくて良かった。IMAXで何回か映画を見てるけど、画面の大きさと音響の良さなすごいと思う。画質も高いようだが、最近の映画はIMAXでなくても画質が良いから、その点では驚かない。ともかく、『DUNE part2」は没入感があって、すごかった。母親に灼熱の魂を感じて、ゾッとした。ドゥニ・ヴィルヌーヴの『灼熱の魂』とにかくすごいから、見て欲しい。
画質と言えば『哀れなるものたち』には驚いた。あれポジフィルムで撮ってるんでしょ? 凄まじい高画質で、生々しさもすごかった。派手な色味に見えるけど、デジタルをいじくりまくった、CGみたいな不自然さではなくて、破綻のない感じ。まさにポジフィルムの良さが詰まっている。それを動画である映画の撮影に使うなんて、悪魔的。脚本的にも神に怒られるんじゃないかって、ハラハラと心配になった。ヨルゴス・ランティモス監督作品は、彼自身が脚本を書いている方が好きかもしれない(全作見ていない)。今回の映画はセンセーショナルで露悪的、その露悪にはポジフィルムもまさしく加担しているな。
最近の見た中でもっとも心を打たれたのは、ナン・ゴールディンの『美と殺戮のすべて』だった。
作中でナンの作品がスライドショーで、何度も流れるんだけど、彼女の作品は改めて素晴らしいと感じた。彼女は作品をポジフィルムで撮ってきたんだけど、彼女の作品もまた生々しさに満ちている。写真集や雑誌でしか見てことなかったけど、今回は映画館で、暗闇の中で映写機にて見た。今回の映画で知ったのだけど、彼女の初期作品はスライド上映で制作、発表されていた。今回の映画体験にて、ナンの作品をスライド上映で見れて、すごく良かった。生々しく被写体に肉薄するポジフィルムなんだけど、儚くもそれは次の写真へと切り替わる。痛みは消えたかと思いきや、ポジフィルムに生々しく刻まれてる。ナンは彼らを、傷や痛みなども含めて愛している。センセーショナルだが、露悪的ではない。圧倒的な愛のリアル。彼女の喪失の穴はそこが抜けていて、いくら写真を撮っても満たすことができないのだが、撮らずにはいられない。そして穴の奥底にいる死者の声を、彼女は写真を通して聞くことができるのだと思う。だからこそ彼女は社会活動に踏み切ったし、くじけずに戦い続けることができたのだ。彼女達のデモンストレーションの叫び声から、悲しみの深さを感じた。
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