浜辺で珈琲
僕はカフェをやる前は島で12年間カヤックのガイドをしていた。
カヤックとは簡単に言えば、中心部に穴が開いていて、そこに下半身を入れ込み、パドルという道具で漕いで進む小さな舟で、小さいもの(2mほど)から大きいもの(5mほど)まで、激流の中で使うもの、湖などの穏やかな場所で使うもの、海などの多少の波風のなかでも使えるもの、など用途に応じて様々なタイプがある。
僕が使っていたのは少々の波風の中でも進んでいくことのできるツーリングタイプのカヤックで、このタイプのカヤックは前後に荷室があり、水や食料、食器類、テント道具などを積み込むことができ、島から島へとカヤックで漕ぎ渡り、キャンプをしながら旅をすることもできる。
無人島に行って海で泳いだり、キャンプしながら小豆島を1周してみたり、瀬戸内海を1週間かけて西から東に横断する瀬戸内カヤック横断帯に参加してみたり、カヤックは海で遊んだり、自然のことを感じたり、学んだりするのにとてもいい道具だ。
とはいえ、実は僕がカヤックをしていて一番好きだった時間は、カヤックを漕いでいる時よりも、上陸した浜辺でお湯を沸かしてお茶を入れる休憩時間や、その日のキャンプ地までたどり着き、テントを張り、焚火を起こし、料理を作って、星空の下、ぼんやり焚火を眺めながら、ちびちびとお酒を飲んでいた時かもしれない(カヤック関係ないやん!と突っ込まれそうですが・・・)
今はカフェという場でおいしい珈琲や飲み物をお客さんに提供しているわけだが、そのころから、僕にとって、お茶の時間というのはとても大切な時間だった。(お客さんと一緒にお茶を飲む時間も一人で飲む時間も両方好きです)
この夏、友だちと一緒にカヤックをする機会があったので、久しぶりに浜辺の珈琲屋を開くことにした。
無人島に上陸し、海でひと泳ぎしたあと、浜辺の珈琲屋は開店する。
カヤックの荷室からガサゴソとお茶の道具を持ってきて砂浜に並べる。
持っていったもの
水(お湯にして水筒に入れて持ってくると手早くできる)、お湯を沸かすようの鍋、携帯用ガスストーブ、風よけ(風が強い時には必須)、おいしい珈琲豆、ミル(今回持っていったのはCAFECのTSUBAME MILL)、珈琲ドリッパー(今回持っていったのはユニフレームのコーヒーバネット)、珈琲サーバー用の鍋、カップ。
そして忘れちゃいけないのが、何でもいいから珈琲と一緒に食べるおやつ。手作りおやつなんかがあれば最高だが、贅沢言っちゃいられない、今回はコンビニで買ったピーナッツせんべい。
これがないのとあるのでは満足感が全然違う!(笑)
まずはお湯を沸かし、その間にガリガリと豆を挽き、ドリッパーにセット。
風があると、吹き飛ばされて、ドリッパーが倒れて粉が砂浜にドバーって、悲しいことになるので、ここは用心深く。
湯が沸きそうになったら、そのまま鍋からドリッパーへ、できるだけ丁寧にドリップ。
本当はケトルでも持っていけばいいんだけど、まぁ、アウトドアだし、細かいことは気にしない。携帯する道具は少なく、ある道具と工夫でなんとかやるしかない。
できたてのコーヒーをカップに注ぎ、はい、どうぞ!
ふぅ~。目の前にはキラキラと輝く穏やかな瀬戸内海。優しい波の音をバックに、海を眺めながら飲む珈琲って本当においしいな。至福のひと時。
これだから、カヤックってやめられないんですよね。
(えっ!別にカヤック関係ない?)
まぁまぁ、珈琲飲めない方には、おいしい紅茶も用意しておきますね。
浜辺の珈琲屋、気まぐれに開店します。