ドリップポットでぜんぜん違う
大坊さんのネルドリップ。
ポットの先から細い糸のようなお湯がツーっとネルの中に注がれていく。
何度注いでも全くブレのない一連の動きは神々しくもあり、その立ち振る舞いには感動させられた。
あんなふうに珈琲を淹れてみたいと、帰宅してすぐに、目に焼き付けた大坊さんの淹れ方を真似してみたが、まったくイメージ通りには注ぐことができなかった・・・。
これはポットが悪いのではなかろうかと、自分の腕を道具のせいにして(笑)、ポットをいろいろ調べてみた。
僕の珈琲ドリップ。
一番初めは家にある普通のやかん。
珈琲をドリップするという特別な時間や雰囲気を味わうという感じで、おいしい珈琲を淹れるというところにはたどり着いていなかった。
珈琲ドリップのために初めて買ったのは月兎印のスリムポット。
赤青黄色。色とりどりで、つるりとした琺瑯の光沢が可愛くって思わず購入した。
このポットに出会って、珈琲を淹れる時間が楽しくなった。
が、直火にかけると取っ手が熱くなって持てなかったし(その頃はまだ別のやかんでお湯を沸かし、このポットに入れて一段階湯温を冷まして使うなどという発想はなかった)、ゆっくり注ごうとしてもお湯がドバっと出てきたり、なかなか思うようなドリップができなかった。
カフェを始めて買ったのが、ハリオのドリップケトル。
これはコストパフォーマンスに優れていると思う。
慣れてくると湯量の強弱も自由自在でドリップした珈琲の味もぐっとおいしくなった。
しかし、これではいくら弱く注いでも、大坊さんのように糸のように細く注いだり、点滴のように湯を落とすことも難しかった。
湯量を弱めていくと注ぎ口から湯がたれてしまったり、ケトルを小刻みに振って点滴を作っても、その雫の粒が大きいのだった。
大坊さんが使っていたのはユキワのドリップポットの細口版だった。
欲しい!これさえあればあんなふうに珈琲をドリップできるんだ!
(まぁ、かなりの鍛錬が必要なんですけどね。大坊さんは珈琲淹れ続けて約40年なんですから)
しかし、お値段が・・・。
なんと税込み約2万円。なかなかすぐに手が出ない。
「あー。あのポット欲しいな。あのポットがあればもっとおいしい珈琲が淹れれるのにな」
と奥さんに言ってみても。
「お金たまったらね」
と、そつのない返事。
まぁ。そうですよね。珈琲売って、お金たまったら買うぞ!と思っていたら、なんと8月の誕生日に奥さんからプレゼントしてもらいました。(みゆきちゃん。ありがとう!)
ピカピカのユキワのポットは750mlサイズ。
大きさも、持ち手の太さも、ちょうどいい。
そして、なによりの特徴はやはり注ぎ口。他の2つのポットと比較してみると一目瞭然。鳥のくちばしのように細くとんがっている。
この形が細い湯を生み出すんだな。
で、さっそく珈琲をドリップしてみた。
おー!なんだこれは。優しく注げは注ぐほど湯が糸のようになっていき、最後は雫に。自由自在に湯量を調整できる!
ゆっくり丁寧にネルの中にお湯を注ぐ、大坊さんのあの姿と自分を重ね、心を込めて珈琲をドリップしてみた。
出来上がった珈琲はというと・・・。
それはぜひお店に飲みに来てください(笑)
ちょっとゆっくり時間が流れ始めて、ホッと一息つけるような、そんな珈琲になっていると思います。
おいしい珈琲への道はまだまだ続きます。