岩明均・ヒストリエ雑感


 ヒストリエの単行本がなんと五年ぶりに発売になるそうだ。愛読者のかたがたは、この刊行ペースには色々と思うところもあるだろうが、まずはこの発売を喜びたい。私はこの作者の単行本化された作品には全て目を通しているが、コミックモーニングに連載していた風子のいる店というマンガを本屋の店先で立ち読みしていたころからかれこれ40年になるかと思うと、いささかの感慨がある。
 というわけで、もはや何度めかわからないが、ヒストリエ11巻までを頭から読み直してみた。やはり何度読んでも抜群に面白いのは、第4巻目・主人公エウメネスの“初陣”エピソードだ。私は、寄生獣での数々のバトルシーンを楽しみながらも、やはりあの作品のテーマは地球上での人間存在の意味といったような問題意識が中心になっていたとずっと思っていたが、このヒストリエ4巻での緻密な戦術を見た時に、この作者の描く作品のキモを見たように思った。具体的な戦いの展開こそが最も重要で、テーマ的なものはいささか表現が悪いが、二の次であると。
 また、おおまかな流れは覚えていたものの、今回の再読でおどろいたのは、5年ぶりによんだ11巻目の内容をほとんど忘れていたことだ。アレクサンドロスとそっくりの風貌を備えた、新しいキャラクター。かれはこの物語にどのようにかかわっていくのか。そしてエウメネスにもおおきな転機が訪れている。はたして、というところで5年間も待たされたわけだ。個人的にこの巻を読んでいたころは様々な問題が山積みだったころで、とりあえず購入・一度よむ・それ以来再読の機会もなく、完全に忘却の彼方であったというわけだ。
 とにかくも、あと九日ののちにはこの続きが読める。この楽しみを与えてくれる作者には感謝したい。

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