2020年読書日記30
『魂でもいいから、そばにいて ーー3・11後の霊体験を聞く』 by 奥野修司
心が震えました。たくさんの人に読んで欲しい1冊です。
今年初夏、この本を何かの書評で見つけて買いたいなと思っていた矢先、鎌倉の民家の軒先に露天のリサイクルスペースがあり、そこに置かれていました。すなわち古本、お値段100円。「マジ!?」。出版されたばかりじゃなかったかな? なんという僥倖でしょう、もちろん即購入(というか、代金を箱に入れるシステム)。これもひとつのめぐり逢いなんだと思います。不思議だな……。
タイトルから内容は想像つくでしょう。東日本大震災で肉親を亡くされた方が体験された科学的には解明できない不思議な事象を聞き取られたものです。心霊現象と書くと嘘っぱちくさくなってしまいますが、いわゆる霊が遺族に会いに戻ってきたとしか言いようのないできごと集です。瓦礫の中から見つかった犠牲者のケータイへ懐かしさから電話してみたら声が聞こえたとか、犠牲になったお子様のおもちゃが突然動き出したとか、玄関開けたら亡くなれたご家族が立っていたとか……読みようによったらトンデモ本なのですが、これだけ多くの事象が存在するのはどういうことなのか。複数のご遺族が同時に体験するというのはどういうことなのか。真実としか考えられないのではないのか。
第三者的にはオカルトかもしれないけど、体験されたご遺族にしてみれば、もう一度会いたかった人にまた会うことができたという福音なんです。それで救われるのだったら、読者の私たちは、勘違いだろとか幻だろとかと思い込みだろとか、わざわざ言うことはまったくのナンセンスなんじゃないでしょうか。純粋にご遺族の再生の物語として読むことが何よりの供養になるのではないのかと感じました。
震災から9年が経ちましたが、犠牲になられた方のご冥福を改めてお祈りします。