憂鬱


はるか彼方の遠野のはざまー四月の光差し込む下層の底を、歩むことだけ願ううちに、今年の春は過ぎてしまった。青々とした若葉の恨めしさ。みんな、僕を置いていって、生き生きとした生気を吐いて、季節を前に進めてしまう。赤く咲いたツツジのそばの、枯葉の残る小さな木陰。そこで小さく丸くなって、日がな道ゆく人を眺め、青い匂いの空気をねたみ、虫の羽音を肌でたどる。サンダルにたかる小さなアリたち。アケビのつるは雲に絡まり、青々とした桜の新緑、木漏れ日のさす皐月の下層ーアスファルトは、干からびている。天国模様を追う前に、空想の一糸はプツリと切れて、下層の底に戻される。木漏れ日の海を泳ぐ魚は見えない。僕は、自分の不甲斐なさに絶望感している。

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