第10話 成果発表会に成果の土産なく登壇 前編
現実逃避から抜け出したものの、WEBメディアの制作が進んでいないことに変わりはない。そんな当たり前の現実に直面しながら起業塾のプログラムを半ば終え、中間報告の成果発表会に手ぶらで登壇することになった起業遅延家・西村。一体何を報告するのか?
「4月にWEBメディアを公開する」と宣言してから3ヵ月がたちました。進捗状況は皆さんお察しの通り。4月に入りましたがコンテンツも箱も何もできていません(涙)。「歳をとると1年が早い」。年長者から刷り込まれて育ちましたが、今は実感する年頃。仏の哲学者・ポール・ジャネによると時間の心理的長さは年齢の逆数に比例するそう。5歳の1年の感覚は50歳の10年に相当するのだとか。なるほど、それであっという間に月日がたってしまったのですね。私は何も悪くない。
ってコラー。起業塾留年する気かー!!!!!
とツッコミを入れられてもおかしくない停滞状況。言い訳ですが私は私なりに頑張っていました。WEB制作にかかれないほど超多忙。子供が春休みに入り卓球教室へ毎日送ったり、迎えに行ったり、相手をしたり……。
なかでも起業塾で行われる成果発表会のプレゼンの準備に力を注いでいました。そう6ヵ月の起業プログラムの中間報告会。40~50人の前で「起業から3ヵ月で〇〇まで事業が進みました」「〇〇個売って〇〇円売上ました」といった成果を発表しなければなりません。
なのにミッションインコンプリート。もしやミッションインポッシブル?????
私のような珍しいケースは何を発表すればいいのでしょうか? 与えられた15分を瞑想の時間にするか、手品でもお見せするか、それとも逃げ出すか……。
起業塾の担任の先生に相談すると「いろんな企業の方が見に来られるから、西村さんがお願いしたいことを発表すればいい」とアドバイスをくださいました。私がお願いしたいことはただひとつ。「監修者を紹介してください」でした。ファッション、グルメ、トラベル、どんなコンテンツを作るにせよ専門知識のある監修者が必要。探すのに苦戦しておりました。雑誌の企画ならどんなお偉いさんでも喜んで引き受けてもらえるでしょう。「雑誌で紹介されました!」がその方のキャリアになりますから。しかし、こちとら宣伝効果の見込めないスタートアップのメディア。「卓球レディースに載りました!」。。。。。その方のキャリアにハクがつくとは思えません。
そんな理由で40年以上磨き上げた消極性を発揮し、監修者を探せずにいた私。半ばあきらめつつも最後の望みをかけ成果発表会で監修者を募ることにしました。プレゼンなんて何十年ぶりだろう? パワーポイントというプレゼン用のソフトが出始めた頃にやって以来。パワポの使い方も一から勉強です。ワードプレスからパワポに対戦相手をかえて格闘しながらプレゼンシートを作成。5日後やっと完成しました。頑張った自分へのご褒美に丁寧に淹れたドリップコーヒーを飲みながら一服。立ちのぼるフルーティーなアロマが絞り上げた脳を緩めてくれます。緊張のあとの緩和。これほど心地よいものはありませんよね。ゆっくりとしたひと時を過ごしていると、同期のH口さんが尋ねてきました。
H口さん「プレゼンシート全部で何枚になった?」
私「15枚。H口さんは何枚?」
H口さん「50枚くらいかな」
私「……」
私は今際の国と交信しつつも、状況を客観的にとらえる努力をしました。まず「H口さんは元営業でプレゼン上級者」であること、「発表時間は平等に15分」であること、そして「彼女が使うシートは50枚で私が15枚」であること!!!!!
私「何かがおかしい?????」
私は自分の間違いに気づくために勇気を出してH口さんのプレゼンシートを見させてもらいました。するとH口さんは文字を大きく使って、ひとことしゃべるたびにシートをスライドさせる手法。プレゼンにテンポが出て間延びさせない上級者テクをお持ちでした。
私はというと、覚えたばっかりのアニメーション機能を使いたいばっかりに、一枚のシートにたくさんの情報を詰め込んでおりました。話すたびに全方向から文字が現れる打ち上げ花火のような面白い仕掛け。「た~まや~♪」。文字も線香花火のように小さくて見づらい。頑張ったけどパワポ初心者が陥りがちな自己満足を具現化した出来栄えです。
私はH口さんのプレゼンシートを見た5分後に5日間の努力の塊をボツにしました。そして一から作り直しへ。プレゼンシートの正解をカンニングしたんだから仕方がありません。WEBメディア公開まで時間がないなか「制作以外のことに時間を割くのがそもそも正解なのか」とツッコミを入れられてもおかしくない迂回状況ではありますが……。
WEB公開まで20日
つづく
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