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番外編(中) ビジネスコンテストにお門違いの卓球レディースが登壇

審査員のきまぐれでビジネスコンテストのファイナリストに選ばれた卓球レディース。前編に続く中編です。

ビジコンのリハーサルから大迷惑な卓球レディー

「試合慣れ」「舞台慣れ」ってなんなんでしょうね。
 
私は幼い頃、詩吟を習っていました。張本兄弟が元卓球選手のご両親から卓球を教わったように、私も詩吟の指導者である両親から吟を教わっていたのです。
毎年春に開催される全国予選。そのたった一日のワンチャンを緊張することなくベストを尽くせるようにと、私は12カ月の毎週末、舞台に立たされておりました。ローカル大会から寺の奉納吟、敬老会……etc ネット検索ができない昭和の時代に、どうやったらこんなに大会を見つけられたのでしょうか。両親の高感度なアンテナにひろわれた舞台にあがり、エロ詩吟ではなく正統派の詩吟を大きな声で高らかに吟じておりました。
 
そのおかげですかね、小学校の学芸会では緊張することなくセリフが言える優等生。まわりの親御さんからは「ゆきちゃん、詩吟やってるから舞台度胸があるね」とお褒めの言葉を頂いておりました。
 
なのに、、、
なのに、、、
 
そん時の度胸はどこいっちまったんだーーい????
 
第11話 「成果発表会に成果の土産なく登壇」にも書きましたが。プレゼンの舞台に上がると声も脚もふるえる。私は20歳を超えた瞬間、チキンな方に生まれ変わってしまったようです。コケコッコー。
 
そんな私にビジネスコンテストの最終発表会に登壇という最大の試練が訪れました。控室で合流したビジコン界の馬龍や樊振東と一緒に会場へ案内されると……。
 
U・SO・DA・RO
 
100人以上収容できるホールに報道陣が詰めかけておりました。舞台のバックには発表者を紹介する賞レース用のオープニング動画が流れています。
 
そういや3次審査のときに、「紹介動画作るのでお写真撮らせてください」とスタッフから声をかけられました。私はマスク下のノーメイクの顔をさらし、ヘラヘラとふざけながらガッツポーズ。それが今ここにカッコよく編集されてデカデカと映し出されている、大勢の報道陣の目にさらされているではありませんか!!! 
 
こんな大ごとなら、家中のメイク道具を引っ張り出して、Matt並みに顔を作るんだった(涙)。
 
後悔していると、
 
「これからリハーサルを始めます」とスタッフから声がかかり、発表の説明を受けました。
だけど緊張のあまり、発表会の流れが全然頭に入ってこない。私は自分の前の人の発表を見て、その通りにやることにしました。
 
すると、、、
スタッフの方から「では、リハーサルのトップバッター、西村さんお願いします!」と声がかかりました。
 
えっ、えっ、えーー!! なんで私から何ですか? 誰の差し金でそうなったんですか? 「おい、おい、勝手に決めんじゃねーーー!!!」
 
と文句を言おうとしたら、スタッフの方からあみだくじを見せられました。私の名前は一番にひもづいています。
 
そういえば以前、ファイナリストへのオンライン説明会が開かれた時にあみだくじを引かされたなぁ~。♪あみだっくじ~、あみだっくじ~、引いて楽しいあみだっくじ~(涙)
 
ガタガタガタガタ。
 
音を立てて震える私の脚を見て、スタッフがドン引きしました。ところが発表者はさすが馬龍や樊振東。
「一番だなんて緊張するよね!」と優しく声をかけてくださいました。
 
私はコクンと頷き、自分をなんとか落ち着かせようと、頭の中の引き出しを片っ端から開けて安心材料を探しました。すると、大学入試前に家庭教師の先生から授かった金言を発見しました。
 
「自信があれば本番でも緊張しない。そしてその自信は努力に裏付けされる。今まで頑張ってきたんだから自信を持って!」
 
私はこの一週間、喉がかれるまでプレゼンの練習を毎晩繰り返しました。言葉が自然と口から出てくるまでセリフを頭に叩き込んだ。そう、努力したんです。このいっぱいの努力はいっぱいの自信に変換されていい!
 
私は堂々と壇上へ向かいました。そして用意されたマイクを持ち、いざ発表……と思いきや、マイクとPCの使い方がわからない。。。。。
 
側にいたスタッフが見かねて「あの、説明聞かれてました???」と声をかけてくださいました。
 
「はい。聞いてました(嘘)」。
 
スタッフの方は間髪をいれずに壇上での流れを一から説明してくださいました。嘘を見抜いてからの判断の早さ、恐れ入ります。
 
壇上グダグダ状態で始まった私のリハーサルは発表もグダグダ。緊張で声はマイクで拾えないほど小さくなり、それに気づいて大きくしたら今度は声が震え始めました。どこまでしゃべったかもわからない、何をしゃべってんだかわからない、そんな状況で時が過ぎると、舞台の奥でスタッフの方が「残り1分」と書かれたプラカードを上げました。それを見た私は緊張に追い打ちがかかり、頭の中が真っ白に。発表が止まってしまいました。
 
シーーーン。
 
しゃべらない私とザワつかないスタッフとで会場は無音のまま。しばらくすると「チーン」とタイムアップのベルが鳴り、私のリハーサルは終わりました。
 
頭の中が真っ白なまま席に戻ると、向こうの方でスタッフが集まって円陣を組み、何やらひそひそと相談しています。しばらくするとその一人が壇上に上がりマイクを持って流れの修正を伝えました。
 
スタッフ「残り1分のプラカードは上げないことにします。それをすると緊張される方もいらっしゃいますので」

やばい! 私のせいで発表会の流れが変わる。こりゃいかんと思い手をあげて反論しました。
 
私「はいはいはーい。緊張するのは私だけです。ほかのみなさんは1分前にプラカード上がった方が進めやすいと思いますので、そのままで大丈夫です。私も次は緊張しないよう努めますので」。
 
スタッフ「いや、上げないことに決まりましたので」
 
私「いや、上げてください」
 
この押し問答に5分以上かかりました。
結局、私は根負け。プラカードは上がらないことになりました。
 
続くリハーサル、私のド緊張にほかのファイナリストがつられないか心配しましたが、そこは馬龍や樊振東、誰一人震えることなくスムーズにリハーサルを終えられました。
 
私「(独白)努力したら自信ができるって誰がゆーてん???」
 
リハーサル後、馬龍や樊振東は外へランチに出かけられましたが、私はそんな余裕なし。廊下でひとりぶつぶつとプレゼンの練習を始めました。最後の努力。自信なんてできなくていいから、どうか本番は詰まらずにセリフが言い切れますように。
 
ということで書き切れなかった。続きは後編へ。
 

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