旅人になった日
”僕は旅に出た”。
大学3年生の夏休み、あの日の関西空港での心の高まりは、今になっても忘れることはない。無意識に心臓のどきどきが止まらず、とても驚いたのを今でも覚えている。
大学3年生の夏休みというと、就職活動やインターンシップなど将来に向けて大事な時期だと思う。だけど、”僕は旅に出た”。1人でバックパックを背負って海外に行きたかった。
約1年前、僕はバック1つで旅行に行くバックパッカーという、旅のスタイルを知った。その出会ったバックパッカーたちは、学生とか大人とか性別とか関係なく、みんな輝いて見えた。どんな環境でも言い訳せずに、やりたいことやって、食べたいもの食べて、みんな楽しんでいた。僕もこうなりたいと強く憧れ、”僕は旅に出た”。
僕にとって初めての1人海外。過去には家族や友人と海外に行ったことはあったが、1人で行くのは初めてだった。海外どころか1人で飛行機に乗るのも初めての経験だった。
たった2週間の夏の旅なのに、お気に入りの赤いバックパックはパンパン。おかげで関西空港を出発するときの手荷物検査では重量オーバーで課金した。
しかし、そんなことお構いなしにマレーシアを経由して、目的地のスリランカに到着した。今までビザの必要な国に行ったことがなかったから、学校で5枚もビザのような紙切れを印刷して持って行った。どれがビザかはわからなかったが、無事入国でき、バックパックを受け取り、空港のベンチに座った。
初めての土地に対する高まっている心を落ち着かせ、周りを見渡したら日本人の姿はなかった。そこからは僕の旅の始まりだった。
市内へのバスへ乗り、市場でカレーを食べられるお店を見つけ、手でカレーを食べた。その姿を写真に残そうと、近くにいたスリランカ人にスマホを渡した。外国の人は物を盗むという偏見はあったが、写真を撮ってもらった。そして僕の頭から、外国の人は物を盗むという偏見は消え去った。
あっという間の2週間だった。
トゥクトゥクの勧誘を断っていたら黒人の人たちに囲まれていた。
トゥクトゥクのおじさんに騙され、手持ちのお金がなくなったこともあった。
けど、別の場所では無料でトゥクトゥクに乗せてもらった。
バスの隣だったおっちゃんの家に急遽民泊させてもらいココナッツ狩りをした。
そこの子供たちにじゃんけんを教えようとしたが伝わらず、諦めて一緒に鬼ごおっこした。(僕の英語は”this”と”thank you”くらい、子供たちはシンハラ語)
すべてが楽しいわけではなく、寂しすぎて日本に電話もした。
お金もなく、ルーなしカレーを食べたり、宝くじを買った。(結果は全部ハズレ)
当時気になってた女の子にポーチをプレゼントしようと、特注でお願いして作ってもらった。(日本に帰っても会えず渡せてない)
一瞬だった。とても楽しかった。
それからは、環境などを言い訳せずに、やりたいと思ったことをやるようになった気がする。
あの大学3年生の夏休みが、僕の旅人になった日
”僕は旅に出た”。