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【ビートルズ『リボルバー』について語る④】詞先/曲先

曲の作り方には色んなタイプのモノがあります。

しかし、あえて大きくザックリ分けるならば

詞先/曲先


というモノがあるんです。

【詞先】というのは
まず、歌詞を書いて、その後で
それに合うようなメロディーを
考えていくというモノ。

【曲先】というのは
まず、メロディーをある程度作って
そのメロディーに合わせた歌詞を
考えて書くというモノ。

音楽を自分で作ったりとかしない人や
音楽の作り方について探究をあまり
した事がない人にとっては…

特に、最近であれば

えっ??、曲作る時に
歌詞が先とかあるの?

先に歌詞書いて、それに合わせた
メロディーを作るなんて
めっちゃ大変じゃないの??


という感想をもつかも知れないんですが
世の中に【詞先】の曲なんて
山ほどあるんです。

特に、日本の昔の曲なんて
ホントに【詞先】のモノが多いです。

それこそ、有名な詩人が書いた詩に
メロディーを乗っけて出来上がる、
みたいなのが

一番多かった時代すらあったんです。
それは随分と前の話ですけどね。

で、この辺でビートルズを絡めて
いきたいんですけれども

ジョン・レノンというのは
思った以上に【詞先】の曲作りをしてます。


例えば、『リボルバー』で僕が一番好きかも
知れない曲に「She Said She Said」という
曲があります。

この曲の出来る流れを追ってみましょう。

YouTubeに一連の流れが何となく分かる
音声動画があったので
良かったら聴いてみてください。↓

まず、この曲の着想元となったのは、

1965年の8月にジョンがロサンゼルスの
パーティーでピーター・フォンダ(俳優)と
話をした内容です。

この時、パーティーに参加した人々は
ドラッグで酩酊状態になっていたそうですが

しかし、ピーター・フォンダがジョンに
話したのはドラッグについての話ではなく、

ピーターが10歳の時、事故にあって
手術台の上で臨死体験をした、

という事だったんです。

そこでジョンはこの事が印象に残り

He said `I know what it’s like to be dead‘

彼は『俺は死ぬのがどんな感じか知ってるぜ』
と言った。

という文章を書きました。

ジョンの作曲というのは大抵こういう風に
始まります。

まず、何かの出来事があったり、
新聞や本を読んで気になった事、

そういう中で一行、キャッチフレーズ
みたいなモノを書く。

この曲ではそれが

彼は『俺は死ぬのがどんな感じか知ってるぜ』
と言った。

だったんですね。

しかし、ジョンはこれをすぐすぐ
完成させません。
ジョンは怠惰です(笑)

こうやって何か書いても
大体、途中やめにして寝かせます。

ただ、大切なのはジョンは記憶力が良いという事。

ですから、こうやって寝かせても
覚えてるんですね。ここは結構な特徴です。

この曲を本格的に作り出したのは
1966年の3月頃です。

1965年8月から半年以上経ってます(笑)

で、『最初に言葉ありき』なので
それを気分でギターを弾いて
言葉を何度もそれに合わせて弾くんです。

そして、ゆっくりゆっくり
メロディーがカタチになってゆく。

その間に思考もジョンの頭の中で
色んなモノが混ざって来ます。

完成版にはあるフレーズ、
When I was boy〜♪
僕が子どもだった頃は

も、実際に自分の子ども時代の事かも
知れませんが
そもそも最初のピーター・フォンダの
10歳の時の臨死体験の話から広がって

僕が子どもだった頃は…

というフレーズが出たのかも知れないのです。

改めて完成版を聴いてもらいたいですが↓

ジョンの曲ってホントに形式が自由なんですよ。

なんかしゃべってるみたいな曲が多い。
この曲もそうです。

やっぱり、詩に近い。
それをこねくり回して最終的には
すごいメロディーが出来てしまうのは

これはもうジョン・レノンの才能でしか
ないのですが。。

歌詞も徐々に変わっていき、
「He said」より、「She said」にしたほうが
よりスキャンダラスになるかも、とか。

メロディーもだいぶん変わります。

で、


ポール・マッカートニーは真逆なんです。

ほぼ曲先です。


例え、詞が先だったとしても
はじめからすごくメロディアスなモノが
ズルっ、と出て来て

そのカタチが後で大きく変わるなんて事は
ほとんどありません。

兎に角、すぐにメロディーがバンバン
出てくるし、
メロディー重視とも言えるでしょう。

ジョンは歌詞をとても重視しています。
自分の曲にしろ、ポールや他の人の曲にしろ

例えメロディーが良くても
歌詞の内容が良くなければ、酷評します。

ポールはメロディーが出来るのは一瞬ですが
歌詞が難産になるパターンが多かった。

ビートルズ時代は、ジョンをはじめ、
友達や付き人など周りの色んな人の意見を
取り入れて
やっとこさ歌詞を完成させる、

みたいな事もザラにありました。

例えば、「エリナー・リグビー」では
all the lonely people〜♪
すべての孤独な人達

の部分はジョージが考えたそうです。

ジョンの曲がどこかヘンテコリンなのは
詞を先に書いて、そこに後から
メロディーやコードをへにょへにょ
付けているからなんですね。

しかし、だからこそ
格式ばったものにならないし、
曲構成も歌詞に合ったような展開、
小節数になっていくという。

逆にポールの曲はカッチリしていて
普通の形式的なモノが多いです。

ジョージはそのどちらでも無さそうというか。

ギターをいじくり回しながら
作っていくというか。

コード重視…なんですかねぇ。。
それも違うか。

まぁ、何にせよ、独特です。


そういう3人の個性が爆発した曲が
順番にボンボンボン!と並んで出てくるので
面白い訳ですね。

ちなみに、改めて『リボルバー』期に
それぞれが書いた曲を観てみましょう。

【ジョン・レノン】

「Rain」
「I’m Only Sleeping」
「She Said She Said」
「And Your Bird Can Sing」
「Doctor Robert」
「Tomorrow Never Knows」

【ポール・マッカートニー】

「Paperback Writer」
「Eleanor Rigby」
「Here, There And Everywhere」
「Yellow Submarine」
「Good Day Sunshine」
「For No One」
「Got To Get You Into My Life」

【ジョージ・ハリスン】

「Taxman」
「Love You To」
「I Want You Tell You」

ね。
やっぱり、三者三様だからイイ!

これ、どんなに名曲でも
ポールだけ続いたら、ジョンだけ続いたら
飽きますよ。

特に、核となっている筈のポールの曲も
こうやって並べてみると分かりますが

あまりにも盤石すぎるというか
安定し過ぎていて
メロディーはとてつもないんですが
飽きも早そうなんですよ。

ここに、ジョンやジョージの曲が
はさまってくるから
ポールの曲も息を吹き返すんです。


ハイ。今回はここまでになります。
ありがとうございます!


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