福祉用具の選び方と転倒予防のポイント:詳細ガイド
はじめに
高齢者や障害を持つ方々の生活の質を向上させる上で、福祉用具は非常に重要な役割を果たします。2024年度から、より多くの選択肢が利用可能になり、個々のニーズに合わせたカスタマイズが可能になりました。本ブログでは、新しく選択可能になった福祉用具の詳細と、転倒予防のための重要なポイントについて、専門的な視点から詳しく解説します。
2024年度からレンタル・購入が選べるようになった福祉用具
1. 固定用スロープ
特徴: 小さな段差を解消するためのスロープ
利点:
車椅子や歩行器の使用者の転倒予防
設置が簡単で、必要に応じて設置場所の選択が可能
選び方のポイント:
段差の高さに適したサイズを選択
2. 歩行器(ピックアップ型)
特徴: 前輪が大きく、後輪が小さい四輪歩行器
利点:
安定性が高く、歩行をしっかりサポート
前方に少し傾けるだけで簡単に動かせる
選び方のポイント:
使用者の身長に合わせて高さ調整が可能なものを選ぶ
折りたたみ機能があると収納や持ち運びに便利
3. 四点杖
特徴: 杖の先端が複数の脚に分かれている特殊な杖
利点:
通常の杖よりも安定性が高い
体重をしっかり支えられる
選び方のポイント:
使用者の身長に合わせて長さを調整できるものを選ぶ
握りやすいグリップタイプを選択
これらの福祉用具は、個々の状況や好みに応じてレンタルか購入かを選択できるようになりました。長期的な使用が見込まれる場合は購入、短期間の使用や試用の場合はレンタルを検討するとよいでしょう。
転倒予防のための重要ポイント
高齢者の転倒は深刻な健康問題につながる可能性があります。以下に、特に注意を払うべき場所とその対策を詳しくご紹介します。
1. ベッド周り
ベッドサイドからの立ち上がり時は、特に注意が必要です。
リスク:
急な姿勢の変化による血圧低下
足元のふらつき
暗い環境での視認性の低下
対策:
ベッド周りに手すりを設置する
ベッドの高さに合わせて調整可能なものを選ぶ
足元にセンサー付きライトを設置し、暗い中での移動を安全に
滑り止めマットを使用し、床面の摩擦を確保
ベッドの高さを適切に調整し、立ち上がりやすい高さにする
2. トイレ周り
トイレでの立ち上がり時も転倒リスクが高くなります。
リスク:
狭い空間での動作制限
滑りやすい床面
急な動作による平衡感覚の乱れ
対策:
フレーム型の手すりを設置
トイレ全体を囲むように設置し、どの方向からでもサポートを得られるようにする
片手用の立ち上がり補助手すりを設置
便器の横に設置し、立ち上がり時の支えとする
滑り止め加工されたマットを使用
トイレ内に手すり付きの背もたれを設置し、座位保持をサポート
便座の高さを調整できる補高便座の使用を検討
3. お風呂周り
浴室内は特に転倒リスクが高い場所です。水濡れや温度変化による身体への影響も考慮する必要があります。
リスク:
滑りやすい床面
温度変化による血圧の変動
浴槽の出入りの際の不安定な姿勢
対策:
浴槽の縁に購入型のグリップを設置
浴槽の形状に合わせて選択し、しっかりと固定する
バスボード(お尻で座って入れる板)の利用
浴槽の縁に渡して使用し、またぎ動作を減らす
浴槽台(またぎ入る際の高さ調整用)の設置
高さ調整可能なものを選び、使用者の身長に合わせる
天井から床まで伸びる手すりの設置
浴室の構造や強度を確認し、専門家に相談の上で設置
滑り止めマットの使用
浴室床全体と浴槽内に敷く
シャワーチェアの利用
座ったまま体を洗えるようにし、立位での動作を減らす
浴室内の温度差を小さくするため、脱衣所や浴室を予め暖める
4. 手すりの設置に関する注意点
手すりは転倒予防に非常に効果的ですが、適切な設置が重要です。
天井や床の強度確認:
建築専門家や福祉用具専門相談員に相談し、構造上の問題がないか確認
必要に応じて補強工事を行う
固定式の手すりの設置:
壁の構造(木造、鉄筋コンクリートなど)に適した固定方法を選択
定期的に緩みがないか点検する
置き型の手すりの使用:
重りつきの鉄板を使用し、安定性を確保
設置面の状態(凹凸、傾斜など)を確認し、がたつきがないようにする
定期的に位置のずれや安定性をチェック
手すりの高さと位置:
使用者の身長や腕の長さに合わせて適切な高さに調整
動線を考慮し、自然な動きをサポートできる位置に設置
5. ベッドの導入
適切なベッドの選択と配置は、転倒予防と快適な生活の両立に重要です。
部屋の広さの確認:
ベッドのサイズだけでなく、周囲の移動スペースも考慮
介護が必要な場合、介護者の動きやすさも確保
ベッドの種類の選択:
電動ベッド:姿勢の調整が容易で、立ち上がりをサポート
低床ベッド:転落時のリスクを軽減
サイドレール付きベッド:転落防止に効果的
マットレスの選択:
体圧分散効果のあるものを選び、褥瘡予防にも配慮
硬すぎず柔らかすぎないものを選択し、安定した寝姿勢を確保
ベッド周りの環境整備:
ナイトテーブルや照明の配置を工夫し、必要なものに手が届きやすいようにする
コード類は整理し、つまずきの原因を排除
その他の転倒予防のためのアドバイス
日常的な運動:
バランス感覚を養う運動(ヨガ、太極拳など)
下肢の筋力トレーニング
定期的な健康チェック:
視力、聴力の検査
服薬管理と副作用の確認
住環境の整備:
十分な明るさの確保
段差の解消
整理整頓を心がけ、つまずきの原因を減らす
適切な履物の選択:
滑りにくく、足にフィットする靴を選ぶ
室内でも滑り止め付きのスリッパを使用
緊急通報システムの導入:
転倒時にすぐに助けを呼べるシステムを検討
まとめ
福祉用具の選択と設置は、個々の生活環境や身体状況に合わせて慎重に行う必要があります。2024年度からの新しい選択肢を活用しつつ、転倒予防を最優先に考えることが大切です。
ここで紹介した方法は一般的なガイドラインですが、個々の状況に応じてカスタマイズすることが重要です。専門家のアドバイスを受けながら、安全で快適な生活環境を整えていきましょう。
転倒予防は一朝一夕にはいきませんが、小さな工夫の積み重ねが大きな効果を生みます。家族や介護者、医療専門家と協力しながら、継続的に環境改善と身体機能の維持・向上に取り組むことが、健康的で自立した生活を送るための鍵となります。