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天使と悪魔
夜更かしをしてオリンピックを観た。女子バレーと女子サッカーだ。女子バレーはまだ進出の可能性が残されているが、女子サッカーは敗退した。昨日観た男子サッカーと合わせて、観たスポーツはことごとく敗退した。敗退した選手たちは一様に涙を流し、それがなんというか、感情に波を起こし、ある人には勇気を与え、またある人をうんざりさせる。
家族が寝静まってから、暗い部屋で録画を観ていると何度も眠気の波が襲ってきて、特に比較的余裕のあった女子バレー最終のケニア戦ではなんども居眠りをしてしまった。そのせいか、その後の女子サッカーは比較的集中して見ることができた。
日本はアメリカにほとんど勝ったことがなく、女子バレーで言えばブラジル戦のような雰囲気だった。一昔前よりは差は狭まっているはずだが、それでも体格や走る姿から感じる覇気がアメリカの強さを感じさせ、独特の緊張感があり、個人の能力でやられてしまいそうな雰囲気があった。
とは言え、多くの局面で、日本が負けているようには見えなかった。タイトに引き締まった守備陣形を維持して、集団でサッカーをした。体も張っていた。それだけに、延長前半の最後にロドマンの娘に素晴らしいシュートを決められたのが悔しかった。シュートも素晴らしいが、その前の切り返しでマークについていた北川選手を完全に振り切り、この時点で勝負ありだった。
3バックの陣形で、ウイングバックの北川選手のプレーが好きだった。決して位置は高くなく、むしろ守備時にはディフェンスラインに含まれて5バックとなり、重心を低く保ちながらカウンターを狙うという意識がうかがえた。北川はずっと、相手右サイドのロドマンに手を焼いているように見えた。
北川は攻撃面で特徴のある選手だと思う。プレースキックも上手く、ロングパスやサイドチェンジも得意とするキックの精度がある。この日は守備に奔走し、また延長前半だったと思うが、左サイドからの突破のサイドに脚を痛めたと見え、延長前半の最後のプレーではもう動けていなかっただろう。それでなくても、大舞台であれだけの緊張感のある試合で、疲労もたまっていたと思う。ロドマンの鋭い切り返しは、恐らく、左利き対策として、切り返しのシュートというパターンがあることは意識していただろうが、あの時間帯ではもうそれに反応するだけの体力は残っていなかった。
ゴール後の一瞬、北川が画面に映った。地面に頭をつけて、悔しそうだった。それはそうだ。この時間まで、苦労して守り抜いてきたからだ。放映していたテレビでは、その後すぐに交代で退き、そのあと映ったのはもう試合後だっだと思う。膝のあたりをアイシングしながら、円陣に参加していた。
女子バレーのブラジルと日本ほど大きな差はないのかもしれないが、それでもロドマンの推進力、あの疲れた中でのシュートの精度には目を見張る。ただ、こういう一瞬の隙を疲れて0-1で負ける、そういう展開になるほどまでには、試合展開は際どいもので、拮抗していた。次にやったらどうなるかわからないという雰囲気がある。
相変わらず暑い日が続く。そして夕方にはスコールが降る。誰も言わないが、近い将来もう東京は夏住めない街になるんじゃないかと、本気で思っている。Twitterでどなたかが、冷房無しで生きられない夏ならば、生存権として冷房代はただにしてほしい、と言っていた。確かに、今まではかろうじて冷房がなくても、なんとか工夫すれば耐えられる暑さだったが、今年は完全に一線を越えた感がある。
たまに夜テレビをつけると、海外のMVを流す番組に当たる。チャートの上位に来るMVがどれも悪趣味で悪魔的で辟易する。ショウビジネスが悪魔を引き寄せるのか、それとも音楽というものが、悪魔と契約したロバート・ジョンソンではないが、どこか悪魔的な魅力を必要とするのかわからないが、いよいよ世界は狂ってきた。ノエル・ギャラガーが書いたように、世界の車輪がもう外れかかっているのかもしれない。でも世界は回転するのをやめない。