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ツールドフランス2024 第18ステージ (Gap - Barcelonnette) 考察

山岳決戦2日目は、総合争い以外の選手がステージ優勝を狙う最後のチャンスだったので、スタートから熾烈なレースになりました。そしてアタックに次ぐアタックの末、新たな「初」が生まれました。

どんなレースだったのか、見ていきましょう。

第18ステージは3級の山を5回通過する175.9kmのステージ。獲得標高も3065mと控えめで、フィニッシュ地点もそこまで上っておらず、クライマーよりもパンチャー系の選手にチャンスのあるコースに見えました。そしてレイアウト的に最後に総合争いが動くとは考えにくく、第17ステージに続いて逃げからのステージ優勝の可能性が高いと言われていました。

序盤は緩やかに上っていくコースレイアウトでしたが、このステージもスタートから逃げを決めるためにたくさんの選手がアタックするのでプロトンは常に長く伸びていました。何度も抜け出しては吸収を繰り返して、22km地点でようやく34名の逃げが決まり、そこに追走2名が加わり36名になりました。第17ステージと同じように大人数になりましたが、総合が一番いい選手がTOTAL Energieのクラス選手で32分58秒なのでそこまで脅威ではありません。逃げに乗れなかったのはUAE、Soudal-Quickstep、Alpecin、Astanaでしたが各チームが逃げを容認したため、プロトンはUAEがタイム差が開いても問題ないペースでゆるゆる引いていました。この感じだと最後に総合争いが動くこともなさそうですし、ステージ優勝争いはこの36名に絞られました。

逃げの36名は、

レメン、ワウト (Visma-Lease a Bike)
ユールイェンセン、 マシューズ (Jayco-AlUla)
クヴィアトコフスキー、トーマス (Ineos Grenadiers)
ベルナール、スクインス (Lidl-Trek)
アルミライル、ゴドン、プロドム (Decathlon-Ag2r La Mondiale)
ポエルス (Bahrain Victorious)
ヒンドリー、ソブレロ (Red Bull-Bora-Hansgrohe)
マデュアス、パシェ (Groupama-FDJ)
カラパス、ヒーリー、クイン (EF Education-EasyPost)
カンペナールツ (Lotto-dstny)
ウール、 ニーランズ (Israel-Premier Tech)
マルタン (Cofidis)
アランブル、ラスカノ、ミュールベルガー (Movistar Team)
シャンポッサン、ガルシアピエルナ (Arkea-B&B Hotels)
マンチェス、ジマーマン (Intermarché-Wanty)
オンリー、 ヴァンデンブルック (Team dsm-firmenich)
ヨハネセン (Uno-X)
クラス、 ブルゴド、 ジュガ、ヴェルシェール (Total Energies)

と各チーム勢のタレント揃いで、Vismaも逃げに2名入れて完全にステージ狙いの布陣でした。人数が多いのもありプロトンとのタイム差はすぐに開いていきました。最初の1時間の平均時速は45kmhでした。

途中、DSMのオンリー選手が2度のトラブルで逃げに復帰できなくなり、プロトンに戻りました。今年成長株のイギリス人の21歳のオンリー選手は、山の厳しかった第17ステージで5位に入っているだけに残念な離脱になりました。

逃げは特に動きなくまとまって進み、山岳ポイントとスプリントポイントを通過しました。山岳ポイントはMovisterラスカノ選手とEFカラパス選手が積極的に取りに行き、それぞれ4位と5位に上がりました。スプリント賞は絡んでいる選手がいないので、特に駆け引きはなく取りたい選手が取る感じで通過しました。その頃には逃げのペースも落ち着き、2時間経過後の平均時速は42.9km/hになりました。

107km地点でプロトンとのタイム差は7分まで開きます。プロトンは相変わらずUAEが一人で引いています。どこからともなくM&Mが出てくるのも3週目ならでは。おそらくチームカーのメカニックから奪ったものと思われます。何か(おいしくて)すぐに燃料になるものを食べてないとやっていられないのでしょう。

104km地点の最後の4つ目の3級山岳に入ると、EFのヒーリー選手がアタック。それをきっかけに逃げグループが活性化して振り落としが始まりました。この動きで逃げグループから8名脱落して先頭は28名に。ここでペースが上がったので、プロトンとのタイム差が頂上で9分30秒になります。

そして28名のまま最後の5つ目の3級山岳に。ここでは勝負を決めるためのアタックが繰り返されます。特にMovisterラスカノ選手、EFクイン選手、Vismaレメン選手、UNO-Xのヨハネセン選手、Lidl-Trekベルナール選手が積極的に前に行きます。しかし少し抜け出せてもチェックが非常に厳しく、決定的にはなりません。

すると頂上付近でIneosクヴィアトコフスキー選手がアタックをすると後続との差が開いて単独になります。狙っている選手たちの潰し合いの合間を縫ってのアタックが功を奏しました。頂上を越えて下りで飛ばすクヴィアトコフスキー選手は後続にタイム差をつけますが、Lottoカンペナールツ選手とTOTALヴェルシェール選手の2名が追走してクヴィアトコフスキー選手に追いつきます。UNO-Xヨハネセン選手も追いましたが、コーナーで落車をしてしまい残念ながら追いつくことができませんでした。

タイム差が10分以上開いたプロトンでは、UAEに任せていると際限なくタイム差が開いていくような雰囲気があったのか、Israel Premier Techがジー選手の総合9位を守るべくプロトンを牽引します。

先頭は3名のまま協力してフィニッシュに向かい、最後は3人によるスプリントに。残り800mくらいでヴェルシェール選手が一度アタックをするもタイミングが早すぎたため再びパックに戻り、そこからクヴィアトコフスキー選手が先行してスプリントに入り、後ろから加速したカンペナールツ選手がステージ優勝を上げました。2位はヴェルシェール選手、3位はクヴィアトコフスキー選手でした。

カンペナールツ選手はツール初優勝。先日子供が生まれたばかりで、フィニッシュ後にすぐに家族に電話をするくらい嬉しい勝利になりました。聞いたところによると昨年の12月からこのステージでの優勝を目標にしていたということで、ツールドフランスのステージを狙って勝てるなんて、何か持ってるとしか思えないですね。カンペナールツ選手は来季からVismaに移籍するのが決まっているらしいですが、スプリントのリードアウトや集団牽引など至る所で存在感を見せているので、Lottoのチームメイトたちもみんなから祝福されていました。

2位のヴェルシェール選手もツールのステージ優勝が目の前にあったので、かなり悔しかったようで、フィニッシュ後は泣きまくっていました。チームメイトのチュルジス選手がステージ優勝したことも影響も少なからずあるでしょう。このような悔しい思いは選手を強くするので、これからの成長が楽しみです。

一方、Israel Premier Techが牽引するプロトンは15分差まで開いたタイム差を13分40秒まで詰めてフィニッシュしました。ジー選手の総合も守れて一安心でしょう。総合争いも何事もなく、久しぶりに今までのツールでよく見た逃げ切りステージ優勝の光景になりました。

ということで第18ステージが終わりました。今回もカンペナールツ選手のツール「初」優勝が記録されました。また久しぶりに総合勢の動かない逃げ切りステージ優勝のステージを見て、なんだか安心感を感じてしまうのは自分が古い人間だからでしょうか。

そして、いよいよこの週末で全てが決まります。これまでの寝不足が吹っ飛ぶくらいワクワクしています。モニターの前に正座をして、1日1日を瞼に焼き付けたいと思います。

今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。

それでは残りの1日1日をじっくり楽しみましょう!

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 別府 匠 / Takumi BEPPU
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