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ツールドフランス2024 第14ステージ(PAU - SAINT LARY SOULAN-PLA D'ADET) 考察

いよいよピレネー決戦が始まりました。初日は超級、2級、超級と山を3つ上る151.9kmのステージでした。ところどころの状況を見ていきたいと思います。

まずは前半です。山岳は逃げたい選手が多くいるので、スタートからアタックの繰り返し。残り112.2km地点でAlpecinのヴァンデルプール選手、Lottoのドゥリー選手とボーレンス選手、Cofidisのコカール選手に4人の逃げが決まりました。96.2km地点でその逃げにArkeaのヴォークラン選手とガルシア・ピエルナ選手、UNO-Xのコート選手、Movisterのラスカノ選手の4名が合流して逃げグループが8名になりました。その後ろにはギルマイ選手やフィリップセン選手を含む15名の追走ができます。

このアタックにスプリンターが多く入っているのは70.2kmのスプリントポイントのポイント狙いで、実は第13ステージが終わった段階で3位までのポイント差があまりないのでジャンプアップできる可能性がある。3位のTotalのチュルジス選手とUNO-Xのアブラハムセン選手は連日動いていたのでこの日は動きがおとなしめだったのか、5位のCofidisコカール選手とLottoのドゥリー選手がジャンプアップのために動いたのでしょうか。そして追走に入ったギルマイ選手とフィリップセン選手も先頭の人数次第ではスプリントポイントが獲得できるので、先頭の人数を見て追走に入ったと思われます。

Stage13後のスプリント賞ランキング@Procyclingstats

結果、コカール選手とドゥリー選手が1着と2着、ギルマイ選手が9着でフィリップセン選手が10着で通過してそれぞれポイントを獲得して、以下のような結果になりました。5位・6位と3位・4位だとだいぶ違いますね。とはいえ3位以下はまだまだ接戦です。

Stage14後のスプリント賞ランキング@Procyclingstats

ちなみにスプリント賞は8位まで賞金がもらえて、中間でも3位まで賞金がもらえます。あと少しでも上位にいれば、自分よりも上位の選手に何かあった場合に賞が降りてくる可能性があります。スプリントポイントはあと6回と最後のフラットステージがあります。これからの山岳はより厳しいですし、山岳の結果次第ではフラットステージもどんな展開になるかわかりません。ここの争いも白熱してきました。

スプリントポイントを通過するとスプリンター勢は踏むのをやめて、UAEのポリッツ選手が一人で引きつづけているプロトンに吸収されるのを待ちました。元々逃げ目的の他の選手たちはステージ優勝を目指して走り続けます。

そして、これも「やるな!」と思ったのが、スプリントポイントのあとすぐにツールマレー峠の山岳スタートが始まったことです。こうやってメリハリよく設定してあると、走っている選手も切り替えがしやすいし、見ている方もメリハリがあって良い。自分がその視点でレースを見ていなかったせいで気がつかなっただけで、今までもそうだっただろうか。

これまではレースを連日追うということができなかったのですが、今回は初日からスタート〜フィニッシュまで見ているので、この記事を始めてかなり勉強になることが多いです。機会がいただければ今回の経験を活かしてより良い記事を書きたいと思いますので、今後もこのような考察記事や観戦記が読みたい!という方がいらっしゃいましたら記事やマガジンのシェア、活動のサポートをしていただけると幸いです🙇

で、ツールマレーではプロトンが逃げを4分くらいでコントロールするのみで特に大きな動きはありませんでした。こういう動きのない場面を見ていると連日フラットステージで激しい攻防を見ていたせいもあり、少し物足りなく感じてしまう自分がいました。逃げグループ内での攻防はありますが、「どうせ最後は捕まっちゃうんだろうな」という感じるくらい、選手とチームにレベルの差があるので、もしかしたらそういうのもあってフラットステージが増えたのかもしれませんね。

その後もUAEがしっかりアシストを使って、逃げグループとの差を詰めていきます。ポリッツ選手・ウェレンス選手・ソレル選手の3人で、山岳ステージで10名以上いる逃げグループとタイム差を維持するだけでなく詰めることもできるので、ちょっと無理ゲー感は否めません。想像ですが、彼ら3人できっちりローテーションすれば逃げ切りできるんじゃないかと思うくらい。ずっと引いていたウェレンス選手がツールマレーで最初に役目を終えました。

そしてツールマレーを越えて、2級のHourquette d'Ancizanに入ります。先頭は10名いましたが、Movisterのラスカノ選手とGroupma-FDJのゴデュ選手が抜け出し、それをEFヒーリー選手、Intermarcheマンチェス選手、Ineosクヴィアトコフスキー選手が追いついて5名になりました。ふもとで3分あったタイム差はポリッツ選手の引きで徐々に詰まります。頂上まで6km地点でポリッツ選手が役目を終えて、そこからソレル選手がペースを上げていきます。すると頂上でタイム差は1分15秒まで縮まりました。逃げも全開なのに一つの上りだけで1分45秒詰められたら(しかも序盤のアシスト選手に)、逃げのメンバーもこれからどんなことが起こるかちょっと日和っちゃいますよね・・・。

そして最後のPLA D'ADETへ。リーダージャージグループと逃げグループのタイム差は1分20秒ほど。先頭グループは9.4km地点でヒーリー選手がアタックをして単独に。プロトンはソレルが役目を終えてシバコフ選手とアルメイダ選手が先頭を引きタイム差は1分10秒。

すると残り7.2kmでポガチャル選手の指示でA.イェーツ選手がプロトンからアタック。この動きはプロトンも少し動揺しているようでした。A.イェーツ選手は総合でタイム差が約7分ついているので、この動きにどんな意味があるのか。単にステージ狙いなのか。とはいえ危険なムーブには変わりないので、Vismaのヨルゲンセン選手が先頭を引きます。

イェーツ選手は快調に飛ばして逃げグループから分裂して2番手を走っていたマンチェス選手をパス。ヒーリー選手との距離も縮めていきます。プロトンではイェーツ選手を40秒くらいで追走していると残り4.6kmでポガチャル選手がアタック。一気にA.イェーツ選手に追いつき、A.イェーツ選手が300mくらいポガチャル選手を引くと、そこから独走に持ち込みました。A.イェーツ選手の動きはポガチャル選手のサテライトになるための動きでした。この動きの影響でヒーリー選手は遅れてしまい、結局逃げは全滅してしまいました。今年は本当に逃げに厳しい・・・。

後続はヴィンゲゴー選手が10秒くらいで2番手、エヴェネプール選手が20秒くらいで3番手を走っていましたが、ポガチャル選手の勢いは止まらず、最終的にヴィンゲゴー選手に40秒、エヴェネプール選手に1分10秒の差をつけてステージ優勝しました。今回はアシストをしっかり使い切ってのステージ優勝で、第9ステージにリベンジをしたとともに、自身とチームの強さをアピールしました。またこの結果でヴィンゲゴー選手が個人総合2位に上がり、エヴェネプール選手が3位に後退しました。

フィニッシュ後のインタビューでポガチャル選手は、A.イェーツ選手のアタックは思いつきで、最初のプランではヴィンゲゴー選手とスプリントになって勝ってボーナルタイムも取れればいいと思っていたようですが、あのアタックを思いついて、それが成功して結果的に40秒タイムが稼げたので大成功だったとコメントしています。あのアタックは思いつきだったんですね。イェーツ選手のインタビューでも、もともと普通に先頭を引く予定だったけど、突然提案されて、よくわからないけど言われたからアタックした、というコメントがありました。現場でしかわからない空気があったということでしょうか。はたまた天才の第六感だったのか。ここに万全のアユソ選手がいたらと思うとさらに恐ろしいチームです、UAE・・・。

一方で、ヴィンゲゴー選手は遅れはしたものの、翌日のステージにも自信を見せています。翌日の第15ステージは彼の得意な勾配のきつい長い上りだし、まだ第3週での逆転のチャンスがあると考えているようです。SNSでもPLA D'ADETは少しフラットで、フィニッシュ前も緩かったのでポガチャル選手に有利に働いたのでタイムを失った、とか、第15ステージにPLATEAU DE BEILLEはまさにヴィンゲゴー選手に合っている山で、第14ステージでアシストが早々にいなかったのも翌日に向けたもので、初めからこのステージを狙っていたのでは、と囁かれている話もあります。Strava上でワウト選手が遅れてからツールマレーをよいスピードで上っているのを見つけて、「明日ワウトのスーパーアシスト来るんじゃない!?」って書いてる人もいました。(まさに考察って感じですね!勉強になります。)

このステージでアシストをフルに使ってタイム差をつけたステージ優勝をしたUAEとポガチャル選手、勝負ところまでにアシストを失って(温存させた?)タイム差を失ったけれどまだ自信を失っていないVismaとヴィンゲゴー選手。Vismaもヴィンゲゴー選手自身も常々作戦はあると言っているので、それがポガチャル選手を追い込むためのブラフなのか、それとも本当に逆転を狙う効果的な作戦があるのか、第15ステージで明らかになるでしょう。

第15ステージからはポガチャル選手がマイヨジョーヌ、ヴィンゲゴー選手がポガチャル選手から繰り下がりでマイヨブランアポワルージュ、エヴェネプール選手がマイヨブランを着用するので、リーダージャージ三つ巴の戦いになります。近年あまりない絵なので楽しみです!今大会Vismaは色が違ってずっと地味だったので水玉装備でかなり目立ちそうです。当然準備はしてあると思いますが、どうでしょうか。

そしてどうやらエヴェネプール選手が「開眼」したようなので、何かやってくれると大いに期待しています。

そんな感じでピレネー1日目が終わりました。2日目はさらに距離197.7kmで1級4回、超級1回で獲得標高4800mとかなり厳しいステージです。またスタートしていきなり1級山岳が設定されているので、逃げる選手たちもかなり脚がある選手に限られると予想されます。連日のハードワークをこなしているUAEのアシスト陣は大丈夫か?また各チームがどんな作戦で来るのか、一つ目のスプリントポイントは誰が取るのか、いろいろと気になることが多いです。ここが終わっても第3週は水曜日からハードな山岳4連チャンと個人TTがあるので、全力少年ポガチャル選手は最後まで全力でいけるのかも見どころです。今日の第15ステージもスタートからしっかり見ていきたいと思います。

あとポテチの観客はダメですね。選手の近くに行けるのがサイクルロードレースの良さでもありますが、悪いところでもあります。選手に触ったり何かをぶつけたりするのはもちろん、自分としては観客が避けるつもりでも選手の通る道を塞いでいるのがあまり好きな行為じゃないので、そこは徹底して管理して欲しいと思っています。全開走行中にポテチ投げられたらいろんな意味で嫌だなぁ。油っこいし、手がベタベタしそうだし、もし口に入ったらYou can't stopになりそうだし。(そこ?w)

今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。

それでは第15ステージでも手に汗握りましょう!

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 別府 匠 / Takumi BEPPU
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