トランプは接戦予測だったのに圧勝した、というのは本当か?(2)
3.各激戦州の状況は?
次に、接戦州(激戦州)の各州の、事前予測と、投票結果を見ておく。
図4に、リアルクリアポリティクス(RCP)の事前調査の支持率を載せる。
RCPの事前予測の支持率は、多くの会社・機関の行っている世論調査結果を総合したものであるが、各会社・機関の調査の信頼性を表す重みをつけて平均したようなものになっており、比較的信頼性の高い事前予測として知られている。これを見ると、接戦州(激戦州)はどこも接戦であることがわかる。ミシガンとウィスコンシンはわずかにハリスがリードしていて、その他の5州はわずかにトランプがリードしているが、差はわずかであり、実際の選挙でどちらが勝つかはかわからない。そして、接戦州(激戦州)各州の実際の投票結果が図5である。
これを見ると、どの州もやはり接戦と言えるが、すべての州でトランプがわずかずつ上回ったという結果である。図4と図5を見比べた時、予測も実際の結果も接戦であったと言え、予測は接戦だが結果はトランプが圧勝というのはかなり誤解を与える言い方であるのがわかる。
2024年の選挙で、ウィスコンシンではトランプはわずかに0.8%のリード、ミシガンでは1.4%のリード、ペンシルベニアでは1.8%のリードであった。つまり、2%程度ハリスがより多く獲得していれば、この3州の選挙人44人を獲得し、選挙人の数が過半数に達し、ハリスが勝利していた。トランプは接戦の中、辛うじて勝ったのである。
一方、2020年はバイデンが勝利したが、各州でもしトランプが2%多く獲得していれば、ウィスコンシン、アリゾナ、ジョージア、ペンシルベニアでトランプが逆転し、トランプが勝利していた。これも、バイデンは接戦の中、辛うじて勝ったと言える。
2016年はトランプが勝利したが、ヒラリーが、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアで、1%多く票を獲得していれば、ヒラリーが大統領になっていた。やはり、この時も、トランプは接戦の中、辛うじて勝ったのである。
この結果をまとめると、事前に予測されていたように投票結果も接戦だったが、7つの接戦州(激戦州)で、トランプがわずかずつ得票を上回ったために、選挙人の獲得数では(見かけ上)大きな差がついた、というのが正しい評価であろう。
アメリカ大統領選挙では、このわずかな差こそが勝敗を決するのであり、その差について議論することはもちろん重要である。しかし、接戦は接戦で、圧勝と言えるようなものではない。
接戦が予測されていたがトランプが圧勝した、というのはかなりミスリーディング、または分析不足であり、もっと適切な解説をするべきであったと思われる。
(3)に続く
(1)がまだの方はこちら