イライラするじゃん

「懐かしいなあ」
岡田君が言った。ぼくは岡田君と昔通りに話すことが出来ることに対して感動していた。ほとんど違和感なく話すことが出来る。これは岡田君が言った懐かしさに他ならなかった。
「岡田も清水先生に対して、そう思っていたとは知らなかったよ」
「清水先生、頑なに喋らなくなる時あるじゃん。あれはおかしいよ。先生なのに」
話がかみ合うと楽しい。思えば、昔から岡田君とは話が合っていて、7年ぶりぐらいに話すのが不思議なほどだった。7年のブランクを感じさせないぐらいのかみ合い具合だ。
しかし、少し気がかりなのは、岡田君の運転のほうだった。彼は話しながらの運転を強いられているせいか、露骨にスピードを出したがらない。けれども安全運転なのは事実だった。

「ところで、同窓会の話の事なんだけど・・・」
ぼくがそう言ったところだった。
「同窓会へは絶対行かない。おれは行きたくない」
岡田君が初めてといっていいほど、語気を強めた。この、ぼくの質問がまさにタブーであるかのように。
「ごめん、ごめん。実はおれもあんまり行きたくないんだ」
そう言って、すかさず彼のフォローの側へ着いた。
岡田君は自分の望んでいない職に就き、それをひどく悔やんでいる。同窓会を嫌悪しているかのような発言は、自分の置かれた状況を後悔してのことなのだろう。
かくいうぼくも、自分の望んでいない職に就いているし、しかも、かなり人間関係に悩まされている。
かみ合ていたのが嘘のように話はいったん途切れ、車はパーキングエリアへ入ることとなった。
パーキングエリアでは、一人の交通誘導員が険しい顔をしながら、手荒く車を誘導していた。険しい顔をした交通誘導員は、ぼくらの乗った車もいらだっているように、せかすようにして誘導した。ぼくらの乗った車は、パーキングエリアに停車し、少し休憩することとなった。
ぼくはイライラしていた。さっきの交通誘導員の態度に。岡田君、君はさっきの交通誘導員の態度を見てもイライラしないのだろうか。
「トイレに行ってくる」
そう言って、ぼくは車を後にした。外は季節よりも寒く、それをも、ぼくをイラつかせた。