箱の中から取り出され、口にくわえられた後、ライターで火をつけられた。男は日頃のストレスを吐き出すように、口から煙を吐いた。 男はそのまま歩いて友達との待ち合わせの場所に向かった。 待ち合わせの場所には友人Aがいた。 友人Aもまた、日頃のストレスを多量に抱えており、互いの会話でストレスを吐き捨て合った。 男は言う。 「仲良かった、と思ってた女の子がいたんだけどさ、連絡つかなくなっちゃった。最悪だよ。パチンコでも負けるしさ。」 そういった後、男は私を自分の口から追い出して、地面
「懐かしいなあ」 岡田君が言った。ぼくは岡田君と昔通りに話すことが出来ることに対して感動していた。ほとんど違和感なく話すことが出来る。これは岡田君が言った懐かしさに他ならなかった。 「岡田も清水先生に対して、そう思っていたとは知らなかったよ」 「清水先生、頑なに喋らなくなる時あるじゃん。あれはおかしいよ。先生なのに」 話がかみ合うと楽しい。思えば、昔から岡田君とは話が合っていて、7年ぶりぐらいに話すのが不思議なほどだった。7年のブランクを感じさせないぐらいのかみ合い具合だ。
元あったものが、無くなるのは非常に寂しい。 無くしたものが、思い入れがあるものであればあるほど、悔しいような心に穴が開いたような気持ちが、浮き出ては消え、浮き出ては消えする。ものを思い涙する他人もいるだろう。寂しさの境地とはいかなるものであるのか。 手を握って砂をすくう。そうした時に、さらさらと指の股から、落ちゆくものがある。さらさらとし過ぎていて、すくえないのか、手にはすくえない、義理だったのか。どうにか、こうにかわからんが、目にすると、とても儚いものである。 横を自動車が
車でコンビニに来た。 駐車場はいつものように、やや端に止める。ここは、邪魔じゃない場所。いつも居やすい。 コンビニの中を回る。グルグル、と入念に。他の人より、長く居座る。迷惑より、欲が勝つ。良くない、良くない。 ヨーグルト、牛乳。少し高いが、買いやすい。 店内を一回り、二回り、だいたい回ることが出来た。上出来、上出来。 グルグル回る、グルグルと。 ふと、思う。 ぼくはいつも、同じところをグルグルと回っているのだろうか。安全だから、それがいい。 よく、「勉強しよう」とか、
うつ向いて歩いていた。暗いトンネルの中のようだ。気分が滅入る。歩くときに右足を出すのは、どういう感覚だっけ。と、うろ覚えになる。1歩、2歩。そういうことを考えている間に歩いた距離は、相当になった。 右手にコンビニがある。どうしようか。通り過ぎようか、何かひとつ買い物をしようか。そう考えていると、どうでもよくなって、通り過ぎた。周りが暗すぎる。明るい所に行こう、と思った。 ふと、右後ろを見ると、人が歩いているような気配を感じた。暗いので怖い。しかし、そちらを見るが誰もいなかった
物事の通りとは、いかなる時も無残であるべし。 もし、仮にであるが、あなたがこの世に生を受けた当初から、あらゆる叡智・権力を所有していたとしよう。 さうした時、あなたは、あらゆる万物を越え、功を為すとするであろうが、そこに意味は存在し得ない。 なぜなら、当然の達成であるに過ぎないから。 「当然」は人の心を動かさない。 そう言ったものを、一度として外さずとも、誠心誠意ものごとに精進し、自らの反対側からの使者とも和解し、こちらのあるべきものを伝え、ゆったりとした流れの中で
知らない。知らん。知りたくない。知る?でも、知りたくないような……。そうは言っても、そう思うこともぼくの我がままなのか? このように、ぼくは、ぼくの中での言い訳を並べ立ててみたが、それでも、ぼくには理解できない。 彼女の体の、心の、島のようにも見える傷。ぼくの目には一際、目立つ。最初から、それしか目に入らないぐらいに。 でも、その傷は氷山の一角。見えていた部分は、ただの一握りでしかなく、ごく一部の材料だけでしかなかった。 ぼくは彼女が苦しそうに見えるから手を差し伸べた。
寒い、と思ったら、部屋の中だった。 誰もいない。そう思う。 でも右側を見ると、ひとりだけいるみたいだった。 もう、ぼんやりしてほぼ見えない。見覚えがあるような、ないような。元気に見えるような、元気がないような。苦しんでいるような、苦しんでいないような。 私の手は、もうすでにしおれていて、力を入れようとしても、できなかった。左手も、足もやってみたが、ひとつも力が入らなかった。 この前、目が開いたとき………。一昨日だったかな、今見た人とは別の人が、それも何人かいたような。その記憶
苦心3年目にしてやうやく花開く。 苦しみの果ての途中に、何かをつかんだか、本人もいざ知らず。ただただ、思いの果てに手だけを握りしめていた。 動揺する本心とは裏腹に、心の表向きは、実にあっさりとしたものだった。 盲目なる戦士よ。 あなたの出身は何処か。 はたまた、彼の母はまだ存命か。 私はあなたを、ただのこれ一つさえも、知る由もないが、あなたの卓越した所以、その過程の苦しみだけは、あなたの手を通して伝わったのだ。 私の野望はただ一つ。平和の統一なるが、あなたの手はすでに平
洞察、盲殺、掘削し、頭部朦朧。混乱に乗じ、頭上へと高く舞い上がった。お前はもう、2、3歩先を行く……。 今度は……、 ハイブランドなお前を、空中から……、心から見下してやる。 したり顔な“お前”は、すぐさま右側の頬だけが上がり、引きつったような顔になった。 男にくっ付くのが(男にくっついているところを見られるのが)、大好きな“お前”は、今頃どこを『彷徨っている』? 怪人二十面相もビックリだ。 優と劣を感覚として、把握する。 「メリットは、これと、これとで……。デメリットは
車いすをそっと漕ぎ、いつの間にか傍にいた。 あなたのうつろな目は何を意味しているのだろう。いつもよりも認知症で、いつもよりも不自然な顔。苦しそうなのを我慢している顔。いつも苦しいだけだから、それよりももっと苦しい顔。 見ていられず、顔を背けたら、車いすに乗っているはずの動くことのない足までも震えていた。 長年の経験とは、自分の直観とは裏腹に、自然と体に直帰するもののようで、あなたの体はすっかりと不自然さを仰ぎ切っていた。どうやらあなたは、いつもより悲しい感情だと、いつも
あなたは偏(ひとえ)に何と言うの 手を引かれて連れて行かれた先は眩しい 「ただ……」と思うがままに 苦しむあなたの右手 戸惑う僕の足を見、 あなたは背中を見せつけるが、苦い様子 細い眼を見ると思い出した 昔の僕は、そうなるはずだった、と 神経質なあなたはあなた自身の体の虜 待ち続ける、それは自分の自由の犠牲で あなたと共に戸惑うはずの僕は あなたが来た、と思ったら残像で 必要以上に思い続けるばかりか あなたの行方はいつも夢の中へと紛れ込む あなたの行方は何処。しかし感謝す
「難しい。」と、頭の中が混雑する日は、我が人生において、ひとしおである。 「ぐう」と、あちらこちらから握りしめ続けられているような時間、あるいは期間というのは、食材に対し、塩をひと降りするようなもので、過ぎ去れば意外と人生のアクセントであったのだった。 今、現在のあなたの頭の中に、アクセントをアクセントと捉える技能、そして懐の奥深さ・引き出しの種類や数は有り余っているのだろうか。はたまた、拵(こしら)えている途中であるのだろうか。 苦しさの中にある時は、その気温、そ
あなたが思うこと、それは、あるいは、重たいことでしょうか。 ぼくは、自分自身の思考で、自分自身を、深く・深くまで追い込むのだが、かつてのあなたは、ぼくと同じのでしょうか。あなたのあなた自身を思い浮かべるその顔は、、、どうやら、その表情をする、あなたは、ぼくと反対側の暗い辺たりにいたらしい。 牢屋に入っている囚人を思い浮かべたことがある。 その時、その彼は両手首を、「上」に繋がれていた。 繋がれていると、鉄の錆びたような「音」と「匂い」がぼくの心を物臭さにつかむようで、頭が重
「ぐっと手を握るんです。そうすると、じわじわーっと掌から湧き出てくる。それをそーっと取り去って、そのあとにもう一度、手を握りしめます。爪が食い込む音。それを、海辺で波がさざなうように耳元で聞く。じーっと聞く。そうすると何かが見えてきます。その見えてきたものは、遠い幻の島のようで、あるいはどこか遠い遠い国のようで、はたまた宇宙の果ての名前も知らない惑星のようでもある。それが見え始めたとき、パンっと弾けるような音がします……」 目が覚めると、いつもよりも頭がすっきりとしていて昨
「どうしたの?」 それまでの彼女と反転して、ふいにぼくに対して優しさが注がれた。それは、それまで棘のついた言葉しかなかった中に、突然手を差し伸べられた瞬間だった。急に投げかけられる棘の外された言葉に対して、ぼくの頭はついていけなかった。 でも、感じたのは、少なからず彼女は「棘を取った」のではなく、「棘をつけることができなかった」ということ。それは彼女が意図せず出した助け舟に等しく、彼女の部分的な優しさを意味していた。 それでもぼくは、今日のそれまでの彼女との過程において