3人
うつ向いて歩いていた。暗いトンネルの中のようだ。気分が滅入る。歩くときに右足を出すのは、どういう感覚だっけ。と、うろ覚えになる。1歩、2歩。そういうことを考えている間に歩いた距離は、相当になった。
右手にコンビニがある。どうしようか。通り過ぎようか、何かひとつ買い物をしようか。そう考えていると、どうでもよくなって、通り過ぎた。周りが暗すぎる。明るい所に行こう、と思った。
ふと、右後ろを見ると、人が歩いているような気配を感じた。暗いので怖い。しかし、そちらを見るが誰もいなかった。でも、怖い。何もいないのに、こんなにも恐怖を感じるものだろうか。どう思うだろうか。誰もいないのである。しかし、怖いのである。
そう思う間に、右足を出す感覚をやや思い出してきた。そうそう、こんなだったっけか。いやいや、違ったっけかな。
思考が右往左往する。コンビニ、人の気配、右足。なんだか他人の事ばかりを考えている気分だ。人の事ばかり考えている気分とは、実に気味が悪い。自分には、少しも関りが無いんだぜ、まったく。
そうこうしていると、左手後ろに、人の気配がある。自転車ぐらい速いスピードでこっちへと向かってくる。と、思ったら、生温い風だった。
風であった。