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煙草

箱の中から取り出され、口にくわえられた後、ライターで火をつけられた。男は日頃のストレスを吐き出すように、口から煙を吐いた。
男はそのまま歩いて友達との待ち合わせの場所に向かった。
待ち合わせの場所には友人Aがいた。
友人Aもまた、日頃のストレスを多量に抱えており、互いの会話でストレスを吐き捨て合った。
男は言う。
「仲良かった、と思ってた女の子がいたんだけどさ、連絡つかなくなっちゃった。最悪だよ。パチンコでも負けるしさ。」

そういった後、男は私を自分の口から追い出して、地面に落とした後、右足でひねりつぶした。私は上下に少し破れかかったが、無事だった。口にくわえられても、火を付けられても、踏みつぶされても痛くはなかった。しかし、少し破れかかったため、少しだけ意識が遠のいた。

彼らはそれから30分ほど話した後、別れたのを、私は地面の位置から見守っていた。そして、やがて雨が降ってきた。雨はだんだんと増していった。
私は流された。私には冷たいという感覚もなかったが、流れにはあらがえなかった。周りにはあっという間に人がいなくなった。私のことなど見向きもせずに、周りの人間は一目散だった。
雨がだんだんと止んでいき、流れ着いた先はどこかの路地裏だった。どこの路地裏かは、わからない。
そうこうしているうちに、一匹の野良犬がやって来た。やたらに周りの臭いを嗅いでいる。

野良犬は私の方へ来て、臭いを一通り嗅いだ後、右の前足で私を上下真っ二つにした。私は痛くはなかったが、一瞬のうちに意識を失った。
死んだ。痛みはなかったが、その場に、ただ、そのままだった。