僅かな真実
あなたは偏(ひとえ)に何と言うの
手を引かれて連れて行かれた先は眩しい
「ただ……」と思うがままに 苦しむあなたの右手
戸惑う僕の足を見、 あなたは背中を見せつけるが、苦い様子
細い眼を見ると思い出した 昔の僕は、そうなるはずだった、と
神経質なあなたはあなた自身の体の虜
待ち続ける、それは自分の自由の犠牲で
あなたと共に戸惑うはずの僕は あなたが来た、と思ったら残像で
必要以上に思い続けるばかりか あなたの行方はいつも夢の中へと紛れ込む
あなたの行方は何処。しかし感謝する僕と、あなたへの愛は確かに存在する
煙草の臭いは発明だ。苦しんでいた過去の記憶さえ、安らぐのだから。
「笑っていたらいいのに……」と、よく言われるが、それが難しいときは、やはりそういう記憶に頼らざる負えない。
さすらいのあなたは、壁にもたれながら、僕の方を見る。
「うーん、なるほど。でもなー、……。」
ぼくをわざと茶化すのが非常に得意で、はたまた僕の過去を見透かしているようだった。みんなの輪の中で他愛もない話をしているときと、僕と二人で話しているときのトーンは真逆だった。僕にはそんな彼の不器用さが身に沁みて、離れない。不器用さと苦しみはセットだったのだろう、と推測することさえ彼に無礼なのではないか、と思ってしまうほどに、僕は彼に感謝していた。
例えば、彼が馬車だったら、彼の馬車が通った後の道、を見ると非常に柔らかく、当たり障りのない物になっていたであっただろう。それぐらいに柔らかく、その不器用さに僕は感動したのだった。
「お前、アイコスの作り、知ってるか。こんな感じ。知ってた?」
話を逸らすあなたは、人を慰める達人だった。
そんな、あなたも愛する家族と今も暮らしていることであろう。
永遠なる愛をあなたに捧ぐ。あなたに詳しくなるように、これからあなたに注がれるはずの愛がとても大きなものとなるように僕の心は、必死に精進すべきであると、決意したのだから。