法律学小事典があるじゃないか
滝川沙希です。
法学を学ぶ時に困ることに、①専門用語、②通説的見解での知識の整理、③「及び、並びに」のようなルールの確認方法をどうするかがあると思います。
その課題解決のツールとして、『法律学小事典』(有斐閣)をご紹介します。今日時点で第5版が一番新しいのですが、出版年は、なにせ2016年と微妙です。改正民法が施行されたので、次が出るような気もしますが、出ないのかもしれません。
グーグル先生が出現した今、紙媒体での辞典の存在意義が厳しく問われており、法律学小事典についても出版に疑問の声がありました(神戸大。大内先生(労働法))。もしかすると、これが最後の版になるかもしれません。
スマホ用アプリもあり、そちらも使用できます(もちろん別途料金は必要)ので、グーグル先生よりも、早いアクセスがご希望な方は、お試しください。
https://www.logovista.co.jp/LVERP/information/iPhone/product/s/18.html
専門用語の検索
小事典ですから、冗長な文体ではページに収まりません。濃密に書くことで説明しています。「詐害行為取消権」でも、「裁量統制」でも、何でもよいので、ご一読なさるとよいでしょう。学者はさすがだなと思います。
辞典ですから、専門用語の検索結果の信頼性は非常に高いものがあります。また、どうしても言語での説明が難しいと判断した語には、図で説明していることもあります(例:警察による逮捕の場合の身柄拘束関係)。
この辞典に基づいてレポートを書けば、言葉遣いの正確性については、失点がないはずです。むしろ、失点したら、説明を求めることができます。
通説的見解での知識の整理
基本的に通説で説明してあります。まれに反対説の紹介が行われることもあります。
たとえば挙証責任(民事訴訟法)の項では、「通説(法律要件分類説)によれば、挙証責任の分配は、・・・。これに対しては、反対説から、証拠との距離。。。との批判が加えられている。」とあります。
テキストでは、執筆者の先生が反対説に肩入れするあまり、通説が霞んでしまうこともありますが、小辞典では通説と反対説は明示されていて、読者に親切です。
「及び」「並びに」のようなルールの確認方法
一般論ですが、法学の言葉遣いには早く慣れないと厳しいです。慣れるといっても、『読める段階』と『書ける』段階がありますが、まずは読める段階を目指してください。
私が入学した時には、大学1年次にで基礎的なゼミがあり、このような初歩的な言葉遣いを夏休みの宿題にしてもらったことがあります。今となってはよい思い出です。
ところで、実は法律学小事典には、基本法令用語という付録がありまして、そこに「及び」、「並びに」等の法令用語の意味、遣い方が紹介されています。
したがって、次のような書物は、当面不要となります。内容が重複するからです。
吉田 利宏『元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術[改訂第3版] 』 2016年https://www.amazon.co.jp/%E5%85%83%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%81%8C%E6%95%99%E3%81%88%E3%82%8B-%E6%B3%95%E5%BE%8B%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%83%BB%E5%AD%A6%E3%81%B6%E6%8A%80%E8%A1%93-%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%AC%AC3%E7%89%88-%E5%90%89%E7%94%B0-%E5%88%A9%E5%AE%8F/dp/447
法学の言葉遣いに関するルールブックですので、かっちりしたものを欲する方もいるでしょうが、そこは好みだと思います。いずれにしても当面は、基本法令用語で勉強できますよ。
国際法が掲載されている
法律学小事典には国際法も解説されています。事項としても、判例としても。北海大陸棚事件とか、バルセロナトラクション事件、おっと、ニカラグア軍事事件を忘れていました。そうしたものも、すべて掲載されています。
これだけだと、講義、定期試験を乗り切るには厳しいですが、数が少ないのですべて読んでおくと良いでしょう。さーっと疑問点を余白に書いておいて、それを受講時に確認していくという勉強もありですよね。もちろん本筋の勉強に加えて。
まとめ
今回は好みが分かれるのかな。紙の辞典も味がありますよ。