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行政書士試験で憲法を勉強するコスパが悪いというのは どういうこと?
滝川沙希です。
以前、商法を勉強するコスパが悪いことは「行政書士試験で商法を勉強するコスパが悪いというのは どういうことか」で触れました。
今回は、憲法について紹介します。
憲法の出題形式
まずは、憲法の出題を確認しておきましょう。例年、択一式で5問(配点20点)、多肢選択式で1問(配点8点)となっています。おそらく、しばらくは変わらないでしょう。
ここで気になるのは、多肢選択式という出題形式です。これは、過去問を見ると一瞬で把握できるのですが、次のような感じです。面倒な方は、飛ばしても構いません。
実際の出題(令和元年度)をみましょう
問題41 次の文章は、NHK が原告として受信料の支払等を求めた事件の最高裁判所判決の一節である。空欄 ア ~ エ に当てはまる語句を、枠内の選択肢( 1 ~20)から選びなさい。
放送は、憲法 21 条が規定する表現の自由の保障の下で、国民の知る権利を実質的に充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。放送法が、「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること」、「放送の不偏不党、真実及び【 ア 】を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」及び「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」という原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的として( 1 条)制定されたのは、上記のような放送の意義を反映したものにほかならない。
上記の目的を実現するため、放送法は、・・・旧法下において社団法人日本放送協会のみが行っていた放送事業について、公共放送事業者と民間放送事業者とが、各々その長所を発揮するとともに、互いに他を啓もうし、各々その欠点を補い、放送により国民が十分福祉を享受することができるように図るべく、【 イ 】 を採ることとしたものである。そして、同法は、【 イ 】 の一方を担う公共放送事業者として原告を設立することとし、その目的、業務、運営体制等を前記のように定め、原告を、民主的かつ 【 ウ 】 的な基盤に基づきつつ 【 ア 】 的に運営される事業体として性格付け、これに公共の福祉のための放送を行わせることとしたものである。
放送法が、・・・原告につき、 【 エ 】 を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止し・・・、事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは、原告が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものである。
(最大判平成 29 年 12 月 6 日民集 71 巻 10 号 1817 頁)
1 国営放送制 2 党利党略 3 政府広報 4 特殊利益
5 良心 6 自由競争体制 7 品位 8 誠実
9 自律 10 二本立て体制 11 多元 12 国際
13 娯楽 14 全国 15 地域 16 部分規制
17 集中 18 免許制 19 自主管理 20 営利
https://gyosei-shiken.or.jp/pdf/mondai.pdf
【※一部改変してます】
どうやって解答するのか?
どうです?嫌になりましたよね(笑)?
この判例は、法学部の学生が所有する有斐閣の「憲法判例百選(7版)」にも掲載されていますし、「判例六法」にも、「平成31年(2019年)版」(=平成30年(2018年)に発売)から掲載されています。他の判例集にも掲載されていることでしょう。その意味で著名で重要で、最新判例ということができるでしょう。こういうのは、出題者が大好きです。
しかし、少なくとも判例六法では選択肢【エ】の部分が記載されていませんし、他の部分も受験生が丸暗記できていると思えません。したがって、考えながら解答する他はありません。
皆さんは、「こんなレベルまで準備しないといけないのか。もうやめよう・・・」と思う必要はないのです。できなくとも合格できるのです。思い出して下さい。行政書士試験の合格に満点は不要です。
これは、暗記問題ではなく、試験現場でパズルと受け止め、試行錯誤しながら解答するべき問題と位置づけるべきだと思います。
そして、重要なのはすべての選択肢を解答できなくとも得点はできるということです。部分点狙いで十分です。2~3の選択肢が正解できれば十分です。
この問題も「公共放送事業者と民間放送事業者とが」という問題文の中の言葉から、選択肢の「二本立て体制」を選び出すことはできると思います。ここは何の勉強も必要ありません。そこから分かるものを、少しづつ拡げていくほかはありません。
本来であれば、この判例を知らなくとも、裁判所は放送について電波が希少な資源であるという立場を採用しているらしいこと、それは論理的に怪しいと批判されていること等は、勉強が進んでいる人はご存知でしょう。法学部の学生で広く知られる教科書に、芦部信喜『憲法』がありますが、その中でも紹介(*)されています。
繰り返しますが、仮にそれを勉強していても、解答できるかどうかは別問題です。教科書にある!判例集にある!解けて当然だ!という声に、惑わされないようにしましょう。出題者は、現場で考えてもらいたいのです。
まとめ
今回は、憲法の多肢選択式とのお付き合いの仕方を紹介しました。
設問を丸ごと紹介したので分量も多くなり、残念ながら択一式については触れることができませんでした。機会があれば紹介したいです。
*「第9章 精神的自由権(二)表現の自由 二表現の自由の内容 1報道の自由」ですね。
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