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小林八束1遺跡ミミズク中空土偶そろいぶみ(岩槻郷土資料館 企画展「ミミズク土偶の世界」より)

さいたま市 岩槻郷土資料館の企画展「ミミズク土偶の世界 ~埼玉のミミズク土偶大集合~」(令和6年11月16日~令和7年1月26日)に行ったところ、埼玉県久喜市 小林八束おばやしはっそく1遺跡から出土したミミズク型の中空土偶が6体展示されていました。ここの中空土偶がこれだけまとまって展示されるのは、2021年に埼玉県立歴史と民族の博物館で開催された特別展「埼玉考古50選」以来3年ぶりだと思います。

小林八束1遺跡は大宮台地と加須低地の境目に所在する。(中略)縄文時代後期から晩期にかけて形成された環状盛土遺構が発見されており、盛土の一部では祭祀に関する遺物が集中して出土する地点が確認された。
祭祀遺物が集中する地点から、多数の特徴的な土偶が見つかった。みみずく型、遮光器土偶は中空であり、桶川市後谷遺跡や鴻巣市赤城遺跡の土偶の系譜上に位置付けられると思われる。みみずく土偶、遮光器土偶などを意識しながらも、やや崩れた表現であるのが特徴で、独特の造形がユーモラスな印象を与えている。現在のところ、近隣地域でも類似例は発見されていない。

「埼玉考古50選」図録より

「埼玉考古50選」では入口を入ってすぐのところに展示された中空土偶たちを見て、そのなんとも言えないフォルムに衝撃を受けました。幼稚園児がクレヨンで描いた宇宙人かロボットのような、素朴で力強い表現。ミミズク土偶でありながら、2次元の漫画やアニメのキャラの、意表を突くコスプレを見るような感覚。どの土偶とも似ていない独特の個性があります。その後もう一度見てみたいと思っていたところに、今回の企画展で久しぶりに再会することができました。

完全であれば32cm程の大型の中空土偶となるようで、頭頂部、顔の上半、胴から腰の前面などが残っています。顔はU字形となり、胸の部分に入り込むものと思われます。へその部分は8mm程の孔をあけています。内面には輪積みの痕跡がみられます。(展示パネル)
高さ27cm程の中空の土偶で、右側頭部、後頭部、胴部中央部、左足の内側などを欠損しています。頭頂部には三日月形の開口部があり、顔は胸の部分にまで入り込むと思われます。頭部や体部などに刺突文による文様がみられ、内面には輪積みの痕跡がみられます。(展示パネル)
中空の土偶で、頭頂部と両足を欠損しています。完全ならば22~23cm程と思われ、中空のミミズク土偶としては小さいほうと思われます。右側の結髪と思われる突起は残り、耳は左側を欠損していますが、顔の真横につけられています。(展示パネル)
頭頂部の突起と両足を欠損しています。頭頂部は開口したままであったようで、顔は胸の部分中央まではいりこみ、耳は額の真横につけられています。へその部分や肩に貫通孔がみられます。内側には輪積み痕が残っています。(展示パネル)
頭頂部、右肩から右胴部、下半身を欠損しています。頭頂部は皿状になり、不整形の孔を4か所開けています。顔は胸の上半まで入り込み、耳は目の真横につけられています。一部に赤彩が残っています。(展示パネル)
中空の土偶で、顔の左側から胸の部分にかけて、大きく欠損しています。頭頂部は十字形に橋状の装飾がみられ、結髪の部分の突起は欠損しています。内側に輪積み痕がみられ、部分的に指で撫でられています。部分的に赤彩の痕跡がみられます。(展示パネル)

今回はミミズク土偶の特集ですので「埼玉考古50選」で見た遮光器土偶はお休みでした。展示パネルにもあるように、土偶によってはかなりの部分が欠損していますが、印象を損なわずに良い感じに全体が復元されています。土偶を作った縄文人と現代の修復者の、3000年を隔てたコラボの賜物だと思いました。

岩槻郷土資料館は、昨年秋の企画展でも下加遺跡と椚谷遺跡の神像土器を並べるなど、小粒ながらセレクションのセンスが良くて目が離せない感じです。中空土偶との再会の機会を作ってくださった岩槻郷土資料館の皆様に深く感謝いたします。
最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

参考文献
埼玉県立歴史と民族の博物館「特別展 埼玉考古50選 図録」(2021)

岩槻郷土資料館
〒339-0057 埼玉県さいたま市岩槻区本町2-2-34
開館時間:9時~16時30分
休館日:月曜日(休日を除く)、休日の翌日(土曜日・日曜日・休日・休館日を除く)、年末年始(12月28日から1月4日)
入館料:無料

#縄文 #土偶 #中空土偶 #岩槻郷土資料館

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