38・新宿に「ひよしや」があったころ
1970年代の初めのころ東京に出てきた私は、ときおり田舎に帰省していたが、こちらに戻るときは、同じく東京に出てきてたアテネと汽車でいっしょだった。
私たちは実家に帰省すると、食糧やら何やら持ち帰ってきてたが、アテネが実家から 新聞にくるまった卵まで持ってきたのにはあきれた。
いくら、生活の足しになるからといっても、こんな壊れやすいものまで!
で、途中、新宿で洋服を見るのに、実家からの大荷物がジャマなので、ロッカーに預けたのだが、あとでその場所が分からなくなって苦労した。大きな新宿駅は、迷路のようだった。
新宿では、最初「高野」というフルーツのお店だけど服も売ってるところに寄り、「鈴屋」に寄り「ひよしや」と「三愛」を見て終わり。
そのころ、新宿に森英恵の「ひよしや」という、小さなブティックがあった。森英恵が大々的に売り出す前だったと思う。
そこで買ったレインハットは40年近くも持っていたが、さすがに数年前手放した。
あの当時流行ったサハリ調で、ベージュの撥水加工のシンプルな帽子。
しかし、レインハットはかっこよかったが、雨が降ってもレインハットで平気らしいヨーロッパと違って 傘がないと濡れてしまう日本ではかぶる機会がない。フツーに被ってもよかったが、ちょっとキツイのでちっともかぶらなかった。なのに あのころの思い出としていつまでも取って置いた。
やっぱりこちらに出てきてた友達が ひよしやで買った「黄色に青の蝶々を編み込んだコットンの半袖セーター」を持っていて(今思うと、森英恵のトレードマークの蝶々はこのころからだったのだ)それを もう着ないからと私にくれた。
この友だちとはよく服を交換して着てた。
彼女はセンス抜群なうえ、自分でも作るので、ステキな服を貸してくれた。
新宿駅で降りて服を見るのには、もう一つ目的があった
実家に帰るとどうしても1キロぐらい太ってしまう。
それをお昼抜きで新宿を歩くと、1キロ減って元に戻れるのだ。
今はお昼抜きで歩いたらめまい起こしそうで とてもできないけど。